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    Coffee Break<週刊「世界と日本」2298号より>

    爽風エッセイ

    アンダルシアのオリーブ工房

     

     

     

     

     

     

     

     

    ジャーナリスト

    千野 境子 

     新聞社の外信部記者が長かったので、海外へ旅する機会は普通の人よりは多かったと思う。けれど学生時代から憧れの国スペインには縁がなかった。

     だから退職後、真っ先に出掛けた旅の行先はスペイン。2012年、14年、16年と訪れ、これからは偶数年にスペイン旅行というのも悪くないと思ったところでCOVID19という厄介者が登場、フイになってしまったのは残念なことだった。

     でも北はビスケー湾を臨むサンタンデールから南はジブラルタル海峡を臨むタリファまで、車、バス、鉄道を駆使して貪欲に訪ね歩いた。

     パブロ・ピカソの傑作「ゲルニカ」で知られるバスクの小都市ゲルニカや、マドリードからバスで約1時間、サン・ロレンソ・デル・エスコリアルという独裁者フランシスコ・フランコ総統が眠る「戦没者の谷」などは、再訪の機会はまずないと思うだけに、忘れ難さも格別だ。

     しかしそれらにもまして、愉快で楽しい思い出の町が、ここで紹介するアンダルシア州コルドバ県のバエナである。

     アルハンブラ宮殿で有名なグラナダやオペラの舞台でお馴染みのセビリアなど、アンダルシアには名所旧跡が山ほどあるけれど、オリーブの産地、鄙びたバエナを思い出すと私は今も自然と頬が緩んでしまう。

     

     2012年4月。ドイツに住む中高校時代の旧友S子、ドイツ人のパートナーP氏と3人、P氏の運転するレンタカーでアンダルシア地方を駆け巡る旅だった。

     コルドバの南東、グラナダの北辺りに位置するバエナは、P氏がドイツから持参したアンダルシアだけで700頁もある重たいガイドブックで、昔ながらの手作りで上質なオイルを作っているオリーブ工房があるのを見つけ、「是非立ち寄りたい」となったからである。

     ところが小さな町にも関わらず、さすがオリーブの会社は沢山あって、なかなか見つからない。ホントに見つかるかしらと心配になった頃、遂に探し当て、辿り着いた時には3人で快哉を叫んだ。さほど大きな工房ではなさそうだが、アンダルシア特有の白壁にはカラフルな草花の鉢が一杯飾られ、これから始まる工房見学にワクワクした。到着が遅れたためかグループツアーは既に始まっていて、私たちや残る見学者を案内してくれたのは作業服姿の初老とおぼしき男性だった。

     オリーブ工場の見学はもちろん初めて。

     オリーブ・オイルは工場の地下深くに埋め込まれた真っ白な陶器のカメの中で熟成されて行く。それはちょうど韓国で、冬の寒い戸外にズラリと並べてキムチを熟成させる茶色のカメを彷彿とさせた。オリーブとキムチ、全然違うのに、ソックリでとても興味深かった。

     

     私はツアーにもガイドにも大いに満足した。説明は丁寧、物腰は品があり、言葉もスペイン語、英語はもちろん、仏語も独語も解するようで、真面目な勤務ぶりが買われて、今も働く幸せな定年退職者に違いないと想像を逞しくした。

     ツアーの仕上げは工房を紹介する映像の上映だった。細部はもう憶えていないが、広大なオリーブ畑や製造工程のおさらいなど会社案内だったと思う。

     オドロキが最後に訪れた。映像を通して観客にこやかに微笑みかける、工房5代目のオーナーは何と作業服のガイドではないか。

     まんまと騙されてしまった。いや、コチラが勝手に誤解したのだけれど。

     ツアー終了後、私たちは顔を見合わせ、P氏は「良いガイドなのでチップを渡そうと思っていたけど、渡さなくて良かった」と照れ笑いした。3人とも心の底から笑い転げた。

     S子によれば、工房ヌニェス・デ・プラド社は創業が1795年、今年が230周年である。5代目オーナー、フェリッペさんは今も健在だろうか。そして時には作業服に身を包み訪問客を案内しているのだろうか。

     あれからもう13年が経つ。けれどあの時、パンと試食したエクストラ・ヴァージン・オリーブ・オイルの美味をネットで購入出来ると知って以来、私の1日は今もヌニェス・デ・プラド社の、あのオリーブ・オイルのある朝食から始まる。

     

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