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    Coffee Break<週刊「世界と日本」2236号より>

    おもろい人生のあゆみ方

    生命科学者・大阪大学
    名誉教授

    仲野 徹 

     

     

     

     

     

    撮影:松村琢磨 氏

     《なかの とおる》 1957年、大阪市生まれ。大阪大学医学部卒業、内科医として勤務の後、京都大学助手・講師(本庶佑研究室)などを経て、1995年から大阪大学教授。2022年3月から現職。専門は、いろいろな細胞の作られ方。2019年から読売新聞の読書委員を務める。著書に『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)など。趣味はノンフィクション読書、僻地旅行、義太夫語り。

     亀の甲より年の功、といったところなのだろうか。あるいは、単に楽しそうに見えるせいかもしれない。「元気のでる講演を」とかいう依頼をちょうだいすることがある。なんやねんそれはという気がしないでもないが、喜んでお引き受けする。

     

     昨年の3月に長年勤めた大阪大学医学部を定年で退職した。現役時代の終わりの方、コロナ禍の前までは、年間およそ50回の講演をこなしていた。大学というのは風通しの悪いところなので、まわりの教授が何をどの程度こなしているのかはほとんど知りようがない。だから、講演の数はおそらく少なくない方だろうという気がするが、実際のところはよくわからない。ただ、講演内容のバラエティー豊富さには自信がある。

     これまでお引き受けしたうちでいちばん多かったのは、がんについてのが話である。これは2017年に出版した『こわいもの知らずの病理学講義』(晶文社)が8万部近くも売れたおかげだ。次いで多かったのは「エピジェネティクス」について。聞き慣れない言葉だが、専門にしていた研究分野の名称である。他に、「論文の書き方・通し方」といった教育的なものや、「研究不正」、「医学ノンフィクションを読む」、などといったテーマもある。「がん」と「エピジェネティクス」以外はいわば余業なのだが、それぞれにそのような講演をするようになった理由がある。なかでも気に入っているのは、元気の出る講演だ。

     タイトルは「おもろい人生のあゆみ方」。最初は5年ほど前になるだろうか、医学生や若手医師のキャリアパスについての講演会用に頼まれたのがきっかけだった。若い人たちを元気づけるような内容でお願いしますという連絡だった。初めてのお題での講演を考えるのはなかなか大変である。この時もずいぶんと苦労したのを覚えている。

     元気を出してもらおうと思っても、話すことができる内容は限られている。自分のキャリアをどう築いてきたか、途中にエピジェネティクスの解説をはさんで、書籍の執筆や趣味である僻地旅行など研究以外の遊びへと話題を進める講演を組み立てた。その時その時に何を考えて行動してきたかがメインである。自分で言うのもなんだが、若い人たちの評判は上々だった。

     プレゼンの内容は、一度作ってしまうとけっこう使い回しがきく。もちろん、聴衆やシチュエーションによって調整していく。そうこうしているうちに、どこがうけてどこがダメかもわかってくる。元気が出る講演は、職務先以外の大学での特別講義などで5〜6回はさせてもらっただろうか、そのあたりで定年を迎えることになった。

     大学では、定年前に「最終講義」をおこなうのが通例になっている。ほとんどの先生はご自分の研究について詳しくお話をされる。そうなると当然、専門的になるので、関係者以外が聞いても面白くない、というか、わからない。私の最終講義は、そんなではあかんという事情があった。

     本業以外に本や書評を書いたりしてきたこともあって、研究以外の知り合いも多い。そういった関係で、思想家の内田樹先生や、ヒョウ柄のコスチュームでテレビのコメンテーターなどをつとめてられる谷口真由美さんらが聞きに来てくださるという。ネット配信の聴衆は、研究者以外の人の方が多そうだ。そうなると、研究の話だけではつまらないに違いない。で、ふと閃いた。元気の出る講演、「おもろい人生のあゆみ方」をベースにすればいいのではないかと。

     一世一代、というほどではないけれど、ある意味では大学人生の集大成である。元ネタがあったとはいえ、準備にはものすごく時間をかけた。生い立ち、研究の話—ただし三分の一くらい—、そして、研究以外での活動について。タイトルは「おもろい人生、その途上にて —研究だけが人生か—」にした。大学は研究にしか興味のない人も多い。サブタイトルはそういった先生たちに喧嘩を売ってるようだからやめたほうがいいのではないかと忠告してくれる人もいた。だが、そのままにした。だって、研究だけの人生って、つまらなさすぎるではないか。

     ちょっとえらそうだが、さまざまのエピソードから得た教訓のようなものを、「おもろく有意義に生きるための7つのヒント」にまとめてみた。それが以下の七つである。

     

    一.複数の(すぐれた)師匠に師事すること

    二.時には上手に「騙される」こと

    三.考えすぎずにやってみる、行ってみること

    四.貪欲に学び、経験を蓄積させていくこと

    五.文章を書くこと、できれば他人の目にさらすこと

    六.アウェイに出る勇気を持つこと

    七 生産性をあげ、楽しみながら暮らすこと

     

     詳しく紹介するには紙面が足りないので、興味がおありの人は【仲野徹×最終講義】で検索してYouTube(ユーチューブ)をご覧いただきたい。

     とりわけ大事なのは七、楽しみながら暮らすことだ。そんなこと簡単にできないだろうと思われるかもしれないが、そうでもない。要は心の持ちようだ。多くの心理学研究は、面白いと感じた時に笑うだけでなく、逆に、笑っていれば面白くなってくることを証明している。悲しいと泣くという関係も同じである。そのアナロジーで、どんなことでも、楽しいと思い込むようにすれば楽しく感じられるのではないか。実際、そのように考えて行動してきたし、少なくともある程度はうまくいく。

     うっとうしくても、どうしても避けられない用事はある。そんな時こそ、これは面白いに違いないと思い込むようにする。たとえば、その仕事のごく一部でもいいから、面白そうなことを見つければよい。本当に面白いかどうかではなく、脳に面白いと勘違いさせられれば十分だ。楽しい時間は早く過ぎ去ぎる。もし面白いと思い込めれば、いやなことであっても早く終わったように感じることができるのだ。

     これで楽しみながら暮らすことができたら儲けもの。これからの1年、騙されたと思ってやってみてください。うまくいかなくとも、何も失うものはないのですから。

     

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