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2025年9月1・15日号 週刊「世界と日本」2300・2301号 より

今後の日米同盟のあり方

 

平凡なる常識を踏まえて

 

元統合幕僚長

 

河野 克俊

かわの かつとし

1954年生まれ。防衛大学校を1977年に卒業し、海上自衛隊に入隊。護衛艦隊司令官、統合幕僚副長、自衛艦隊司令官、海上幕僚長を歴任。2014年に第5代統合幕僚長に就任。2019年4月、退官。

 海洋国家日本の安全保障にとって、価値観を共有し、現時点ではナンバーワンの海洋国家である米国との同盟が最善の選択であることは、日本国民の大方のコンセンサスを得ていると言えよう。しかし、混迷の時代を迎えた世界において、今までのように片務的とも言われる日米同盟関係をそのままの形で維持することが日本の安全保障にとって果たしてプラスなのか。この問題から目を背けることなく、議論する時期を日本は迎えている。

 そこで先ず同盟国である米国の変貌を冷静に見てみたい。

 

 先ず、バイデン前大統領である。米国は2021年8月アフガニスタンから撤退した。

 その際にバイデン前大統領は「アフガン兵が自国のために戦わないのに米兵が血を流す必要はない」と述べた。当然である。しかし一方でウクライナでは、ウクライナ国民は自国防衛のために懸命に戦っている。しかし、バイデン前大統領は、「米国が軍事介入すればロシアとの間で核戦争にエスカレーションする可能性がある」として軍事介入しなかった。

 一方、トランプ大統領の基本ポリシーは「アメリカ・ファースト」である。1期目のトランプ大統領は、外交防衛については経験がなかったため安倍元総理に助言を求めた。しかし、 2期目のトランプ大統領は自信を深め、「アメリカ・ファースト」にさらに磨きをかけている。現在、ウクライナ戦争を終結させるためにロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領そして欧州各国首脳と精力的に交渉を続けている。ただ、ロシア・ウクライナ間で和平が成立したとしても、和平後のウクライナの「安全の保証」については欧州各国を前面に立たせ、米国は側面支援するスタイルを追及している。台湾に関してもコルビー国防次官は、台湾に対し防衛費をGDPの10%にすべきと発言している。これは台湾に一層の自助努力を要求しているのだ。言うまでもなく、オバマ大統領は既に2013年の時点で「米国は世界の警察官ではない」と言明している。

 

 米国は、本来モンロー主義すなわち孤立主義の国であり、第一次世界大戦時も最後まで世論は米国の参戦に消極的だった。 1939年に勃発した第二次世界大戦でも世論は参戦に消極的だったが、 1941年の真珠湾攻撃で参戦に踏み切ったのである。

 このような米国の動向を冷静に見れば、第二次世界大戦後の米ソ冷戦時代に西側のリーダーとならぎるを得なかった米国が特殊だっただけで、今や本来の米国に戻りつつあると見ることもできる。

 米国が本来の孤立主義の米国に変貌しつつあるのであれば、憲法9条により片務的な同盟関係を求める日本から米国が離れていく可能性がある。同盟の基本は相互防衛であり、片務性など本来あり得ない。安倍元総理は、このような問題意識の下、平和安全法制を成立させたが、そこで認められたのは「限定的集団的自衛権」である。その要件は「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」だ。これはほぼ個別的自衛権の範疇に近い概念である。もとより安倍元総理は現行憲法の解釈の範囲内で最善のことをされたと思う。

 

 昨年4月には岸田前総理は米議会で演説され、「米国は独りではない。日本は米国とともにある」「日米が国際秩序を先頭に立ってリードする」と述べられた。そのためには対等の同盟関係にステップアップする必要があるのではないか。「限定的集団的自衛権」を超えるものは憲法上認められないというのが内閣法制局の見解である以上、憲法改正は日米同盟を維持・発展させるためにも避けて通れない。

 トランプ大統領は「日米同盟は不公平だ」と述べた。これは1期目でも「米国は日本を助けるために命懸けで戦うが、日本は米国が戦争をしていてもソニーのテレビで観ているだけだ」と述べている。このように日米同盟に対する不公平感はトランプ大統領の信念ともなっている。これをトランプ大統領特有の見方だと軽視する向きが我が国の有識者の間に見られるが、2000年に出された「アーミテージ・ナイレポート」は、「日米同盟は米英同盟のようになるべきだ」として、日本に集団的自衛権に踏み込むことを既に求めていた。アーミテージ、ナイ両氏とも反トランプの立場だ。

 このように米国が抱く不公平感は、日米同盟の最大の弱点とも言える。米国が圧倒的なパワーを持っていた時代は、大きな問題になることはなかったとしても、中国の脅威が増大し、米国のパワーが相対的に低下している現在、米国が今後ともこの不公平感を許容するかは甚だ疑間だ。これに対し日本は基地を提供しているのでバランスが取れているという意見があるが、これは同盟の根幹がリスクの共有であることを考えれば、少なくとも米国の理解を得ることはできない。

 

 米国が同盟関係を結んでいる韓国、フィリピン、オーストラリアとの条約では、武力攻撃に対する共同対処義務が発生する地域はいずれも「太平洋地域」となっている。しかし、日米安保条約のみがその適用範囲を「日本国の施政の下にある領域」としている。

 まさに、これが、日米同盟が片務的とされている所以である。

 前述したとおり、本来は、憲法を改正してフルスペックの集団的自衛権を行使できるようにするべきだと思うが、今の政治状況を見るに憲法改正の道のりはかなり遠いと見るのが現実的である。しかし、厳しい安全保障環境はそれを待ってはくれない。そこで厳しい要件は課せられているが、「限定的集団的自衛権」の行使を前提として、日米安保条約の適用範囲を「太平洋地域」、そのハードルが高いのであれば「西太平洋地域」とし、少なくともグアム等の防衛には日本が関与することにより、米国の不公平感を解消することが必要ではないか。このことが日米同盟の信頼性を向上させ、抑止力向上につながることになろう。

 人間関係でもどちらかが不公平感を持てば、その関係は長続きしない。これが平凡なる常識である。

 


2025年8月18日号 週刊「世界と日本」2299号 より

独立国家としての国家戦略を推進する

 

創生『日本』

 

麗澤大学 特任教授

 

江崎 道朗

《えざき みちお》

1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、国会議員政策スタッフなどを経て2016年夏から評論活動を開始。主な研究テーマは近現代史、外交・安全保障、インテリジェンスなど。産経新聞「正論」執筆メンバー。2023年、フジサンケイグループ第39回正論大賞を受賞。最新刊に『なぜこれを知らないと日本の未来が見抜けないのか』(KADOKAWA)。

 国際政治力学が大きく変わりつつある。

 世界の警察官たる米国の力が相対的に低下したこともあって国際社会は再び「紛争の時代」に入った。こともあろうに国連常任理事国であるロシアがウクライナに対して公然と侵略戦争を仕掛け、中東でもテロと紛争が続いている。世界平和の調停役である国連は全く頼りにならず、かつ米国をもってしてもロシアの侵略を阻止できない。米国が味方になってくれればそれで安心という時代ではなくなってきたのだ。

 我が国にとって深刻な問題は、ロシアの10倍以上の経済力と軍事力をもつ中国が日本のすぐ隣に存在しているということだ。中国は21世紀に入って驚異的な経済発展を遂げ、2010年頃からインド太平洋地域で威圧的な動きを強めるようになった。南シナ海に軍事基地を設け、台湾に対する「武力統一」を公言し、台湾・沖縄を含む東シナ海で軍事訓練を繰り返している。

 中国の軍事的台頭に対して日本は幾つかの選択肢がある。

 

 第一は、中国の威圧的な対外行動を容認し、中国の影響下に入ることを甘受する道だ。

 第二は、中国による「力による現状変更」を米国によって抑え込んでもらう道だ。だが、軍事大国となった中国を、もはや米国だけで抑え込むことは困難だ。

 戦後半世紀以上にわたって我が国は安全保障を米国に依存してきた。しかし日本が主体的に動かなければ、貿易立国の基盤である「自由で開かれたインド太平洋」秩序を守れないばかりか、尖閣諸島なども喪いかねない。

 そこで2012年12月に発足した第2次安倍晋三政権は、第三の道を選択した。それは、自らの経済発展と軍拡、そして米国を始めとする自由主義陣営を結集して中国の威圧的な行動に立ち向かう道だ。

 この第三の道に向けた政権構想を作ったのは、派閥横断型政策集団・創生『日本』(平沼赳夫顧問、安倍会長)であった。

 

 創生『日本』は2012年春、中国の軍事的台頭に伴う国際情勢の激変への対応と長引くデフレからの脱却を目指し、『新しい日本の朝へ(中間報告・素案)』を策定した。その前文には以下のように記されている。

 《隣国・中国の軍事的台頭による日本周辺の軍事的・外交的環境の激変。米国は依然として最強のスーパーパワーであることは事実としても、今や力の相対化は否めず、日本の主権と独立の確保のみならず、アジアの平和と安定のために日本が果たすべき役割は増大している。

 しかし、この現実を前に、日本が何らの対応もなし得なければ、日本は独立の国家たり得ないだけでなく、「誇りある国家」として存続し得ない。そのような現実を乗りこえるべく、日本は今こそ現行の憲法を基盤とする体制を見直すとともに、国家としての明確な意思を確立することが求められている。》

 

 こうした問題意識のもと、2012年12月に発足した第2次安倍政権はアベノミクスを掲げて経済成長を目指すと共に2013年、戦後初めて日本独自の国家安全保障戦略を策定し、自由主義陣営を結集しつつ、「自分の国は自分で守る」国家体制の再構築に着手した。

 特定秘密保護法、平和安保法制などを次々と制定して「有事」に対応できる法整備を整え、日米同盟を強化するだけでなく、豪英仏加印などと軍事協力関係を構築してきた。

 この国家戦略を更に強化したのが岸田文雄政権だ。2022年12月、反撃能力の保持を謳った新たな国家戦略を策定し、5年間で43兆円の防衛費を使って防衛力の抜本強化を始めた。

 力の信奉者である中国との戦争を回避するためには、こちらも力がないといけない。そう考えて我が国はこの十数年、中国との対話を続ける一方で、日米同盟の抑止力、対処力を向上させ、かつ豪英仏加印といった同志国を糾合してきた。

 だが中国の習近平政権は台湾に対する「武力統一」を断念するつもりはなく、台湾周辺で大規模な軍事演習を繰り返している。しかも大規模演習は、恫喝目的の訓練ではなくなりつつある。米インド太平洋軍のS・パパロ司令官は2025年2月13日、ホノルル防衛フォーラムにおいて中国の軍事演習が2022年の6個旅団から2024年夏には42個旅団に拡大し、150隻の艦艇と200の水陸両用戦闘車両が参加する大規模なものに変容したと報告、これらは「単なる演習ではなく、リハーサルだ」と警告した。 

 

 こうした厳しい情勢判断のもと、米国は昨年12月23日、2025会計年度国防権限法を成立させ、実に8950億ドル(約140兆円)もの国防予算を決定した。2015年は5604億ドルだった国防予算を10年で1・5倍近く増やしたことになる。その狙いは「中国の抑止」だ。米国も必死なのだ。

 だが、それでも台湾「有事」を回避できるとは限らない。しかも中国はロシアや北朝鮮と連携して台湾だけでなく、朝鮮半島や南シナ海でも同時に紛争を仕掛けてくるシナリオも想定され、現有の米軍兵力だけでは対応できない。

 そこで3月30日、中谷元・防衛相との初会談後の記者会見でP・ヘグセス米国防長官は「中国共産党の威圧的な行動に日米は結束して立ち向かう」「西太平洋で有事に直面した場合、日本は前線に立つことになる」と言及したわけだ。

 

 こうした国家的危機に対応すべく自民党保守系議員も動き出した。6月29日、高市早苗、小林鷹之衆議院議員らが所属している創生『日本』(衛藤晟一幹事長、木原稔事務局長)は「日本がめざすべき道」とする以下のような新方針を公表した。

 《「台湾有事は日本有事」という認識のもと、自分の国は自分で守る防衛・インテリジェンス体制を強化し、同盟国・同志国との連携を深め、「自由で開かれたインド太平洋」を推進する。親の世代の家族が存命のうちに全拉致被害者の即時一括帰国を実現する。軍事組織としての自衛隊、緊急事態条項を明記する憲法改正を何としても成し遂げる。》

 平和を維持してこそ経済活動も社会保障も成り立つ。我が国の最優先事項は、台湾「有事」を抑止し、「自由で開かれたインド太平洋」を守るため、防衛費のさらなる増加を含む国家安全保障体制の拡充だ。

 


2025年8月18日号 週刊「世界と日本」2299号 より

創設する防災庁を

 

世界屈指の組織とするために

 

関西大学特別任命教授・社会安全研究センター長

京都大学 名誉教授

 

河田 惠昭

《かわた よしあき》

関西大学特別任命教授・社会安全研究センター長、人と防災未来センター長。京都大学名誉教授。国連SASAKAWA防災賞、防災功労者内閣総理大臣表彰など受賞多数。瑞宝中綬章。日本自然災害学会および日本災害情報学会の会長を歴任。著書に『これからの防災・減災がわかる本』『にげましょう』『津波災害(増補版)』等。

 本年1月から6月まで、8回開催された防災庁設置準備アドバイザー会議を経て、最終報告書が公表された。この内容を基本として、いよいよ防災庁の具体的な組織が、国会の審議などを経て具体化されようとしている。筆者の50年にわたる防災研究を終えてもよいわけであるが、南海トラフ巨大地震(以後、南トラ地震と略称)のような国難災害が発生してわが国が没落しないように、いくつもの目標をさらに実現しなければならない。

 

内閣総理大臣をトップとする司令塔を創設する

 2016年熊本地震では、安倍首相は政府が実施した『プッシュ型支援』は成功したと発表したが、実際は失敗だった。陸上自衛隊の大型ヘリコプターが災害直前に事故を起こし、飛行禁止になって使えず、救援物資集積地の佐賀県鳥栖市から被災地への輸送は、陸上輸送に限られ、そこで大規模な渋滞が発生して、決められた時間に決められた物資を多くの避難所に届けられなかった。この責任はどこにあるのかは、明らかにされてこなかった。そのようになった原因は被災地の実情が正確に報告されず、内閣官房のトップに立つ首相の指揮命令も明確でなかったからである。防災庁が実現しても、大災害では防災大臣ではなく、首相が内閣官房のトップに立って指揮命令する必要があり、司令塔機能の常設と強化によって、被災地で発生している事象を正確に把握し、関係省庁に指示する必要があろう。南トラ地震が発生した時、陸上自衛隊は約11万人しか被災地に派遣しない。これは2011年東日本大震災とほぼ同規模であるから、まったく足らず初動は失敗する。最大限の出動ができない理由は、この震災がきっかけとなって中国による台湾侵攻が始まる危険性があるからだ。自衛隊は国防が主務である。南トラ地震のような国難災害を国防と同列に見なせない政治体制が、致命的な被害軽減の弱点のままに残る。

 

憲法に緊急事態条項を明記する

 コロナパンデミックの時、政府は東京・幕張に大きな野戦病院を創ろうとしたができなかった。病院開設に当たってあまりにも関係する法律が多く、調整に長時間を要することがわかったからである。1961年施行の災害対策基本法には、緊急事態に関する規定として、災害緊急事態の布告と、それに基づく緊急政令の制定が明記されている。しかし、過去の災害に際して一度も発令されていない。感染症の場合の野戦病院と同じ理由である。筆者は4年前から、感染症と自然災害に強い社会を目指すニュー レジリエンス フォーラムの活動に参画しているが、緊急事態条項が憲法に書かれていないと、迅速な対応が不可能なことがわかった。わが国の近代化は明治維新から始まったが、そこでは欧米の真似をすることから始まったと言ってよい。大日本国憲法は当時のプロシャの憲法を7年間検討した吉田松陰門下の伊藤博文の草案に基づいていることがわかっているが、そもそもプロシャでは日本のように一度に千人単位で死亡する大災害は起こった経験がなく、同国の憲法に危機管理に関係するような案文が入る必然性はまったくなかったと言える。憲法に緊急事態条項が明記されていなければ、首相が指揮命令する司令塔の役割を果たすことは不可能だ。

 

防災庁の分局を地方に複数設置し、輪番制で全国展開する

 防災庁の分局を誘致したいという要望が、21ケ所からあり、道府県の3割が名乗りを上げている。まず、地方分権の考え方であるが、“住民に身近な行政”だからという理由で権限や財源を移譲すると、失敗は免れない。なぜなら、権限や財源を移譲すると、それを適切に利用できるかどうかが問題となろう。まず、自治体などは誘致そのものが目的となっており、実現すれば、必要経費の妥当性や執行状態の適否を分局を受け持つ自治体が審査し、改善する必要がない。これを避けるために、既存の地方気象台や地方建設局など、災害に関係する政府の現業機関との協働が必須で、当初から10程度以上を候補とし、その内、初回、3程度指定し、数年後には入れ替わる形で、待機中の分局候補の実務経験を増やすことを目指した輪番制を採用することが考えられる。こうすると、防災力の全国的なレベルアップが長期的に実現すると考えられる。

 

全省庁は大被害となる事象を事前開示する

 筆者が発見した『社会現象の相転移』の発生を事前防災によって防ぐという世界初の画期的な試みを成功させなければならない。『社会現象の相転移』は、本年6月に公表されたアドバイザー会議の最終報告書の第1ページに脚注付きで紹介され、その後も2度記述されている最重要な事前防災策を構成する。まず、社会経済被害については、災害後に被害内容や特徴、大きさが具体的に判明するのが常態であり、いつも対応が後手であった。だから、初動が遅れ、社会の混乱状態が長期化した。これらが事前にわかれば、縮災(ニューレジリエンス)は必ず成功するだろう。しかも、事前に被災者や被災組織は詳しい被害がわかり、事前対策が具体的にできるはずである。また、人的被害についても、筆者の解析から、例えば、災害関連死は停電と断水を同時に経験した多くの後期高齢者で発生していることがわかり、しかも、被災と関係しない『孤独死』との区別ができず、結局、南トラ地震では合計すると26万人に達し、津波による犠牲者数を上回る危険性を提起したい。早期津波避難によって7、8割も犠牲者が減るというのは机上の空論であろう。先鋭的な防災研究のさらなる推進が期待される。

 

防災大学校を創設する

 防災庁の下で、分局を輪番制で全国展開しようとするとき、最大の問題は適切な国家、地方公務員を確保できるかどうかであろう。適切とは、実践性を有する能力と人数ということであり、まず職員研修や訓練を受けなければならない。そこで、教育・研修が可能で、かつ課題解決の研究能力を有する大学校を創設し、公務員のスキルを磨くことが求められる。大学校のひな型になるのは2002年に神戸に創設され、筆者がセンター長を務める人と防災未来センターである。このセンターは、ここで述べた機能を有しており、かつ危機管理できる人材として、すでに1万人以上の自治体職員の研修を実施してきた。したがって、この機能を高度化し、施設の拡大を図ることが先決だ。そして、分局設置を希望する複数の自治体の既存の公共施設を用いて、地方に応分の財政負担をお願いして同様の組織をもう一つ創設すれば、成功は間違いがない。また、防災教育をさらに推進・充実するには、とくに私立学校での取り組みが遅れていることに鑑みて、教育委員会が先頭に立って進めることが重要だろう。

 最後に、南トラ地震という国難災害発生を目前に控え、世界に誇るべき平和主義を自らの責任で守っていくという国民の覚悟と行動が必要だ。防災と国防は同列であり、憲法改正が視野に入る。

 


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