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    Coffee Break<週刊「世界と日本」2215号より>

    感染症リテラシーを身につける

    生命科学者・大阪大学大学院
    医学系研究科病理学教授

    仲野 徹 氏

    《なかの とおる》

    1957年、大阪市生まれ。大阪大学医学部卒業、内科医として勤務の後、京都大学助手・講師(本庶佑研究室)などを経て、1995年から大阪大学教授。専門は、いろいろな細胞の作られ方。2019年から読売新聞の読書委員を務める。著書に『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)など。趣味はノンフィクション読書、僻地旅行、義太夫語り。


    撮影:松村琢磨 氏

     

     ワイドショーなどで新型コロナウイルス感染症についてのコメントを見ていると玉石混交だ。正しく分かりやすいこともあれば、おいおいそれはちょっとないだろうと思うこともある。前者のようなものばかりだといいのだが、後者のような怪しげなものには騙されないようにせねばならない。そのためには感染症に対するリテラシーを身につけておけばいい。それには、いまが絶好のチャンスだ。

     ここ2年の間に、ほとんどの人は大量の新型コロナウイルス情報に接している。その知識を元に、ウイルスとは何か、感染症とは何か、そして感染防御にはどのようなメカニズムがあるか、というように肉付けしていけばいいのである。

     もうさすがにそんな人は多くないと思うが、新型コロナウイルスの感染が始まったころには、ウイルスと細菌の区別がついていない人もけっこういたようだ。感染症の原因といえばウイルスと細菌だが、両者はまったく違うものである。

     細菌は、小さい、核がないなど、いろいろ異なったところもあるし、1個で生きていける単細胞ではあるが、基本的には我々人間と同じ生命体、すなわち細胞生物である。それに対して、ウイルスは、生物と非生物の中間的な「もの」に過ぎない。ごく簡単にいうと「タンパク質に覆われた遺伝子から成る粒子」でしかない。ノーベル賞に輝いた免疫学者ピーター・メダワーによると「タンパク質に覆われた悪い知らせの欠片」ということになる。

     生物か非生物かがあいまいなのだから、ウイルスに生き死にはない。なので、ウイルスを「殺す」という言い方は不正確で、そのかわりに「不活性化」という。また、ウイルスの「たくらみ」などと言われることもよくあるが、ウイルスごとき「もの」が何らかのたくらみを持つことなどあり得ない。あくまでも、人間からそう見えるに過ぎない。単なる拡大解釈なのである。

     ウイルスは細菌に比べるとうんと小さい。種類によって違いはあるけれど、ごく大ざっぱに、ヒトの細胞は約10マイクロメートル(マイクロメートルは1ミリメートルの1000分の1)、細菌はその10分の1で1マイクロメートル、ウイルスはさらにその10分の1と頭にいれておけばいい。実際に新型コロナウイルスの直径は約100ナノメートル(=0・1マイクロメートル)で、ヒトの細胞のおよそ100分の1である。ただしこれは直径ベースなので、体積にするとその3乗になるので100万倍も違う、文字通り桁違いの存在だ。

     例外的なものを除き、細菌は自分だけで増殖することができる。それに対して、ウイルスはウイルスのみで増えることはできず、細胞に侵入して、細胞の力を借りなければならない。このことを頭に入れて、ウイルスのライフサイクル(生活環)—ウイルスがどのようなプロセスで増えるか—を少し考えてみてほしい。

     正解は、①細胞に侵入する、②ウイルスに必要なパーツが細胞内で合成される、③ウイルス粒子が組み立てられる、④細胞から出て行く、である。②はさらに、ウイルスの構成要素、すなわち、ウイルス遺伝子の合成とウイルスタンパク質の合成に分けることができる。

     つぎに、このライフサイクルを頭にいれて、ウイルスの増殖を防ぐにはどうすればいいかを考えてみよう。原理的にいくと、①〜④のプロセスのどこかをブロックしてやればいいということになる。

     中和抗体は、ウイルスに結合して①のステップを阻害するタンパク質である。ワクチンは中和抗体の産生を促すものであるから、間接的ではあるが①に関係する。また、新型コロナウイルス感染に効果のある経口薬は②を抑制するものが開発済みで、メルク社のモルヌラビルは遺伝子の複製を、ファイザー社のパクスロビドはウイルスタンパク質の合成を阻害する効果を持っている。

     細菌とウイルスはまったく違うものなのであるから、抗ウイルス剤が細菌に効くことはない。それどころか、あるウイルスに対する抗ウイルス剤は、そのウイルスにしか効果を持たないことが多い。また、抗生物質は細菌を攻撃する薬剤であるから、ウイルス感染には全く効かない。こういったことは、細菌とウイルスの違いを認識していればすぐにわかることだ。

     どうだろうか?ちょっとした基礎知識があれば、かなりのことを類推できるとおわかりいただけただろうか。それこそがリテラシーのなせる技だ。学生に教える時に口を酸っぱくしていうのだが、まずは絶対に必要なこと、原理原則的なことを頭にたたき込む。そして、新しい情報がはいってきた時には、まずその原理原則にあうかどうかでチェックする。

     感染症を理解するには、細菌とウイルスのことを学ぶだけでは不十分で、それらに対して生体がいかに反応するかを知らなければならない。外部からの異物侵入に対する防御機構、それが免疫だ。免疫学は生命科学の中でも最も研究が進んでいる分野のひとつで、その膨大な成果の理解は一筋縄ではいかない。残念ながら、基本的なことを理解するだけでも、けっこうな学びが必要である。

     

    『みんなに話したくなる感染症のはなし 14歳からのウイルス・細菌・免疫入門』(河出書房新社)
    定価1,540円(本体1,400円)

     1昨年、緊急事態宣言で在宅ワークをしていた時、中高生にもわかるような感染症の本を書きませんかと、お誘いがあった。以前、いっしょに1冊作らせてもらった編集者さんだったし、出張もなくなってとてつもなく暇だったので喜んでお受けした。それが『みんなに話したくなる感染症のはなし 14歳からのウイルス・細菌・免疫入門』(河出書房新社)である。

     サブタイトルはウイルス、細菌、免疫の順になっているが、本での章立ては、ウイルス、免疫、細菌の順にしてある。比較的シンプルでわかりやすいウイルスのことを最初に持ってきて、つぎに、ウイルス感染に対する免疫を、そして免疫を頭にいれた上で細菌について学んでもらう、という目論見だ。

     「14歳からの」としてはあるが、実際のターゲットは、こういった分野にあまり馴染みのない大人たちと考えている。興味のある方はぜひお読みいただきたい。章末にまとめてある基礎知識のまとめだけでも、十分な感染症リテラシーが身につくはずだと自負している。

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