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一味清風

 このほど地方のローカル線の存廃を議論する「再構築協議会」が開かれた。まな板に乗せられたのは広島と岡山の山間部をつなぐ芸備線で、会議は中国運輸局が主催し、関係県市とJR西がテーブルについた▼地方自治体は、鉄道は地域住民の貴重な足であり、廃止されたら過疎が一層進む。JR西は不動産事業などで利益を上げているのだから存続できるのではないかと主張し、JR西は、私企業のできることには限界があり、赤字を垂れ流し続けることはできないと自治体に理解を求めたようだ。このような議論は何もわざわざ集まらなくても分かり切った事だ▼人口減少、地域の過疎化という現実に直面し、国は地方創生という旗を振っている。それに大切なことは、地方に雇用の場を作り、そのためのインフラを整備することである。これらは国土の均衡ある発展というグランドデザインの下で議論すべきことであって、中国運輸局のレベルで議論することではない。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2267号

 

 本紙最近号の元統合幕僚長・河野克俊氏による論考「新段階を迎える日米同盟の課題」は胸がすく卓見で、さすが安全保障問題の最高権威だと、大いに教示された▼河野氏はGDPで世界第2位の経済大国になった中国は、海軍力では数量的に米軍を凌駕し、海洋国家に急速に変貌中と指摘する。今のまま米国に頼り切っていいのか▼秋の米大統領選でトランプ政権になれば、台湾有事の際も米国が軍事介入するかどうかさえ疑わしいと河野氏は予言する▼次が肝心だが、その場合、日本の役割を拡大し、日米同盟を「双務性のレベル」まで引き上げる必然性がある。これまで認められてきたのは「限定的な集団的自衛権」で、フルスケールは憲法上不可能、というのが内閣法制局不動の見解だ▼こうなると結論は自明で、新たな段階を迎える日米同盟を前に、これまで小児的論議のレベルだった憲法改正を、正面切って国民に明確に問う覚悟が不可避となる。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2266号

 

 日経平均株価が34年ぶりに最高値をつけた。バブル崩壊後長い長い低迷の時代であった。これが日本経済再生のスタート台となるのか。何時の時代にもいる気の早い向きは早くも5万円台も視野に入ったなどと囃(はや)し立てている▼しかし、この株価はいくつものゲタを履いていることを忘れてはならない。第一は日銀のETF(上場投資信託)を通じた日本株の大量保有である。今後金融が正常化するにつれ下値(したね)圧力となっていくだろう。第二はゼロ金利政策などの副作用としての異常な円安だ。海外投資家に日本株を安売りしている訳だ。第三はこのところの人為的な株価重視施策、PBR(株価純資産倍率)一倍以上を目指すガバナンス改革や自社株買いの推奨などである▼これらのゲタを脱いだ時、本当の実力はどうなのか。少子高齢化というハンディの下、30年前と今と、特に日本人の進取の気性やひたむきな勤勉さ、そして組織のチームワークなどが変質してはいまいか。注目すべきはこれらの点ではないか。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2264・2265号

 

 今年は主要国で選挙があり、世界中が固唾(かたず)を飲む。最大の興味はもちろん秋の米大統領選だ▼まず3月にロシアの大統領選挙がある。プーチン再選が既定路線で、世界は最長12年プーチン君臨のロシアに振り回されることになろう。批判票がどれくらい出て、どう正直に表に出すかに個人的興味があるが▼最大の注目の米大統領選で、民主党のバイデン大統領と共和党のトランプ前大統領の決戦になり、トランプ当選となると、世界の今後に決定的な影を落とす。日本への影響も絶大だ▼作家佐藤優氏の言葉を借りれば、トランプは「下品力」を武器に、「悪の処世術」を駆使して目を見張らせる。「これが民主主義の師表(しひよう)国による大統領選か」と▼世界最大人口のインドも選挙。モディ首相も権威主義傾向が強い。トランプ、プーチン、習近平、モディが率いる世界がどうなるか、内閣の安定度にも事欠く日本で想像するだけでおぞましい。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2263号

 

 国会を立法府といい、国会議員をローメーカーと呼ぶ。従って法律は国会議員にとって自分の子どものようなものだ。それを大切にしないで役割を果せるのか▼今回の自民党安倍派を中心とする裏金問題、政治刷新本部が組織され、再発防止策などの提言がなされるという。政治資金の透明性の強化、厳罰化そして派閥の解消などが議論されるようだ▼しかし、そのようなアジェンダ設定自体が、当事者にローメーカーとしての気概や自恃(じじ)がないことを示している。どんなに事細かく規定しても、罰を重くしても、始めから何とかそれを潜脱(せんだつ)しようと思っているのであれば百年(ひゃくねん)河清(かせい)を待つが如しであるし、派閥の解消などという人間性に反した主張は、何か問題の核心を外す意図があるようにしか思えない。最も大切なことは、失われた国民の信頼を回復することであり、そのためにローメーカーとしての覚悟を明らかにすることである。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2262号

 

 月刊『世界と日本』最新号に、松浦光修教授の「いま日本人が学ぶべき大切なこと」という吉田松陰の死生観が掲載されている。多難な現在の日本に教示するところが多い見事な労作だ▼私自身数年前、萩市の松下村塾跡を訪ねた。平屋建ての小舎だが、松陰が久坂玄瑞、高杉晋作、伊藤博文など明治維新の原動力となった多くの逸材を育てた▼松陰は29歳で処刑されたが、その前日に書き上げた遺著『留魂録』こそ、日本思想史上最高級の名文だと松浦教授は激賞する。確かに自分の死をこれほど冷静に、しかも美しく迎えられるものかと、感動させずにおかない▼松浦教授が述べるように、自分が死んでも志を継ぐ者が現れれば、後世への種子になる。イエス・キリストの「一粒の麦」にも通じる▼「体は私のものでも心は公のもの」という松陰のこの問題提起が「現在にどういう意味を持つか」という松浦教授の結びは、実に示唆に富む。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2261号

 

 イスラエル、ハマスの戦争が終らない。そして、犠牲者の数だけが増えていく。イスラエルのネタニヤフ首相は、この戦いは「正義」の戦いであり、敵を「殲滅(せんめつ)」するまで続けると豪語している。かつてのナチスの論理の引き写しである。そこでは「正義」はアーリア民族の世界支配であり、「殲滅」されるのはユダヤ人であった▼どうしてこうも相似形になるのかといえば、彼らがユダヤ教、キリスト教、イスラム教と続く同じアブラハム一神教の世界に生きており、その神観念は、唯一絶対、全智全能、万物創造のいわゆる絶対神であり、妥協や共存は悪とみなされるからなのだろう▼40年前、筆者はあるユダヤの財団の主催する国際会議に出席したことがある。会議のテーマは「非暴力手段による紛争の解決」だった。国際社会もこの一方的な殺戮(さつりく)行為への非難が高まってきた今こそ、イスラエル国内の人々と手を結び停戦を実現すべきだ。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2260号

 

 「あの時、君はどこにいた?」と後日話題にしあう日が世紀の大事件突発日という▼米国では60年前の11月22日で、ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された▼直前に旧ソ連がキューバに核ミサイルを持ち込み、第三次世界大戦の危機とされた。これはフルシチョフ・ソ連首相とケネディの間で回避されたが、ケネディ自身は後日暗殺された。その暗殺犯は警察の裏庭でテレビの実況中継中無名の男に射殺され、犯人は留置場で急死した▼弟のロバートはケネディ政権で司法長官を務め、後年兄の遺志を継ごうと大統領選に立候補したが、選挙戦中に凶弾に倒れた▼米国内の銃乱射事件は4年連続で年間500件以上。市中には4億丁の銃が出回り、死亡は今年すでに3万人以上▼来年の大統領選は前哨戦が始まり、故大統領のおいで故ロバートの息子のロバート・ケネディ・ジュニアが立候補を表明。一族の執念は誠に立派だが、どうか波乱無き戦いを。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2258・2259号

 

 10年程前、対馬の観音寺から盗まれた観世音菩薩坐像を日本に返還すべしとする韓国最高裁の判決があった。仏像は14世紀に韓国で造られ、倭寇(わこう)によって略奪されたものだから、元の所有者たる浮石(プソク)寺に帰すべきだとの主張は退けられ、観音寺が一定期間平穏に仏像を保有してきたことで取得時効が成立するとの判断が示されたのである。近く日本側に返還されることになるようだ▼これは今後の日韓関係を表す象徴的な判決だ。最も近い隣国として二千年に及ぶ歴史を持っている。そのどこで切るかによって、両国の対立や憎悪が露わになる時もあった。しかし、今や恩讐(おんしゅう)を越えて生きて行くべしとこの判決は暗示している▼それを仏教では怨親(おんしん)平等(びょうどう)という。仏像が帰国した折には、これまでの経緯を広く詳(つまび)らかにし、両国の今後のあり方を教えた怨親平等仏として崇(あが)められ、親しまれ、愛されてほしいものである。この菩薩の温顔(おんがん)がそれを促(うなが)しているように見える。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2257号

 

 国連人権理事会はロシアの復帰を拒絶した。落選は当然である▼国際的孤立、経済の衰退、人材流出など、ウクライナ侵攻でロシアの打撃は甚大だが、プーチンの自覚はどうか▼西側とは冷戦当時より激しい対立下にある。彼自身、持っていた短期的な軍事目標の達成はもう不可能だ。どこかの段階で交渉が不可避だが、先になるほどロシアには不利だ▼欧米諸国による制裁は効果が蓄積されていて、危機深刻化は不可避だと専門家の多くは見る。ソ連崩壊から30余年、中国が今や唯一の友邦大国だが、対ロ支援には明らかにしたたかな国益計算がある▼プーチンはいまだに旧ソ連時代の意識から卒業できていない。どう転んでもウクライナでロシアが勝てる見込みはない▼最近のイスラエルのガザ侵攻に、ロシアは即時人道停戦を求める案を安保理に提出したが、目を疑った。今即時停戦を求められているのは、人様ではなくて自国ではないか。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2256号

 

 前回、福島原発事故処理水の海洋放出に関し、科学的根拠を見ようともせず、嫌がらせ電話をかけたり、日本産の海産物を輸入禁止としたりする中国に対し、孔孟を生んだ国として恥ずかしくないのかと批判したが、翻(ひるがえ)って昨今の日本を見ると、他人を批判する資格があるのかと思わないでもない▼ジャニーズ事務所、ビッグモーター・損保ジャパン等の不祥事、犯罪行為を知っていながら見て見ぬふりをしていた周囲の者やテレビ局などのマスコミは、「義を見て為(な)さざるは勇なきなり」(『論語』以下同)の例であるし、金儲けや保身のためなら何でもやるという会社や従業員は、「小人(しようじん)は利に喩(さと)る」の典型であろう▼「上知(じようち)と下愚(かぐう)とは移(うつ)らず」で、愚か者は矯正の仕様がないのかもしれないが、日本語の中に埋め込まれて、時に自らを戒める際の鑑(かがみ)ともなってきたこれらの箴言(しんげん)は、大切に後代にも伝えていきたいものである。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2255号

 

 20世紀最大の技術革新・インターネット時代が始まって30年。「ネット敗者」と呼ばれる日本の遅れは無残だ▼米巨大IT企業群GAFAが世界を牛耳る。国防総省主導の軍事技術が国家ぐるみの関与を実現した▼競争力を失っていた米国は世界覇権再挑戦に膨大な研究開発費を投じ、才能ある若者をシリコンバレーに結集させた▼ロシアを始め各国ともネットを国家戦略の根幹に据える。中国では監視カメラを国中に配置し、徹底した個人情報管理を実現した▼一方の日本。世論やプライバシーへの配慮を口実にIT化は進まず、人材育成も非常に遅れた。「ネットが軍事技術、国家戦略」という発想が平和慣れした国では希薄で、隣国が核実験、ミサイル実験を繰り返しても他人事のように見る▼かつて山本七平が言った「安全と水はただ」という感覚を卒業できない。何事にも足並みを揃えるのが至上の目標で、憲法改正などタブー中のタブーになる。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2254号

 

 福島原発事故処理水の海洋放出に当たり、中国から大量の嫌がらせ電話が関係先にかけられたという。誠に大人(おとな)げない対応で、これが孔孟を生んだ国がやる事かと情なくなる。深部は窺(うかが)い知れないが、ヤラセ、ガス抜き、政権内の路線対立・権力闘争などがその背後にあるのだろう▼鄧小平の韜(とう)光(こう)養(よう)晦(かい)」をかなぐり捨てて以降、中国の対外姿勢には剥き出しの力の論理が横行しており、「戦狼(せんろう)外交」といった言葉が示すように、今やその強圧的、恫喝的態度を隠そうともしない▼中国が人類の宝と誇る孔孟の教えは、そのようなものではなかった。孔子や孟子は、礼、仁、義、恕(じょ)、信など、人間の善性を信じ、人間社会における文化的な秩序や、相互に思いやり信頼し合うことの大切さを説いた。中国はこの人類の宝である孔孟の教えを世界に広めようという触れ込みで、各国に孔子学院を設立してきた。しかし、孔子学院が今最も必要とされるのは中国本土ではないか。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2252・2253号

 

 沖縄県・玉城デニー知事の動向が気になる。先の大戦で沖縄が大きな破壊を受け、その後も日米関係の要として、米軍基地の7割という負担を強いられていることは承知だ▼知事の最近の訪中に先立ち、習近平主席が琉球との歴史的な交流に言及した。中国の一部メディアも「沖縄は中華圏の一部だった」という特集を組んだ。過去には人民日報が「琉球の帰属は未解決」とする学者の論文を掲載したこともあった▼一方知事は沖縄と中国の交流の歴史を称え、強化したいと現地で語って中国側の関心を呼んだ。武装した中国海警局船が連日侵入しているのに、尖閣には言及しなかった▼玉城氏が掲げる「地域外交」の主張からも、県民の思いを伝えることに意味があった。李首相を前に沈黙すれば、中国の暴挙を認めたことにならないか▼中国の経済発展に黄色信号が灯り、甘い顔は禁物だ。知事の対中態度には今後特に深い配慮が求められる。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2251号

 

 内閣支持率が下げ止まらない。マイナカードのゴタゴタが足を引っ張っているとみられているが、自民党の支持率も低下していることが注目される。このような傾向の背後に何らかの構造変化があるとすれば、一つは世襲批判の高まりではないか▼戦後も80年近くなり、日本社会の様々な分野で老人病が進行している。その一つが世襲議員の増加である。しかし、地盤、看板、鞄の「三バン」が当選に必須の要素といわれ、世襲議員の圧倒的優位性を示すものであった時代は過ぎた。今は、後援会は高齢化し、地域のつながりも希薄化し、若者の意識も変ってきている▼世襲自体が悪い訳ではないが、世間が世襲政治家を見る眼は明らかに厳しくなっている。例えばアメリカ大統領選挙で行われているような予備選挙を各党毎に公開でかつネットも活用し、全選挙区で実施してはどうだろうか。投票率のアップという副産物も生れるだろう。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2250号

 

 政府の防衛装備移転の見直し討議が大詰めを迎えている。ここは積極的な展開を求めたい▼現在の「三原則」の運用方針では自己規制が厳し過ぎ、我が国の現状にまったくそぐわない。そこでロシアのような侵略国による犠牲国には、支援の追加を可能にする。また日英伊が折角共同開発にまで踏み切った戦闘機にも、輸出の道を開く、などいずれを取っても当然のことだろう▼自衛隊が使わなくなった中古戦闘機のエンジンも、輸出可能にしようという。例えば友好国のインドネシアなどが対象国だ。この件も、現在のような制約があること自体、理解困難と受け取る向きが多いはずだ▼まだ自民党と公明党の最終的な協議が決着していない。公明党の一部に慎重な意見があるやに聞くし、不透明な要素も残る▼新局面を迎えている防衛問題の大局からも、長年の自公連立にひびを入らせないよう決断することを、特に公明側に強く要望したい。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2249号

 

 酒脱(しゃだつ)な政治家として親しまれた塩爺(しおじい)こと塩川正十郎氏に、「母屋でお粥、離れでスキヤキ」という名言があった。これは国の特別会計の乱脈ぶりに警鐘を鳴らした言葉だが、今回内閣が取りまとめた「異次元の少子化対策」を見ていて、ふとこの言葉が思い出された▼今、「母屋と離れ」を持つ家庭が日本中にどのくらいあるのか承知していないが、それは日本人の知恵の一つであったのではないか。「母屋と離れ」は、三世代同居の一つのあり方である。自分が元気なうちは若夫婦が離れに住む、年寄って隠居すれば、母屋は譲って自分が離れに住む、いずれも適度な距離感を保ちつつ、助け合って生きていく▼その家ではお互いの間で手替(てがわ)りが可能であり、様々な知恵が伝授される。孫の送り迎えにお爺ちゃんが活躍し、自慢の料理のレシピはお婆ちゃんから伝授される。少子化対策は、家族のあり方の問題でもある。ただ金を配るだけが能ではない。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2248号

 

 本紙先月号の「マスメディア批判」に濱口和久氏の「護憲論の無責任さ」を突いた胸のすく論文が出た。同氏は拓殖大教授で防衛問題の専門家だが、その論旨に全面賛成だ▼憲法記念日の社説は地方紙の多くが護憲論を展開した。共同通信の持論を反映させたのではというが、その通りだろう。全国紙では朝日、毎日の護憲論が加わり、反対陣営の役者が揃った▼先進国の多くが随時改憲し、ゼロの日本は超例外だ。敗戦後、米軍の指示で「不磨の大典」の明治憲法が改正されたが、今度は新憲法がまた「不磨の大典化」した▼代わって自衛隊の位置づけのようになし崩し的な実質改憲が進んだ。NHKの世論調査では、焦点の9条改正には「必要」「不必要」「不明」が各3分の1ずつと分かれた。一般世論の方もゆっくり成熟している▼折から月刊『世界と日本』最新号に塩田潮氏の改憲論考が出た。現憲法の全問題点が完璧に詳述されている。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2246・2247号

 

 中国江南省安陽で発見された『三国志』の英雄曹操の墓に美術館がオープンしたという報道があった。ユニークなのは、曹操の詩を間違いなく暗唱した人は入場料をタダにするという点だ▼曹操は文人としても知られていて数々の名詩を残している。中でも人口(じんこう)に膾炙(かいしや)しているのが「短歌行」で、冒頭の「酒に対して当(まさ)に歌うべし、人生幾何(いくばく)ぞ」は中国人なら誰でも知っている。暗唱するのがこの詩だとしても、四言(しごん)で四句ずつ、八つの段落で構成されているから全文128文字だ。簡単に諳(そら)んじられるものではない▼近年ネット社会化で何でもすぐ取り出せるから何も記憶する必要がないという考え方もある。しかし、筆者はそうは思わない。暗唱し記憶することによって脳に言葉のネットワークが形成され、それによって人は自分の考えを構築し、表現することができるからだ。この暗唱の大切さが失われていくことを危惧するのは、筆者ばかりではないだろう。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2245号

 

 本紙主催の東京懇談会で日本の安全保障について小野寺五典元防衛大臣の講演があった▼台湾問題への言及が多く、中国の習政権は台湾統一を歴史的任務と位置付ける。元大臣も見るとおり、米の台湾政策にはやや腰が引けている感がある。中国のハイブリッド戦もたけなわだ。これが台湾人に「見捨てられ感」、日本人に「他人事感」を生まないか▼ウクライナ戦と中国の台湾侵攻は密に絡み合う。元大臣の従来の指摘に「ロシアの現状変更を結果的に認めている国はG7では日本だけ」がある。ロシアが不当占拠する北方領土問題だ▼付近に米ロとも原潜を潜ませる隠れた戦場だ。「日本は当然、北方領土返還重点の対ロ外交がウクライナの対ロ批判の根底にあるべき」という▼折から月刊「世界と日本」最新号の江崎道朗氏著『流動化する世界—日本人はどのように国家像を〜』が届いた。直面する防衛問題のこれほど見事な分析は他にない。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2244号

 

 3月末に文化庁が京都に移転した。千二百年以上にわたって様々な文化を生んできた場所だから、誰も異論のない壮挙といってよいだろう。ただ気になるのは、国、自治体や地元経済界の姿勢が従来型の発想から抜け切っていないように見えることだ。例えば食文化推進本部とか文化観光推進本部などを設置すると聞くが、文化は推進するものなのだろうか▼以前京都の老舗の取材をしていた時、あるお店で「声なくして人を呼ぶ」というのがわが家の家訓ですという話を聞いた。その店にしかないもの、京都にしかないもの、日本にしかないものを徹底的に磨き上げていれば、自然と人は集まってくるのだ▼文化も同様であろう。大切なのはそれをことさらに推進したりすることではなく、最高の品質を作り上げ、その水準を守っていくことである。それには新しい発想や地道な保全への努力が長い眼で見れば良い結果を生むことになるのではないだろうか。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2243号

 

 ロシアのウクライナ侵攻後1年余。現地民間人犠牲者は1万人に迫り、出口はまったく見えない▼第三国の仲介が成功するなら中国、というのが私の当初からの意見だ。それには中国がロシア寄りの姿勢を本気で放棄しなければならない。その動きもあるものの、実現可能かどうか▼NATOがウクライナには武器援助にとどめ、ロシアとの直接対決を避けているのだから、中国が本気で踏み切れば、奏功の可能性はある。最大の問題は攻撃性を特徴とする「戦狼外交」の中国に、習指導部がそこまで決断できるか▼ロシアの読み通りウクライナ支配が実現していたら、中国は台湾侵攻にゴー・サインと読んだろう。現状は真逆で、大国の武力行使は現地住民の支援無しに進まないことが明瞭になった▼それだけにロシア産石油やガスの買い手の中国には、仲介力は大きい。このチャンスに3期目の習指導部が踏み切れるか。または夢物語に留まるのか。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2242号

 

 日銀総裁が交替する。マイナス金利まで駆使して遮二無二(しゃにむに)物価2%の達成目標を目指した大規模緩和政策は、道半ばにして船長が代わることとなる。国会で新総裁候補の植田氏は、これまでの路線を踏襲することを明言し、一方でいわゆる「副作用」については「市場機能に影響があるかもしれない」と述べた▼「副作用」とは、日銀に積み上った膨大な国債や上場株式の処理や財政規律の弛緩(しかん)をいうのだろうが、いずれも「あるかもしれない」と呑気(のんき)なことを言っている場合ではない。いま必要なのは、これまでの政策が日本経済の再生に必要かつ適切であったかの検証である▼日本経済の病の根本は起業家精神の喪失にあると考えれば、なすべきことは違ってくる。起業家を輩出させ、経済構造の新陳代謝を促進するための施策が最優先されるべきであり、マクロの金融対策の出る幕ではない。企業にしても個人にしても、眠っているお金はあるからだ。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2241号

 

 2月末でロシアのウクライナ侵攻から丸1年。直接対抗するのはウクライナ軍で、西側諸国は間接参戦、という21世紀型の新軍事対決だ▼長期化すればするほどロシアは軍事的、経済的に疲弊し、最終的に世界の覇権争いから脱落するという読みが西側中枢にある。まさにロシアの自業自得だ▼日本の安保への教訓は何か。この戦争を探求する自衛隊の元東北方面総監・松村五郎氏、元国連大使・神余隆博氏の共著『ウクライナ戦争の教訓』には種々教示された▼政府は次期防衛力整備計画を推進中だ。今後はハイブリッド戦争に負けない、武力による威嚇の罠に陥らない、本格的軍事作戦から国民を守る、の3点が欠かせないと両氏は力説する▼ウクライナ自身に犠牲をいとわぬ自助の覚悟が先ずあった。「その上にこそ国際社会の共助もある」という政治の鉄則を確認し、外交・防衛の備えを進めることが、わが国の基本戦略であるべきだろう。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2240号

 

 ロシアがウクライナに侵攻してまもなく1年となる。各方面に様々な影響が出ているが、わが国において変ったことの1つが国防に対する意識の変化である。悲惨な戦争の実態を映像で間近に見、残酷な独裁政権の危険をひしひしと感じられるようになって、戦争を対岸の火事視出来なくなっているのである▼年末の予算編成で明らかになった防衛費倍増、一部を増税で賄うという政府の方針に対し、半数以上の国民が賛成もしくは消極的賛成を示すようになった。戦後ずっと続いてきた平和ボケが解消したようにも見える▼本居宣長に、国の「尊卑美悪(そんぴびあく)」はその大きさで決まるものではなく、社会の安定、自然の保持、平和の維持、経済の繁栄という観点から判断すべきだという言葉がある。剥(む)き出しの暴力は卑であり悪であるという世論の高まりを期待したい▼合わせて、戦後のもう1つのボケ、金がすべてだという銭ボケからもそろそろ脱却したいものである。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2239号

 

 中国の台湾侵攻は「あるか、ないか」ではなく「いつかという問題だ」と見る専門家も多い▼米インド太平洋軍デービッドソン司令官の2027年までに「中国はその野心を顕在化させる」という見通しは大きな反響を呼んだ▼ただ危機といっても、金門(きんもん)、馬祖(ばそ)へのジャブ的攻撃から台湾本土への本格侵攻まで千差万別で、宮家邦彦氏は近著『米中戦争』で50近いシナリオを挙げた。「米国がこの危機にどこまで本腰を入れて取り組むか」が最大ポイントだ▼米国の戦略国際問題研究所が公表したシナリオでは、侵攻は失敗する。ただ日本の米軍基地が攻撃を受ける事態にも触れながら、日米軍に大きな損害が出ると見る▼日本に最も肝要なことは、台湾危機がメディアを含め他人事感がまだ強いことだ▼政府の防衛力強化新基本方針は賛成だ。台湾の民意は現状維持派が圧倒的で、日本外交は、中国に侵攻の決定をさせないことに、どう注力できるか。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2238号

 

 日本の失われた○○年の真因について、あちこちで議論がされている。それを探るヒントになるのが、先頃厚生労働省から発表された県別平均寿命統計である。今回の男性上位三県は滋賀、長野、奈良、女性は岡山、滋賀、京都で、最下位は男女ともに青森であった▼注目すべきは沖縄である。沖縄はかつて長寿県として知られ、男性は一九八五年まで、女性は二〇〇五年まで一位であったのが、今回は男性四三位、女性一六位に下落している。この凋落の理由は魚中心から肉中心への食生活の変化が米軍施政下で起ったからという。恐ろしい話だ。何十年かの間に人をこれほど変えてしまうのだ▼これは肉体的な変質であるが、同じようなことが精神の面でも起っているのではないか。戦後占領下で日本人改造計画が実施されていたことは、江藤淳らの研究で明らかになっている。日本人の美質であった勤勉、協調、追求完美の精神が変質してはいまいか。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2237号

 

 どう決着するにせよ、ロシアのウクライナ侵攻が日本に与える教訓に真剣な思考が不可欠だ▼ウクライナ側の健闘は称賛に値するし西側諸国の援助も大きい。一方で諸国の援助疲れが語られ、双方に「妥協を」という圧力も目立つ▼この侵攻が日本への最大の教訓は、ウクライナが過去、米、ロ、英の保証に安易に乗り、自力で自国を守る大原則を放棄したことだ。世界有数の兵器、核保有国だったのに「ブタペスト覚書」を3大国と交わし、軍事小国となって安全保障を3国に丸投げした▼結果はクリミア併合に始まるプーチンの野心の好餌に。一方、米英は武器援助をしても、直接参戦することは絶対ない▼今防衛力強化論議がやっと緒についた日本。日米安保条約だけで十分か。中国、北朝鮮、ロシアの野心は止まない。憲法前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して国を守る」と宣言している国に、喫緊に何が必要かは自明だ。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2236号

 

 FIFAワールドカップが盛り上っている。緒戦でサウジがアルゼンチンに勝ち、次いで日本がドイツに勝ち、モロッコがベルギーに勝って、いずれも大番狂わせと評された▼しかし、これらの結果には共通点がある。勝った国は暑い国であり、負けた国は寒い国だということである。寒い国の人は汗腺が発達していないと聞く。彼らはドーハの暑さに負けたのではないか▼筆者は十年ほど前にドーハを訪れたことがある。ホテルやレストランなどは寒いくらいに冷房が効いているが、ひと度外を歩いたりすればサウナの中のような息苦しさを覚える。率直にいって人がまともに住める環境ではない▼それを可能にしたものが石油文明である。そしてその行き着く先が地球温暖化であり、全世界のドーハ化だ。今回人権問題などが議論されているが、より深刻に議論し考えるべきことは、この石油文明からの脱却であろう。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2235号

 

 最近の防衛論議の盛り上がりを、大いに歓迎したい。敵基地攻撃能力の保有についても、具体的な討議が与党を中心に進行中だ▼折から日本記者クラブの講演会で、前防衛事務次官・島田和久氏の話を聞く機会があった。第2次安倍内閣で首相秘書官を長年務め、防衛事務次官後も内閣官房参与などを歴任。経歴、識見ともに防衛問題の第一人者だ▼島田氏は喫緊の課題は防衛力の抜本的強化という。日本の防衛は日米安保に大きく依存し、自力でできることは極めて限られる▼ウクライナは核兵器を放棄し、長距離射程の武器はなかったから、ロシアは自国への配慮皆無の中で侵攻した▼日本は力の信奉者のロシア、中国、北朝鮮に向き合うのに同盟国は米国のみだ▼しかも日本に対米防衛の義務はなく、米国は日本の危機には適切に支援するが、事態と世界情勢次第ということになる。こうした論理的説明の前には、何が喫緊の課題かは自明だ。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2234号

 

 5年に一度の中国共産党大会が閉幕し、習一強体制が確立した。江沢民系の上海閥も胡錦濤系の共青団も、7人の常務委員はおろか24人の中央政治局員に、一人もいないという徹底ぶりである。このようないわば「清一色(チンイーソー)」政権で、これからやっていけるのか▼孔子は、ある君主に、ひと言で国を滅ぼすという言葉はありますかと訊かれて、「ただその言にして"予違"(わたが)うことなきを楽しむなり」という言葉ではないかと答えている。周りはイエスマンばかり、不都合な真実は覆い隠され、阿諛(あゆ)追従(ついしよう)忖度(そんたく)欺瞞(ぎまん)策謀(さくぼう)などが渦巻く環境に置かれたら、どんな人間でも次第におかしくなっていくのだろう▼その「悪しき」見本は現在隣国で進行中だ。老婆心ながら習政権に対しては、隣国の独裁者の末路を他山の石とし、日夜『論語』を拳(けん)拳(けん)服膺(ふくよう)することを期待したい。そしてわれわれは隣国の独裁者が惨めな末路を迎えるよう努力すべきであろう。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2233号

 

 北朝鮮のミサイル発射実験が急ピッチだ。内外に開発の進展を誇示し、新核実験も近そうだ。金正恩を駆り立てているものは一体何か▼最も注目すべきはロシアへの共感だ。ウクライナ侵攻が行き詰まり、孤立感を深めるプーチンと一蓮托生の道を選ぶ。プーチンの古希に祝電を送って大宣伝をした唯一の国だ。ロシアのウクライナ4州併合には真っ先に賛成したし、武器や労働者を送ったという報道も▼北が独自の技術だけで核ミサイル開発に成功するはずはなく、旧ソ連以来、物心両面のロシアの援助は大きい。それが今や初めて、ロシアが北朝鮮の応援を必要とする時代になった▼不相応な核ミサイル保有に、北の国内情勢は厳しい。独裁者一人が肥え太っているが、国民は困苦の極だ▼北の暴走を前に、日本政府は米韓などと協力しながら防衛力の抜本的強化に踏み切る。こんな隣国を持てば避けられないと、覚悟を新たにすべきだろう。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2232号

 

 二つの国葬が終った。この二つを見て誰もが思ったことは、この二つは似て非なるものだということだろう▼エリザベス女王の場合は、死者を悼む殯(かりもがり)の時間があり、ウエストミンスター寺院においては、棺を前にして聖職者による儀式が執り行われ、讃美歌が歌われ、最後に棺はウィンザー城に埋葬された。見事な葬式であった▼対するに元首相の場合は、葬儀は既に終っており、会場には遺骨及び遺影があるのみである。聖職者がいる訳でもないし、念仏が唱えられる訳でもない。一言でいえばこれは大がかりな偲ぶ会であるということだ▼もう一つ似て非なるものが、一般市民の反応である。イギリスではエリザベス女王の棺に手を合わせるのに十数時間も列に並んだという。日本では一般献花に参列した人と反対運動に参加した人に分断された。その差を生んだものは、トップが私心なくひたすら国民に奉仕したかどうかであろう。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2231号

 

 エリザベス女王の逝去と前後して、女性のトラス新首相が誕生した英国。日本は外交、安保、経済の各面で対英関係を強化中で、日英新同盟時代の幕が開きそうだ▼トラス首相はサッチャー元首相の崇拝者で、その再来という評も。お互いを「基本的価値を共有する戦略的パートナー」と位置づけている日英両国だ。50余の英連邦を束ねる英国との関係強化は、日本にメリットも大きい▼この5年で装備、共同訓練など、軍事面での協力は飛躍的に改善し、既に事実上の同盟と言っていい状態になっている。日英で共同開発する空自のF2戦闘機の後継機も、今後は一層加速するだろう▼安保の全面的対米依存にも柔軟性が付加される。世界最強、最大の情報機関を持つ英国は、国際情報の収集、発信面で日本の弱点を補って余りある点も買いたい▼英国は原発事故後の日本食品輸入規制の撤廃方針だし、日本も英国のTPP加入申請を強く支持する。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2230号

 

 コロナ感染者の全数把握の見直しが迷走。政府から医療現場のひっ迫等を理由に、報告書の提出を重症者等に限定する方針が出されたが、東京都などは今まで通りの対応と足並みの乱れが明らかに▼ここで問題となっている病院や診療所が知事宛に提出する「新型コロナウイルス感染症発生届」なるものをある方から見せてもらった。住所氏名は当然だが、病状、診断方法、感染原因・経路、ワクチン接種状況、重症化リスクの有無などが続く。これを見ていると、様々なケースを想定してあれもこれもと要求し、完璧を期そうとする本部、それにつき合わされて疲弊する現場の姿が浮かんでくる。現場の負荷の軽重をよく見て、報告事項や手法を軽減するのが本部の役割ではないか▼同様の構図は日本社会の至る所に見られる。トラックなどの検査不正、ジェネリックの異物混入事件の根っ子も同じだ。日本社会劣化の検証が急務である。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2229号

 

 月刊『世界と日本』最近号に出た渡邊啓貴・帝京大教授の論文『不透明な時代の欧州』は秀逸で、まさに間然するところがない▼メディアは連日ウクライナ問題であふれ、その論も文字通り玉石混交。中にはロシア政治研究の第一人者を自認する大学教授で『プーチンは6月中に99%辞任する」と断言した人もいた。こういう手合いは「だから100%とは言っていない」と開き直るのか▼渡邊論文は奥が深く、日本人には複雑極まるウクライナ情勢も、読後はすっきり頭に入る。欧州国際関係の著書も多彩で、各種の賞も得ていて、本誌編集者の人選の確かさを先ず指摘したい▼欧米はウクライナを多面的に軍事援助しても、ロシアとの直接対決には絶対踏み込まない。同様事態になれば、日米同盟に全面依存する日本では直接死ぬのは自衛隊だけ、となる▼これがウクライナ侵攻に対する日本への教訓だ、という筆者の明確な指摘には全面賛成だ。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2228号

 

 先日三年ぶりに開かれた花火大会に行った。夏の夜空へ打ち上げられる花火に、コロナもウクライナもない一時を楽しんだ▼火薬は、羅針盤、活版印刷と並んで中国の三大発明とされるが、もともと道教の道士が不老長寿の仙薬を作る過程で発明されたものらしい。それがすぐに軍事利用され、瞬(またた)く内(うち)に広まったとされる。日本では戦国時代、群雄が火薬の原料の一つの硝石の入手に血眼になったことが知られている▼今回の元総理が凶弾に斃れるという事件、容疑者はネットで火薬の製法を知り、試作して、あれだけ殺傷能力の高い鉄砲を作ったというから驚きである。今や核兵器の作り方もネットに出ているのだろう▼このような事件をどうやって防ぐのか。それこそネットの閲覧履歴やホームセンターなどでの購買履歴などからAIが予想するのか。次第に中国が実現しつつあるという徹底した監視社会になるとしたら、その方が恐ろしい。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2227号

 

 ウクライナ侵攻を根源にまでさかのぼり、世界史への深甚な影響を論じた優れた論文が月刊『世界と日本』の最近号に出た。拓殖大学大学院客員教授・武貞秀士氏の『ロシアのウクライナ侵攻後の朝鮮半島情勢の展望』だ▼各国には建国時にさかのぼる「不条理への怨念」がある。中国の台湾に対する執念、北朝鮮の韓国に対する統一志向、それに何とロシアの北海道への領土的野望など。これに民族の恨みをすくいとる指導者が出れば、現実の侵略が起こることをウクライナが証明した。と武貞氏▼北海道については現にプーチンが「アイヌ民族をロシアの先住民と認定する」と発言したという。下院副議長も「北海道の全権はロシアにある」と述べた▼もしウクライナ侵攻がロシアの「成功体験」になれば、今後どんな影響が世界に出るか。武貞論文の視点は、国際政治にやや「ノー天気な日本人」に、示唆するところが大きいのではないか。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2226号

 

 異常に早く梅雨が明けたと思ったら一挙に酷暑が到来し、東京電力管内に電力需給ひっ迫注意報が発令され、政府は節電キャンペーンに乗り出した。今回は節電ポイントに財政援助するとの報道も▼ただ当局者から、クーラーは28度に設定する、小まめに照明を消す、テレビは家族そろって見る、冷蔵庫は頻繁に開閉しないなどとその教えを聞かされると、それ以前にすべきことがあるのではないかと思われてならない▼まずは再生エネルギー中心社会の構想とタイムスケジュールだ。その下で、原発再稼働の位置づけ、電力の地域独占の見直し、小型水力発電所などの地産地消の拡大、電力の貯蔵手段の多様化と技術革新、これらに伴う送電ロスの縮減などの施策を早急かつ着実に実践していくことが急務である▼今回の酷暑も、このところ世界各地で発生している異常気象も、地球温暖化地獄の一端である。脱酸素社会の構築は待ったなしだ。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2225号

 

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、ドイツやNATO非加盟国スウェーデンも、国防費をGDPの2%への引き上げを決めた▼日本も5月の日米首脳会談で、岸田首相が防衛費の「相当な増額」を表明したのは妥当だ。政府は年末までに予算額を詰めるが、単純な数値比較を超え、内外に国家としての覚悟を明示してほしい▼7月の参院選でも防衛費問題は与野党の争点になろうが、政治家は今世界を覆う不安定感に、もっと敏感になるべきだ。他国を批判する遠吠えにただ便乗したり、特定国の庇護にだけ頼ることは、もう許されない▼野党では日本維新の会が「積極防衛能力」の整備を図り、憲法9条の改正にも取り組む、とした。参院選で改憲勢力が3分の2を上回り、改正への機運が高まることを大いに期待したい▼国防には与党も野党もない。時代の変化を敏感に捉え、迅速に対応することこそが、政治家には求められる時代だ、と銘記してほしい。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2224号

 

 このほど岸田内閣は「新しい資本主義」の実行計画案を公表した。人への投資、科学技術、新興企業、脱炭素・デジタル化を四本柱とするもので、それぞれに喫緊の課題であり、掲げられた諸施策の着実な推進が期待される▼一国民としてはそれに尽きるが、望蜀(ぼうしよく)の思いで蛇足を加えるとすれば、何がしかキャッチフレーズのようなものが欲しい。それも国民が自分事として共感できるようなものが必要だ。国民の協力なしには、どんな政策も画餅に帰すからである▼例えば〇〇ミクスというようなものは、最近の例にもあったように竜頭蛇尾であったり、羊頭狗肉であったりすることが多いから避けるとして、どんな社会を作るのかについて、国民一人ひとりがイメージできるような言葉が良いのではないか▼その際、総理の人柄が滲み出てくるようなものがいい。例えば「誠実な政治・活き活きした経済・落ち着いた社会」などというのはどうだろうか。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2223号

 

 本土復帰50年を最近迎えた沖縄。その戦略環境が国際情勢の激変で大きく変わろうとしている▼ロシアのウクライナ侵攻は米・西欧対ロシアの正面対決を産んだ。最終的帰結はどうあれ、欧州ではフィンランド、スウェーデンの新加盟申請というNATO拡大を招く▼その結果改めて、ロシア同様武力にものを言わせる専制国家・中国のインド太平洋への脅威に、注目が集まる▼半世紀前の沖縄は中国の影響圏外だった。沖縄の目には今、圧倒的な中国の黒い影が広がる。強大な軍事力で、中国が尖閣や台湾に有事を招くと、沖縄も主戦場になる危険性がある▼中国のミサイル射程圏内に分散展開する前方基地作戦の中で、沖縄に司令部を置く米第3海兵遠征軍は中核的な役割を担う▼フィンランドがNATOに歓迎されるのは優れた軍事力だ。米中直接対決で米国の沖縄防衛の本気度は、日本自身の同盟への貢献次第と銘記すべきである

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2222号

 

 円安の進行が止まらない。資源・エネルギー価格の高騰や内外金利差の拡大など様々な要因が指摘されている。これに対し日銀は頑なに緩和政策を堅持するとの姿勢を崩していない▼何時からといえば、ゼロ金利政策が1999年、マイナス金利政策は2016年である。前者からは二十余年、後者からは6年。それで効果はあったのか、答は否であろう▼江戸中期享保の頃に活躍した思想家に石田梅岩という人がいる。心学と称される実践倫理の体系を作り上げ商道徳や人間の生き方を説いた。その梅岩の言葉に「ありべかかり」というものがある。「貸たる物はうけとり、借たる物は返し、毛すじほども私なく、ありべかかりにするは正直なる所也」というように、本来あるべき姿という意味だ。人からお金を借りて利息を払わない(ゼロ金利)、さらに利息をもらう(マイナス金利)ことが「ありべかかり」でないことは明白であろう。

(舩橋 晴雄)週刊「世界と日本」第2221号

 

 ロシアのウクライナ侵攻は最大級の世界的危機を招いた。日本の決定的転換点にもなり得る▼その意味でも、本紙の創立50周年記念東京懇談会に招かれた櫻井よしこ氏の講演は、聞き応えがあった。ロシア、中国が拒否権を持つ国連安保理は機能せず、米国中心の同志連合が辛うじてプーチンの横暴に抗し続けた▼米国も今や圧倒的な勢威がなく、バイデン大統領も幹事役どまり。核対決を避けたい思いが強すぎて、時にプーチンのはったりに立ちすくみ感さえあった▼際立ったのはウクライナのゼレンスキー大統領。正面からロシアの横暴に立ち向かった。「故国あってこそのわが命」という思いは世界中に届き、国民も奮い立たせた。これこそ乱世の指導者だ▼日本は何を学び取るか。頼りの米国も「更なる危機に日本は何ができるか」と問い続けるはずだ。他人事感さえまだ残る日本で、この危機は国家として当然な答えを明示してくれた。

(宮本 倫好)週刊「世界と日本」第2220号

 

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