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一味清風

 北朝鮮の東京五輪ボイコット決定は様々な憶測を呼ぶ。コロナ禍への備えが弱い北の切羽詰まった自衛策か▼既に中国との国境を閉鎖し、観光客や資金の流れを止めていた。軍が国境で密輸禁止の強硬策も取った。これでウイルスの完全締め出しに成功したかは謎だが、対中貿易が止まり、資金の流れも途絶えた影響は大きい。国連の制裁決議に加え、新たな景気後退は経済崩壊の危機に通じる。既に餓死者も出ているという▼韓国は五輪に南北統一チームで北との融和に取り組み、文政権の人気挽回構想を持っていただけに失望は大きい▼北の最後のよりどころの中国は東京五輪支持だ。一方で日米韓は協調して対北圧力を継続し、核ミサイル計画の解決で一致したばかり▼最大の危うさをはらむのが国内の反体制感情の高まりだ。コロナ危機で不安定さを増した金正恩政権は、内部統制を強め、思想強化を加速させるしか生き残りの道はない。

 (宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2196号

 

 オリンピックの聖火リレーが始まった。走り出したら止まらないというが、この流れで史上初海外観客ゼロのオリンピックまで行くのだろう。訪日客の落とすお金を当て込んでいた人々にとっては落胆しきりであろうが、見方を変えれば、オリンピックのあり方を見直すいい機会ではないか▼その方向は第1に、金メダルの数に国の威信をかけるという、オリンピックを国威発揚や政権浮揚に政治利用する思想からの脱却である。第2に無観客で経済効果何千億円の損失とか、何でもカネの物差しでしか見ない風潮からの脱却である▼よく「アスリートファースト」と叫ばれるが、それを徹底すれば何も鉦や太鼓で大騒ぎすることはない。そして各競技のサポーターが浄財を出し合い運営すれば無暗に税金を投入することもなく、巨額マネーで放映権を買ったメディアに気兼ねすることもないだろう。そんなオリンピックが出来ないものか。

 (舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2195号

 

 菅首相は4月に訪米し、バイデン大統領との首脳会談に臨む。日本が最初の国に選ばれた▼米外交の優先度が中国との覇権争いに絞られる。「米国は戻った」と宣言した大統領は、特にアジアでは友好国との緊密化で対中圧力を強化する。先駆けが日本、という筋書きだ▼米国防総省は、インド・太平洋での軍事バランスが中国有利に急傾斜しており、近く中国が接近阻止・領域拒否戦略を西太平洋の全域に拡大する、と予想している。大統領は日米豪印4カ国の枠組みを基軸に「自由で開かれたインド太平洋戦略」を主導すると明確にした▼だが尖閣では日米間に食い違いもある。表向き米は「安保適用範囲」と公言はしながら、「主権問題は日中で解決を」と腰が引ける。尖閣で中国と正面から対決する気はないとみる専門家も多い▼日本は日米同盟への貢献を積極化し、他の諸国との連携強化も必須だ。一方的な「米にお任せ」はもうない。

 (宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2194号

 

 総理の長男が役員を務める放送会社から接待を受けたとして、10人余の総務官僚が公務員倫理法違反として処分された。国会審議では当初お定まりの「記憶にございません」が連発され、会合音声の暴露という動かぬ証拠を突きつけられると、次には「利害関係者とは認識していなかった」という見苦しい言い訳に変った▼冗談もほどほどにして欲しいが、この後者の言い訳は言外に彼らが法に触れなければ何をしてもいいんだという開き直った思想を持っていることを示している点に留意したい▼国の政治や行政に携わる人がそれでは困る。法に触れなければいいんだというような低次のレベルでは、国民に何を説いても、何を訴えても、国民の共感を得ることはできない。逆に言えば政策の実現に必須の国民の信頼を得るには、法を超えた高潔さが求められるということである。公務員倫理法がかえってそのことを見失わさせていないだろうか。
 (舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2193号

 

 中国海警局の武器使用規定を明文化した「海警法」が施行され、早速中国による尖閣諸島周辺の領海侵入が繰り返されている

▼海警法は海警局による武器使用の法的根拠となる上、中国が独自に設定した「管轄海域」で外国の軍艦・公船を排除する規定が盛り込まれている。軍の直接影響力も強まり、管轄海域の適用範囲もあいまいだ。尖閣沖でも挑発を強化し、日本の実効支配を徐々に崩す狙いがありそうだ

▼米中の覇権争いの激化で、中国側が国内法を盾に主張の強化を狙う。先ず既得権益を作り、さらに一歩進めるのが習近平外交の特徴で、習の国内支配体制強化に連なる

▼菅首相がバイデン米大統領から「尖閣への日米安保適用」の確認を取りつけたのは時宜にかなう。日米豪印の連携緊密化も図る一方、日本の受け身の平和主義や米への過度の依存を脱する好機だ。領海警備担当の海保と海自との連携強化も、粛々と進める必要がある。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2192号

 

 ワクチン接種の議論が盛んである。何時から誰に、誰が、どのような体制で接種するのかなど、その膨大な作業に各自治体ではその対応に大わらわだと聞く。この際お役所流にやればすぐ公平に、平等にという考え方が出てくる。全国の全市町村に平等に行き渡らせ、1人の希望者も漏らすことなくといった建前の世界である

▼しかし、そんなことを言っている場合なのか。今われわれはコロナ戦争を闘っているのだ。戦争でしてはいけない事は兵力の分散であり、逐次投入である。一方、大事な事は敵の中枢に対する集中的かつ大規模な攻撃である。この観点に立てばまずは感染の震源地である大都市にワクチン爆弾を集中的に投下していくべきであろう。中枢が無力化されれば周辺は自然に武装解除されるのである

▼「兵は拙速」(『孫子』)を尊ぶという。徒らに時間を空費して、コロナ戦争の犠牲者をこれ以上出してはなるまい。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2191号

 

 政府対応のまずさもあり、コロナ禍は大騒動になった。後はワクチンだけが頼みだが、難問続出の様相だ

▼政府は開発成功の米英各社と大量の供給契約済みだが、接種は早くて今春以降。とうに本格接種が始まった各国に比べ、政府の無策ぶりがじれったい。一方で外交道具化するロシア産や中国産は信用し難い

▼ノーベル化学賞、医学賞などを近年20人近く輩出した国なのに、国産ワクチンの実用化は今年末という。外国報道でとうに問題提起されたが、国内メディアの反応もにぶく、最近やっと関連記事を散見する程度。それも政府や業界の弁護論が主だ

▼科学立国をうたっても、研究費は各国に比べ桁違いに少ない。研究者の質は劣化し、論文数も劣る。政府の支援策が不十分だったのだ

▼輸入後も物流に問題がないか、自治体や民間に丸投げにならないか、不安は尽きない。政、財界、メディアが問題の本質を見極め、早急に厳しい対応を。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2190号

 

 まもなくこの4年間世界を騒がせてきた男が檜舞台から下りる。この際あえてトランプ大統領の「功」について考えてみたい

▼第1は、民主主義とは何かを身を以て示したことである。不法移民排斥のための壁の建設、国民の雇用を守るための厳しい対中政策など、選挙公約の実現に彼は邁進した。選挙が終わったら都合の悪いことに知らんぷりを決め込むような卑劣な男ではなかった

▼第2は、一部の国際機関の偽善や欺瞞、政治的偏向を炙り出したことである。またそのトップ人事選挙などにおける中露の露骨な利益誘導工作を批判した。その批判すべてが真実とは思われないが、わが国もそろそろ国際機関信仰を改めるべきであろう

▼第3は、アメリカが既に世界秩序を主導する国ではなくなったことを明らかにしたことである。対米依存に安住しきっていたわが国には、茨の道が待っている。今年は覚悟の年になりそうだ。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2189号

 

 米バイデン新政権の発足に西側諸国の期待感が強い。トランプ大統領の米第一主義が余りに露骨で、各国ともうんざりだった

▼これを政権交代に持ち込んだのはさすが米国だが、国内の亀裂も大きく、復元力が試されるのはむしろこれからだ

▼外交では米中対立が最大の課題だろう。多国間主義に復帰し、国際協調を推進する方向性は確かだが、もう米国が世界のリーダーや警察官に復帰する能力も意思もなかろう

▼こちらも新発足の菅政権は、どう対応するか。まず日米同盟の足固めには両国とも異議はないはずだ。米の戦略国際問題研究所が発表した「アーミテージ・ナイ報告」が米、英、加、豪、ニュージーランドの機密情報共有組織に日本を入れる提案は、身内扱いへの格上げだけに大歓迎だ

▼菅首相が掲げた温室効果ガス規制案も同盟関係の裾野を広げる。不可欠の仲間となり、義務も果たしつつ、日本独自の立ち位置も明確にしたい。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2188号

 

 コロナで様々な景色が変った。中でもオンライン会議が常態化したことも挙げられるであろう。もちろん以前から電話会議、テレビ会議はあったが、それは限定的なもので海外に参加者がいるとか、急を要する件で全員が集まれない場合などに限られていた。それが今や当り前の光景となり、ズームとかチームズを活用して誰もが簡単にアクセスできるようになった

▼それで何が変ったかを一言でいえば、場の雰囲気がなくなったということであろう。PCの画面には全員の顔が見えているが、場の空気までは読み取れない。下手な忖度がなくなって良くなったとも思うが、議論が通り一遍になって深まらないという悩みも聞く

▼オンライン会議に限らず、リモートワークなどなど、コロナがわれわれに強いる新しい生活様式は、われわれに組織の意思決定や運営のあり方、さらには何のために仕事をし、生きているのかを問うている。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2187号

 

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