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一味清風

 「私事」から書き始めることをお許しいただきたい
▼最近、牧師をしていた友人が「もう語れない」との一言を残して自死した。彼は教会に集う信者のみならず、東日本大震災で家族を喪った方々、特にその方々の精神的後遺症に、「生き残ってしまった者」としての責任から寄り添い、その方々の「言葉」を聞くことに徹した
▼その方々の言葉―あるとき天井を駆け回る亡くなった息子の跫音を聞いた。妻の姿を庭先で何回も見た―などの言葉だ。彼はまた、下北・恐山まで出向き、「イタコ」さんを通して、亡くなった方々の思いを聞き、それを遺族の方々に伝えたりもした
▼そのとき彼は、「成仏してどっかに行っちゃうんだったら、成仏しない方がいい。そばにいて、いつも出てきてほしい」という遺族の言葉を聞いていた。理屈の言葉ではない
▼その彼が亡くなった今、私も同じような言葉を発したい気持になっている
▼まだ、震災は終わってはいないのだ。
(千葉 榮爾)週刊「世界と日本」第2104号

 

 

 発足後5カ月になるのに、各国ともトランプ米政権との距離の取り方に悩む。「米国や世界をどこへ導こうとするのか」が明確でないからだ
▼5月末に開かれたG7サミットでも、難民問題や地球温暖化対策で米国とEU諸国が対立した。ドイツのメルケル首相は「欧州が他国を当てにできた時代は終わった」と述べた。これはEUが米主導の戦後秩序の終焉を認めたものだ
▼脱会宣言の英国以外にEUの団結は固いのに比べ、日本は近隣諸国と対立を抱えるから、対米中心外交の修正は困難だ。ただ弾劾の声さえあるトランプ政権下の米国に対しては、自主外交が必要な場面が増えるのではないか
▼米民主党の中枢にいた政治学者ズビグネフ・ブレジンスキーは、日本が経済的に絶頂期にあった時『ひよわな花・日本』を書き、経済にしか存在を示せない日本を批判した
▼その経済も不振の今、改めて国の在り方に問題を提起されている気がする。
(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2103号

 

 

 反核運動を展開する人々の言葉の中に、核戦争は地球の破滅を導くという言葉が見受けられる
▼この人々の言葉には「核戦争の結果は、人類の絶滅」という前提がある。しかし、そうだろうか
▼核兵器であろうが通常兵器であろうが戦争は戦争なのであり、戦争は勝者と敗者があり、戦後処理をどうするかということでは同じではないのか。反核論は勝者なしの人類絶滅論になっていはしないか。以前、エコロジストの間から終末論が出てきた。こんどは反核で終末論が唱えられる。人間の知識・科学技術でもって、私たちは核を作ってしまった。この行為は原罪的行為であり、元に戻すことはできない
▼冷静に見てみよう。反核運動は「核」を御本尊とする一種の宗教運動になっていると言える。しかし、この運動の有効性を確かめる手段は、悲しいかな核戦争が起こること以外にない。私たちは、この悲しさ・矛盾にもう気づいてよいのではないか。
(千葉 榮爾)週刊「世界と日本」第2102号

 

 

 北朝鮮の独裁政権が建軍85周年記念日に、米国とその同盟国にどんな挑発を行うか、スリルのある数日だった。新たな核実験か、大陸間弾道弾の初実験かと世界が注視した
▼「もう忍耐の限度」という米トランプ大統領は、朝鮮半島近海に原子力空母カール・ビンソンを急派した。その気になれば北朝鮮の軍施設など一挙に粉砕する威力を持つが、北の独裁者は強気を崩さない。「攻撃があれば徹底して報復する」と豪語した。記念日には中国の圧力もあり、大規模な火力訓練誇示で済ませたが、向こう見ずな独裁者だけに安心は禁物だ
▼半世紀以上前、ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設し、米は海上封鎖をして一触即発状態となった。私は在米中で、核戦争の危機を身近に感じた。結局ソ連が撤去に応じて世界は安堵した
▼今回は利害国が多い。しかも孤立を深める北の主役が未熟で、瀬戸際政策を放棄しそうにないのが世界の不幸だ。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2101号

 

 六十年安保闘争に参加、その後東大教授、秀明大学学頭を歴任、評論家という立場にある西部邁氏。その変遷の過程で彼は、自分に対して一つの規則を課した

▼それは、第一に「相当に自信を持てることだけを公的に発言すること」、第二に「それでも自分の公的発言が間違っていたとわかったら、そのことを公的に認めること」、第三に「新たな公的発言にとりかかるに際しては、再び間違いを犯す可能性をできるだけ小さくするため、たっぷりと時間をかけること」というものである

▼とり寄せた資料のミス他、多数のミスを理由にした「訂正とおわび」を毎日掲載する新聞社の方々は、評論と報道記事との違いはあれ、この西部氏の自らに課した規則をどう読むのだろうか

▼評論を含めた発言は、その人の人生観および歴史観から発したものでなければ、ほとんどの発言は雲散霧消することを、お互い自覚したいものである。

(千葉 榮爾)週刊「世界と日本」第2100号

 

 森友学園問題で安倍政権追及に一番熱心だった新聞に、「騒ぎ過ぎでは」という高校生の投書が出た。バランスを取ろうとしたのか、もうひと騒ぎを期待したのか

▼でも高校生が提起した問題は核心をついている。今の国会には雇用問題、原発、待機児童、地方の過疎化など、議論すべき喫緊の課題は山ほどある。北朝鮮の核挑発は急ピッチで、米中韓との対外関係調整も待ったなしだ

▼森友問題は個性的な役者が揃い過ぎて、テレビや週刊誌的話題には事欠かない。どこまで信用できるのか分からない主人公は、意表を突く矢玉を次々繰り出す

▼それに乗せられた政治家夫人も軽率だし、野党の好餌になった防衛大臣もお粗末の限りだ。この人の登場時に「総理候補」などと煽ったメディアの軽薄さを、まず自省すべきだ

▼今回もメディアや野党は、枝葉にとらわれて軽薄過ぎないか。一度頭を冷やし、何が重要課題かを冷静に判断してほしい。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2099号

 

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