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    Coffee Break<週刊「世界と日本」2217号より>

    「プラスチック資源循環促進法」が目指すもの

    中部大学副学長
    経営情報学部長・教授

    細田 衛士 氏

    《ほそだ えいじ》

    1953年東京生まれ。77年慶應義塾大学経済学部卒業、82年同大学経済学研究科博士課程満期退学。80年同大学同学部助手、87年助教授、94年教授。2001年〜2005年慶應義塾大学経済学部長。19年中部大学経営情報学部教授、慶應義塾大学名誉教授。08年博士(経済学)(慶應義塾大学)。主要著書は『循環型社会 —制度設計と制作展望—』、『環境と経済の文明史』、『グッズとバッズの経済学 第2版』、『資源の循環利用とは何か』など多数。

     

     

     今、プラスチック資源循環促進法が各業界から注目を浴びている。プラスチック資源は極めて利便性が大きい。そのため、プラスチックの生産・販売・利用に関わらないビジネスはほとんどないと言ってよいほど、プラスチック資源は生活や産業活動の隅々にまで入り込んでいる。プラスチック資源循環促進法の影響の及ぶ範囲もそれだけ大きくなるわけであり、注目が集まるのも当然のことと言えよう。

     

     いったいこの法律は何を目指し、プラスチック資源の循環利用についてどのような方向に経済社会を導こうとしているのだろうか。この点を見誤ると、プラスチック資源の高度な循環利用について的確な対応を取り損なう恐れが生じる。

     そこで本稿は、この法律の成立の背景にある経済社会状況を見据え、本法律の位置づけと今後の道筋について展望を与えることにしたい。

     法律の詳細については、他の文献や環境省・経済産業省などのホームページの解説記事に譲ることにする。

     まず強調しておかなければならないのは、現在世界の各国で始まっている循環経済のトレンドである。

     日本では既に2000年に施行された循環型社会形成推進基本法やその後の個別リサイクル法の施行で、資源の高度な循環利用の動きが始まっている。

     だが、「循環経済」の名を広く世に知らしめたのは、EUが2015年に提示した「循環経済パッケージ」である。これによって循環経済の流れは定着したと言えよう。

     ところが、一言で循環経済とは言っても、すべての資源が高度な循環利用の流れに沿って動いているわけではない。自動車や家電製品はかつてからリサイクルがされていたが、個別リサイクル法が施行されたこともあって、循環利用が進んでいる。

     ところが、プラスチック資源の場合、国内での循環利用は極めて心もとないものであった。使用済みプラスチックの処理の多くが熱利用であり、国内でのマテリアルリサイクルは10%に行くか行かないかの程度だ。使用済みプラスチックの多くが海外でリサイクルされていたのである。

     このような状況を抜本的に改善するために導入されたのがプラスチック資源循環促進法なのであり、単にプラスチック資源の高度な循環利用のための法律としてのみならず、循環経済構築の重要な要素として位置づけられるべきものである。

     プラスチック資源の高度な循環利用を実現することの重要性は、自動車や家電製品と異なり、種類の異なるプラスチック資源が網の目のよう産業構造の中に入り込んでいることからもわかる。

     利便性は高いけれど分別回収・処理・リサイクルの難しいプラスチック資源のフローをコントロールする、それが本法律の大きな狙いなのである。

     循環経済構築という背景のもとで作られた法律であるだけに、生産物の揺りかごから墓場まで、すなわち動脈の流れと静脈の流れを合わせた全生産物連鎖の上で、本法律はプラスチック資源の循環利用を促進することを目指している。

     この点はとても重要なので簡単に触れておきたい。

     まず生産物連鎖の上流では、国によって環境配慮設計指針が製造業者やブランドオーナーに示され、環境に配慮したプラスチック製品を消費者が選べるような経済社会への誘導が目指されている。

     次に、中流すなわち販売・提供段階であるが、小売業やサービス事業者による使い捨てプラスチック資源の抑制が求められている。プラスチック製スプーンなど12品目が特定品目として選ばれ、その使用の回避・抑制の措置が講じられている。小売業やサービス事業者は、こうしたワンウエイプラスチック製品については、有料化や代替材への切り替えなどによって対処することなどが求められている。

     下流の排出・回収・リサイクル段階であるが、あらゆるプラスチック資源の効率的な回収やリサイクルを促進するための3つの手法が定められている。

     1つ目は市町村の容器包装リサイクル法のルートを用いた、プラスチック製容器包装と製品プラスチックの一括回収・リサイクルである。

     2つ目は、国の認定によって製造事業者などの廃棄物処理法上の許可を不要とすることによって、効率的な回収・リサイクルを促進しようとする措置である。

     3つ目は、産業廃棄物系のプラスチックについても、排出事業者が的確な計画を立てそれを国が認定すれば廃棄物処理法上の許可を不要とする措置である。

     このように、設計・製造段階(上流)、販売・提供段階(中流)そして排出・回収・リサイクル段階(下流)すべてでプラスチック資源のフローをコントロールし、プラスチック資源の循環のループを閉じることを目的としたのがこの法律なのである。循環経済構築の重要な要素としての位置づけがよくわかるだろう。

     しかし気になる点がある。それは容器包装リサイクル法などと異なり、製造事業者やブランドオーナーの生産者責任が課されていない点だ。いわゆる拡大生産者責任がないと、循環のループが閉じにくくなる。生産者に一定の責任が課せられてこそ、環境配慮設計や再生資源の有効利用が進むからだ。

     だが、既に述べた通りプラスチック資源は生活や産業活動の隅々まで複雑な形で入り込んでいるために、従来のような拡大生産者責任制度をとりにくい。誰がどの程度責任を負い、どのくらいのリサイクル料金を支払うのか決めるのは容易なことではないからだ。お金の管理や、フロー制御の主体の特定を考えても大変なことがわかる。

     だからこそ、プラスチック資源の生産・販売・利用に関わるあらゆる主体が自主的に個別単位あるいは業界単位でこの法律に関わることが不可欠になるのである。

     いわゆるソフトロー(国や自治体による強制力が担保されない非法規範)による自主的取り組みがこの法律の成否を決すると言っても過言ではない。

     この考え方は、他の資源の循環利用にも応用できる。これからの資源の高度な資源循環においてソフトローの役割を強調してもし過ぎることはない。

     

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