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    2019年1月7日 週刊「世界と日本」第2140号より

    新春対談

    生命 今そこにあるべき姿を

    ― 伝統文化と宇宙のスケールで考える ―

    裏千家大宗匠・前家元(第15代) 千 玄室 氏

    千葉工業大学惑星探査研究センター所長
    東京大学名誉教授 松井 孝典 氏

    (司会)政治ジャーナリスト 細川 珠生 氏

     2019年、新たな年を迎えるにあたり、裏千家第15代・前家元の千玄室大宗匠と、日本の惑星科学研究の第一人者で東京大学名誉教授、現在は千葉工業大学惑星探査研究センター所長の松井孝典氏を迎え、細川珠生氏を司会役に、「伝統文化と宇宙のスケールで生命 今そこにあるべき姿を考える」と題して、お二人に大いに語っていただいた。(対談要旨は次の通り)

    大宗匠 茶道を知れば日本が分かる

    松 井 「知の流れ」を止めないこと

    千 玄室氏
    千 玄室氏

     細川 明けましておめでとうございます。新元号に変わる年頭の今、「日本人が世界でどういう役割を担い、どういう立場なのか」が問われています。そこで、日本人について考え、かつ、未来に向けてのお話をしていただきたいと思います。
     最初に、大宗匠にお伺いしたいのですが・・・。いつも「茶道をたしなむと日本、日本人のことがよく分かる」とおっしゃっていますが、それはどういう点からでしょうか。
     大宗匠 日本が大和、奈良朝からつくりあげてきた土壌の中に、「なさけ」というものがあり、日本は「情の国」であったことです。
     この「情」は、単に人になさけを施すだけではなく、他に対する思いやりもあります。日本は神様がおつくりになり、稲作という農業を中心とした国になったわけです。
     自然と共にある「自然共一」という意味で、この実りが神様、仏様の恵みであり、このお米を食べて生活できることの喜び、他に対する思いやりが日本の土壌の中に生まれてきて、大和魂が染み込んだ「和魂漢才」を皆持っているのです。
     663年に「白村江(現在の韓国南西部の錦江河口付近)の戦い」があり、朝鮮の百済と仲が良かった日本は、援軍を送りましたが負けました。その時に日本が考えたのが、第1番目に「防御」すること。防塞を作り、武人をつくらなくてはいけない。第2番目が、「外のことをもっと勉強」しなければいけないと、初めて目を外に向けました。
     日本では、防御に必要となる武士が中心になった鎌倉時代に、「武士道」の思想が現われました。その武士道を支えたのが「茶道」です。ただ茶を飲むだけではなく、そこに、主客とともに常に相手のことを思いやる「情の文化」が全部こめられており、「文武両道」の国であることが、日本国家の基本姿勢です。
     今、それを皆忘れて「文」と「武」が分離してしまっています。しかし、日本を知るためには、情の文化を知る事が大切で、総合文化と言われる茶道を知れば、日本が分かるのです。

    松井孝典氏
    松井孝典氏

     細川 松井先生は研究者として世界を相手に闘っておられます。日本人の研究者として、日本人だからできることは何でしょうか。
     松井 アジアの国でノーベル賞を一番とっているのは、日本です。その理由の1つは、国語、日本語で考えているからと思われます。明治以来、翻訳文化で外国のものは日本語で読めます。そして、日本人が世界に冠たる業績を上げているのは、おそらく日本語でものを考えているからです。これは対象が自然科学であろうと、どんな分野でも同じです。
     細川 いまは「外へ」という意識が低くなっていると思いますが、「知への探求」を持ち続ける心がけは、どういうところにあるのでしょうか。
     大宗匠 心だけではないのですが、その時代、時代において変化があるし、変わっていかなければいけない。例えば漢字、文学は中国から入ってきました。私たちは中学時代に漢文を習いましたが、返り点とか、一、二、三という読み方を考えた日本人は、すごいなと思います。
     もう1つは、漢字を崩して「万葉がな」をつくりました。その文字でいろいろな書き物が読める。読んだその中身が、自分の心の中に1つの変化を起こしてくるのだと思います。
     松井 今、私が注目しているのは、「流れ」という現象です。宇宙も、星も、地球も、そして生命も文明も、基本的に開放系という流れの中にある。発展と停滞、あるいは変化は、「流れが止まるか維持されるか」という点で異なるのです。ギリシャ以来の知が1000年間も停滞したのは、実は知の流れが止まっていたからです。
     それは何故か? 旧大陸しか知らなかったからです。しかし大航海時代が始まり、新世界があることを知って、新しい知の流れがその時生まれました。世界が拡がり、現代では宇宙まで拡がったわけです。
     大宗匠 その知の流れというのは、人類全ての知ですか。
     松井 はい、ありとあらゆるもの。生物、無生物、人間の知を含めて進化が起こるのは、一言でいえば流れがあるからなのです。
     大宗匠 なるほど、川の流れもそうですね。
     松井 時間的に変化していく形、構造を進化と呼ぶとすると、流れのない状態は、環境との平衡状態で、死です。
     人類の中で言葉をしゃべるようになったのがホモサピエンス。その結果、脳の中のニューロン(神経細胞)が接続して、外界からの情報を処理する能力が生まれました。その時から私たちは知の流れを加速しているのです。
     大宗匠 しかしそうなってきた時、国によって言葉が、例えば日本語、中国語、英語と違いますよね。これも知の流れですが、それは将来、どう変化していくのでしょうか。
     松井 文化は言語だと私は思っています。それはなくならないし、言語が共通化されることもないと思います。ただ、言語で唯一、共通化されているのは数学で、宇宙や地球、生命を記述する共通の言語なのです。
     大宗匠 なるほど、そうですか。方程式から発展していく無限大ですね。知の流れはずっと進んでいくと、人間の未来の到達点へ行けるわけですか。
     松井 知が発展していけばいくほど、最終点に到達するのではなく、むしろ「知ること」、「分かること」と、「分からないこと」の境界がはっきりしてきます。私たちは境界を知っているから、最先端の研究ができる。したがって「境界を知る」ことが大切です。

    左から松井孝典氏、細川珠生氏、千 玄室氏
    左から松井孝典氏、細川珠生氏、千 玄室氏

    大宗匠 「生かさせていただく」が信条

    松 井 型を究めた上で〝型破り〟する

    細川珠生氏
    細川珠生氏

     細川 境界を知るということは、普通の人にはなかなか難しいのではないでしょうか。
     松井 自然科学の世界では一点突破です。まず世界の最先端に、針の穴でもいいから到達する。この道一筋を究めて最先端を突破した先に、初めて知の境界が見えてくるのです。
     細川 大宗匠もお茶の道を究めてこられたわけですね。
     大宗匠 そうなのです。私は物心ついた時から今日まで、頭で理解するだけでなく体でそれを体験し、いろいろなことをそこで発見して来ました。そしてそれが自分のものになって、初めて自分のお茶になるわけです。
     松井 今、大宗匠がおっしゃった言葉を聞いて思ったのは、「型を究めると、型破りができる」ということです。型を知らない人が型破りをやったら、無茶苦茶になります。
     細川 お茶も型が大事と言われていますね。
     大宗匠 そうなのです。型から外れた「守破離(しゅはり)」という言葉があるのですが、多少私も今、それの少し手前くらいにいるのかなあと思います。
     松井 私たちの世界は、「分かる」と「分からない」の境界を議論している。分かるとは何か。これはいわゆる科学の方法に基づくのです。皆さんが分かった気になることを、私は「納得する」と表現しています。納得すると、分かるとは違うのです。
     細川 分かると納得することとの違いですが、今、みんな中途半端です。いつから日本人は分かった気になって、探求しなくなったのでしょうか。
     松井 素養があれば初めは中途半端でも、すぐに最先端、先ほど言った境界まで到達できるのです。その元は江戸時代の寺子屋教育であり、国語の素養だと思いますね。国語というのは結局、論理力なのです。江戸時代までの日本人は、論理的な思考ができていた。そこで、外国に行ってもすぐに最先端に到達できたのです。
     大宗匠 おっしゃる通りだと思います。私たちの旧制中学、高校、大学も一貫した流れの中で教育が行われ、偉大なたくさんの先輩、人財が育てられてきました。そういう方々は、自分のやっていることが「好き」でないとできませんよね。
     松井 まさにその通りです。私は自分のやっていることを、仕事だと思ったことは一度もありません。中途半端というのは、膨大過ぎる情報の中で、最先端に行けない状態を意味します。基本的に最先端を自分で発見できれば、その時点で中途半端が克服できる。
     細川 それでは最後に、リーダーとして必要なことを、一言ずついただきたいのですが。
     松井 「リーダーは決断力だ」と私は思っています。決断力がどのように生まれるかというと、自分の判断の座標軸がはっきりしていることが重要です。
     大宗匠 戦後、大学へ復学し、それから禅宗のお寺へ入ったら、何をどうすればいいのか、誰も何も言ってくれない。つまり無視されるのですが、それが一番大事なのです。そこでだんだん自分自身が無になっていく。
     その時に初めて、「ああ、そうか。俺は戦争で命を助かってきて、だから、本当に皆さんに生かさせてもらっている」と気がついたのです。その時以来、「生かさせていただく」というのが自分の信条です。
     リーダーですが、決断力と先見の明と、側近を置かないこと・・・。リーダーは孤独でいいのです。困った時に自分自身が判断し決断することが、一番大事なリーダーシップなのです。
     細川 今日はありがとうございました。

    《せん・げんしつ》 1923年、京都府生まれ。同志社大学卒業後、ハワイ大学修学、韓国・中央大學校大学院博士課程修了。49年、大徳寺官長後藤瑞巌老師のもとで修行得度、斎号「鵬雲斎」、安名「玄秀宗興」を受け若宗匠となる。64年、裏千家第十五代家元となり「今日庵」庵主として宗室を襲名。2002年、嫡男千宗之に家元を譲座し、汎曳千玄室大宗匠(哲学博士、文学博士)。

     

    《まつい・たかふみ》 1946年、静岡県生まれ。東京大学卒、同大学院修了。理学博士。NASA研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授等を経て現在、千葉工業大学惑星探査研究センター所長、東京大学名誉教授。専門は惑星物理学、アストロバイオロジー、文明論。86年に科学誌『ネイチャー』に海の誕生を解明した「水惑星の理論」を発表し、世界的に注目される。

     

    《ほそかわ・たまお》 1991年、聖心女子大学卒。95年、「娘のいいぶん~がんこ親父にうまく育てられる法」で日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。95年より「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)に出演中。千葉工業大学理事。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。文部科学省、警察庁、国交省等で有識者会議等委員を務める。元品川区教育委員長。

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