Coffee Break<週刊「世界と日本」2297号より>
爽風エッセイ
食のまち大阪をガストロノミーツーリズムで満喫する

一社・ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構理事長
小川 正人氏
2016年に温泉地を拠点に日本の食を世界にアピールする取組であるONSEN・ガストロノミーウォーキングを始めてからもう9年目になる。アルザスのガストロノミーウォーキングに想を得たこの取り組みは、北は北海道から南は沖縄まで、200回以上の開催を重ねた。変化に富んだ日本の四季の絶景をウォーキングの目線で楽しみながら、その土地ならでは食や地酒を味わい、地元の人たちのホスピタリティーに触れて、参加者の満足度は高く、多くのリピーターに支えられている。
今回のテーマとなる食い倒れの異名をとる大阪は、食の魅力に溢れている。
大阪のグルメと言えば、たこ焼き、お好み焼き、うどんに代表される粉もんが、魅力的だし、ソースの二度漬け禁止等が有名な串カツなどだろうか?特に串カツは、大衆店だけでなく高級店もあり、ワインなどにも合う素晴らしい料理である。大阪の食の歴史は、非常に奥深い。天下の台所といわれるように歴史的に全国の産物が終結した。かつて北前船に運ばれて、利尻昆布が日本海~瀬戸内海を経由して大阪から京都に入り、京料理となり、日本の「だし」の文化を作った事は有名である。大阪は、なんでも揃っており、食べられるからか、京料理や江戸前寿司に匹敵するような大阪料理というものがすぐには思いつかないほどである。
昨今のインバウンドブームと万博開催が相まって、多くの外国人が大阪に訪れている。食のまち大阪を世界にアピールする絶好の機会である。
「食」そのものを楽しむツーリズムであるガストロノミーツーリズムは、その土地の気候風土が生んだ食材、習慣・伝統・歴史などによって育まれた食を楽しみ、その土地の食文化に触れることを目的としたツーリズであり国連世界観光機関(UNWTO)が強力に推進しており、世界各国で大きな潮流となっている。万博に出展している各国も「食」のアピールに余念がない。フランスでは、私がシニアアドバイザーを努めるアルザスのワインがフランス館のオフィシャルワインに選ばれた。彼らは、この機会に同国のトップソムリエ等を帯同したアルザスワインのデレゲーションを日本各地で開催している。リースリング等の白ワインを中心とするアルザスワインは、寿司などの日本食との相性も良い。万博を契機に日本市場での存在感を高めて行きたいようだ。世界が、大阪に注目しているこの機会に、世界の人々に大阪の料理を楽しんで貰いたい。前出のアルザスワインと大阪の串カツ等は相性も抜群であろう。この他にも世界との邂逅で思わぬマリアージュが生まれ、新たな大阪料理の出発点になるかもしれない。
万博を契機として世界各国の文化や料理との出会いから、誕生する「新しい大阪料理」を私はとても楽しみにしている。万博開催期間中の10月には、泉南市で、実験的なONSEN・ガストロノミーウォーキングを実施する予定である。新しいマリアージュから生まれる大阪の味に是非期待して欲しい。