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マスメディア批判

進むワクチン接種

接種を巡る報道は

 

否定的報道続ける朝・毎

求められるのは接種促進の報道

 

 新型コロナ・ワクチン接種のペースが上がってきた。接種加速によって感染収束に向かうことが期待される。

 しかし多くのメディアは以前から、ワクチンに否定的な報道を続けてきた。

 日本のワクチン接種開始が遅れたのは事実だが、その原因は政府だけではなく、地方自治体の対応にも遅れが目立っていたし、民間医療機関との連携も十分ではなかった。

 そうしたネック解消の一策として政府は、自衛隊による大規模接種を東京と大阪で実施する方針を打ち出した。これがその後の各自治体の接種対応を速めるきっかけとなったのだが、ところがこれに一部メディアがかみついた。その急先鋒が、朝日新聞出版の週刊誌『AERA』と毎日新聞だ。

 AERAの電子版(4/30)は「菅総理“乱心”でワクチン1万人接種センターぶち上げ」と題する記事を掲載した。

 同記事は「ワクチン接種にしか支持率回復の望みを持てない菅政権の焦り」と揶揄し、「机上の思い付き」「準備期間がなさすぎる」「各省庁は頭を抱えている」など否定的なコメントを並べていた。

 さらに「1万人接種センター 日本旅行、人材派遣会社に約37億円で“丸投げ”」(5/10)、「運営を不可解な随意契約30億円で民間に丸投げ」(5/11)と続けた。

 だが実際は丸投げではない。事業主体の自衛隊だけでは手が回らない民間看護師の確保や会場設営などを民間企業に委託するものだ。この記事は明らかに事実をゆがめている。

 こうした同誌の一連の報道は、批判を通り越して、悪意ある攻撃とさえ言えるほどだ。

 そしてあの架空予約報道である。大規模接種の予約が始まった5月17日、AERAの記者が予約サイトで市町村コード、接種券番号、生年月日の項目で架空の数字を入力したところ、予約が取れたとして「予約システムに重大な欠陥」と書いた。

 同じことを毎日新聞も記事にし、翌日の社説で「見切り発車の不備が露呈」と批判した。このほか『日経クロステック』(日経BPの専門誌)が架空予約して記事化し、それを受け日経電子版も記事にしている。

 朝日新聞出版と毎日新聞は「記事には公益性がある。予約後すぐにキャンセルした」としている。しかし架空予約という行為そのものが、報道倫理に反しているのだ。防衛省のシステムに不備があったのは事実だが、それを確認する方法は他にもあったはずだ。メディアは記事内容だけでなく、その取材のプロセスでも批判を受けるような手段を用いるべきではない。これはメディアの基本にかかわる重要なことである。

 大規模接種が始まると、AERAは「高齢者対応に配慮が足りない」(6/1)と、どこまでも大規模接種を目の敵にしている。

 メディアが今なすべきことは、粗探しで政府批判を展開することではなく、ワクチンへの理解を深め接種を促進させるような報道を充実させることである。

(岡田 晃)週刊「世界と日本」第2199号

 

日本を貶める

作為報道氾濫

 

原発「処理水」の風評被害排せ

大手メディアは汚染水といい張るが

 

 4月13日、菅義偉首相は東京電力福島第1原子力発電所の敷地内に貯蔵されてきた処理水を、2年後の2023年を目途に海洋に放出することを決めた。

 東日本大震災発生以来、処理水を貯蔵するタンクはすでに1千基を超え、これ以上の建設は不可能だ。従って海洋への放出は計画されてきたが、地元の漁業関係者、野党、一部メディアの反対で見送られてきたのである。

 海洋放出賛成派は、放出反対は風評被害によるもので、それを拡散しているのは一部メディアだと指摘する。朝日新聞は、5月1日の社説で東電会長に就任した小林喜光氏(前経済同友会代表幹事)に「汚染水の処理に真摯に取り組め」と注文をつけた。かねて朝日は「処理済み汚染水」、毎日は「汚染処理水」と注釈をつけているが、一貫して海洋放出は海を汚染し漁業に影響を与えると報じている。

 政府は漁業関係者に処理水が安全であること、フランスなどでもすでに放出していることなどを丁寧に説明すると約束するが、メディアの振り撒く風評被害は波紋を広げる。中国や韓国の反対を煽ったのが一例だ。韓国など本物の汚染水を放出しているのに、反日を強調するために利用しているのだ。

 これらメディアの風評拡散に対し、『正論』(6月号)でジャーナリストの林智裕氏が「『汚染水』という詭弁」というレポートで、処理水の安全性を科学的に証明し、共産党の巧妙な反対運動や朝日や毎日のデマ報道を完膚なきまで論破している。

 彼らは「汚染水を海に流すな」と叫ぶデモを熱心に報じているが、特にNHKの海外向け放送の罪は重い。林氏は「NHKは処理水をradioactive   water(放射性の水)と発信している」と批判したが、さすがに抗議殺到で訂正に追い詰められたという。

 なにかNHKの作為が感じられる表現である。いまドキュメント番組『緑なき島』(通称・軍艦島)の捏造問題が注目されているが、日本を貶めることに走っているようで情けない。同様の作為は朝日の歌壇にも見える。「行き場なき満タンの原発汚染水 聖火ランナー背景とはせず」という読者の短歌を掲載したのだ。

 朝日は『声』欄で読者の気持ちを紹介すると称して反日を鼓吹したり政府を攻撃する狡猾なところがある。しかし、そんな手法による情報操作もネットによって即座に否定されたり真相が明るみに出るようになった。

 月刊誌『テーミス』(6月号)は、一部メディアが拡散した風評被害を一掃した「処理水の海洋放出」が東日本を復興させると報じた。また雑誌『財界』(5月26日号)では、倉本聰氏が、処理水を巡る風評に全く根拠がないこととそれに振り回される愚を痛烈に批判している。

 倉本氏は、原発廃棄物の処理地候補に、北海道の寿都町などが手を挙げたときも、反原発団体などの声高な反対に流されることなく冷静に見守るよう説いていた。大メディアへの“頂門の一針”である。

(加藤 淑太郎)週刊「世界と日本」第2198号

 

憲法記念日巡る

世論調査と社説

 

調査結果 改憲の声が多

読・産 緊急事態条項明記を主張

 

 昨年と同様、緊急事態宣言下で迎えた5月3日の憲法記念日。今年も日本国憲法をめぐってコロナ禍ではあったが、改憲派vs護憲派の集会が開催された。

 マスコミ各社は毎年、憲法記念日が近づくと「日本国憲法についての世論調査」を実施している。改憲に消極的な朝日と毎日、積極的な読売と産経という構図のなかで、各社の世論調査の結果は、今年も改憲すべきという割合が多かった。朝日と毎日にとってはおもしろくない結果だろうが、国民の意思であることを受け止めるべきだろう。日本国憲法は「不磨の大典」ではないのだから……。

 新聞各紙は5月3日の社説でどう論じたか。

 読売と産経は、緊急事態条項の憲法への明記を主張。それに対して、朝日と毎日は明記に反対している。世論調査でも「緊急事態条項の必要性」についても質問しているが、明記を求める割合が多い。朝日や毎日よりも、国民の方が現実的な感覚を持っていることを証明した格好となった。

 産経は自衛隊の行動・権限を「ポジティブリスト」方式から世界標準の軍のように、とってはいけない行動を定める「ネガティブリスト」方式に改めるべきだと論じている。筆者もこの論には大賛成であり、速やかに政府は見直しをするべきだろう。安倍政権下、日本維新の会を除く野党は憲法論議に消極的な姿勢を示し、憲法審査会の開催ができない状態が続いた。ようやく国民投票法改正案については与野党で合意したが、その他の課題は手付かずの状態となっている。読売は憲法審査会の停滞について言及し、その原因を作ったのが立憲民主党であると断じた。そして、与野党は本格的な憲法論議を着手すべきだとしている。

 朝日の社説を読む限り、国民の意思が自分たちの路線(朝日の路線)から離れていっているという危機感があるとは到底思えない内容だ。改正すべきという割合が多いという結果を受け入れることを拒んでいるようにしか思えない。現実社会を無視した論調をこのまま続けていけば、さらなら部数減に拍車をかけるだけだ。毎日の社説は迷走した内容となっている。憲法学が専門の棟居快行専修大学教授の「自由と安全を両立させる必要がある。安全を口実に国家が個人に介入し、内閣の勝手にさせないよう、国会が縛っていくことが大事だ」とする意見を紹介しているが、この文章の意味を理解できないのは筆者だけか……。また、「民主社会を成熟させるには、国会による行政監視だけでなく、市民の取り組みが欠かせない」と論じているが、「市民の取り組み」について具体的な説明はなく、何を言いたいのか全くわからない。朝日と同様に、改正すべきという割合が多いという結果を受け入れたくないのだろう。

 最後に、産経の5月4日の紙面に、安倍晋三前首相と東京外国語大学の篠田英朗教授との対談が掲載されていた。この対談は論点が整理されており、護憲派の人たちにも是非読んで頂きたい。

(濱口 和久)週刊「世界と日本」第2197号

 

新聞は文書の

背景に迫れ!

 

「小室文書」報道に疑問あり

新聞と週刊誌の報道姿勢衝く

 

 秋篠宮家長女の眞子さまと小室圭氏の結婚を前提とした交際が発表されたとき、国内は祝福に包まれた。しかし数カ月後、小室氏の母親・佳代さんと元婚約者との間で金銭トラブルが発覚し、結婚は延期された。

 それ以後、眞子さまと米国に留学した小室氏の動静は、テレビと週刊誌が精力的に報じてきたが、新聞は宮内庁の公式発表に拠るところが多かった。秋篠宮さまの「国民の祝福が得られるように……」と語ったときも背景にまで及ぶことはなかった。

 そこへ小室氏が、母親と元婚約者との間の金銭トラブルを釈明する文書を発表したのだ。氏はA4判で28枚に及ぶ文書の中で、「400万円超は借金ではなく贈与だった。元婚約者は『返さなくてもよい』とまで言ったが、その録音もある」と主張したのである。

 これに対する世論は厳しく、眞子さまの「1人でも理解して下さる方がいれば」というお気持ちに反し、ネット上を中心に批判が噴出した。これを受けて小室氏の代理人は「解決金を支払う意思がある」と釈明したが、却って批判を増してしまった。

 それというのも『週刊文春』と『週刊現代』で元婚約者が「返却しなくてよいと言った覚えはない」や「生活費が足りないとねだられたから」などと反論したからだった。この経緯と波紋はテレビや週刊誌が報じたが、新聞は小室文書の要旨を報じた後は、解決金提案も短く報じただけだった(4月17日現在)。

 今後、眞子さまと小室氏が結婚したら、悠仁さまが天皇陛下になったとき小室氏は義兄になり、母親と共に皇族や旧宮家の集まりである菊栄親睦会に出席できるようになる。それでも新聞は、今度の「小室騒動」の実相に迫る報道をしないつもりなのか。

 かつて新聞は、政治家や検察幹部の醜聞を、先に情報を掴んでおきながら週刊誌やミニコミ誌にリークし、世間の反応を見てから報じてきた。宇野宗佑元首相は就任直前、3本指(月30万円)で芸者を口説いていた。芸者は毎日新聞に通報したが、「新聞にはなじまない」と『サンデー毎日』に回された。しかし「首相としてあるまじき行為」と全メディアが追及し、宇野氏は辞任に追い詰められた。

 次期検事総長確実と言われていた検事長が、業者が手配した銀座のクラブ女性とねんごろになり旅行などを楽しんでいた。朝日新聞は、その情報をミニコミ誌に流して世間の反応を見た上で精力的に報道した。先の黒川検事長の緊急事態宣言下の麻雀騒動も週刊誌の後追いだった。新聞の取材力の衰弱だけではない、ジャーナリズムの責任と矜持を忘れているのではないか。

 今回の「小室騒動」は皇族に求められる清潔、誠実、品格を欠いている。国民の皇室への尊崇は明らかに薄れつつある。それを新聞は「われ関せず」と座視しているつもりか。新聞は宮内庁長官らの発言をただ伝えるだけで満足しているのか。

(加藤 淑太郎)週刊「世界と日本」第2196号

 

全国紙3月社説

目立つ中国関連

 

東京・毎日除く他紙6件

目を向けよ 中国の表記統制

 

 全国紙の3月社説・主張(産経)を眺めて気付くのは、中国関連の内容が多いことだ。東京の1件、毎日の4件を除き、他紙は6件以上取り上げた。

 全国紙が中国を話題にした時のキーワードのうち、全国人民代表大会(全人代)、香港、ウイグルや海警法は、国内外に対する中国(中国共産党)の強硬姿勢に関わる。また、米中アラスカ会談、日米豪印会合、日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)は、西側諸国と中国との関係の在り方に関わる。

 愛国者だけを選挙候補者とするとした香港の選挙制度変更を産経は「改悪」(3/13)と断じ、「改変」と書いた毎日も「1国2制度」の形骸化で、「国際的な理解は得られない」(3/14)と批判的だ。

 ウイグル族への人権侵害に対する欧米諸国の制裁については、産経と読売が強く支持した。ただし、産経は、「極めて恥ずかしいのは日本の姿がないこと」(3/25)だと日本の姿勢を批判し、読売も「中国への調査団派遣を呼びかけるなど」の具体的行動に踏み出せ(3/29)と主張した。日本の対応が欧米と異なるのは、中国側の反発や親中派の与党有力政治家に忖度したせいなのか。このあたりも産経や読売に追及してもらいたい。

 香港問題と並んで無視できないのが台湾問題だ。3月1日から中国が実施している台湾産パイナップルの輸入停止問題だけではない。2月に発表された米国・外交問題評議会の報告書『米国・中国・台湾—戦争を防止するための戦略』は、「台湾は米中間競争を対立に変える……課題」であり、「近年、紛争が発生する可能性は大幅に上昇している」(NHK3/19)と論じた。これを取り上げたのがNHK BS1だけというのは残念だ。

 最後に、全国紙が取り上げていない2点に触れたい。

 第1は、本欄で何度か取り上げた経済規模と所得水準を10年で倍増するという2020年目標が、3月の全人代でどう扱われたかという問題である。

 李克強首相は全人代における政府活動報告の中でこの目標には一切言及せず、主要国唯一のプラス成長、貧困脱却や100兆元経済の実現などの成果を誇示し、21年の成長率目標6%以上、「デジタル中国」の建設、安全保障戦略に立脚した「平安中国」の建設などを提示した(『月刊中国情勢』3月号)。

 全国紙には、2020年目標への言及がなされなかった背景や、政府活動報告で示された重要な戦略や政策について広く紹介・解説してほしいものだ。

 第2は、中国国内での香港・台湾の表記変更である。14年の香港「雨傘運動」と台湾「ひまわり運動」から3年後の17年1月に突然、香港と台湾は「中国香港」と「中国台湾」と表記されるようになった。現在、中国の大学教員が香港・台湾と表現すると、「政治的過ち」を犯したとして厳しく批判される。全国紙には、中国国内での思想・言論統制だけでなく、こうした表記統制にも目を向けてほしい。

(谷口 洋志)週刊「世界と日本」第2195号

 

東日本大震災報道

各社説で複数掲載

 

読売 防災教育の重要性など強調

朝・毎 お粗末なエネルギー論

 

 津波の襲来により甚大な被害を出した東日本大震災から今年の3月11日で10年が経った。新型コロナウイルス感染防止のために、昨年は中止となった政府主催の追悼式は参加人数を限定して開催。震災関連の防災イベントも3月11日前後に全国で開催された。

 各メディアも震災から10年ということで、様々な特集番組や企画記事、識者の論文を掲載。同じ震災でも26年前の阪神・淡路大震災についての報道量は、『マスメディア批判(2月15日号)』でも指摘したが毎年減っている。震災の風化を防ぐにはマスコミの力も必要であり、教訓を伝えていく責任は大きい。一方で、テレビ各局は3月11日の特集番組では津波が街を飲み込む映像を繰り返し放送していた。確かに東日本大震災を象徴する映像は津波襲来の場面かもしれないが、恐怖心を煽るだけで、津波からの避難行動や津波対策についての解説には物足りなさを感じた。

 新聞各紙は震災関連の社説を数回に分けて掲載。読売だけは3月11日の1回だけだが、産経は2回、朝日は3回、毎日は5回も取り上げている。

 読売は1回しか取り上げていないが、「教育現場で震災の教訓を伝えることが大事だ。資料保存の取り組みや語り部活動を支えたい。記憶を次の世代に伝え、未曽有の体験と向き合い続けることは、将来の被害軽減につながるはずだ」「自治体と住民が平時から復興のあり方を話し合う『事前復興』の取り組みが重要になる。被害想定を踏まえ、被災した場合の街づくりの方向性を定め、指揮命令系統や手順を決めておく。事前に青写真を描くことは、円滑な復興の実現に資するだろう」と述べている。前者は教訓を伝える防災教育の重要性、後者は地域防災力の強化や危機管理体制の重要性を訴えており、非常に評価できる。

 東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、エネルギー政策について産経、毎日、朝日が論じていたが、毎日と朝日の安易な「原発に依存しない社会(原発ゼロ)」には苦言を呈したい。原発に依存しない社会(原発ゼロ)を目指すこと自体は否定しない。だが、太陽光発電や洋上風力などの再生可能エネルギーへの転換を強調するだけで、再生可能エネルギーの問題点については一切触れていないからだ(文字数の関係でここでは問題点についての詳しい説明は省略する)。ちなみに、日本では殆ど報道されていないが、過度に再生エネルギーに依存したことによる電力不足問題が海外では起きている。

 3月10日放送のBSフジ「プライムニュース」では、『検証・「初動」の危機対応』というテーマで、菅直人元首相が出演。反町キャスターが菅元首相に福島原発事故後の状況判断について質問。すると、菅元首相は自分の判断を正当化し、言い訳に終始していた。首相経験者の反省のない態度を炙り出した反町キャスターの番組進行は、視聴者を飽きさせないものだった。

(濱口 和久)週刊「世界と日本」第2194号

 

日経平均株価の報道
自虐過ぎな経済報道
本当か「実態と乖離」指摘は
報道は経済復活にマイナス影響
 少し時間が経ったが、2月15日に日経平均株価が30年半ぶりに3万円の大台を回復した。各紙の同日付け夕刊と翌日16日の朝刊を読み比べると、現在のメディアの欠陥が浮かび上がってくる。
 日経は「企業業績の改善に加え、コロナ後の経済回復への期待が高まった」と株高の背景を分析し、併せて「企業収益改善は道半ば」「金融緩和が株価を押し上げている」など問題点も指摘した。日経らしくバランスの取れた内容となっている。
 だが他の全国紙は少し違っていた。朝日は「実体経済と乖離」「ゆがみの蓄積に注意を」、読売も社説で「経済の実態を映していない」と書くなど、問題点に重点を置いている。さらに毎日には「コロナ下、緩和の果て ご都合主義、期待先走り」「バブルの懸念」と、株価上昇を批判するような言葉が並んでいた。
 たしかに、コロナ禍での株高に懐疑的になる気持ちもわからないではない。金融緩和が株高を加速させている一面があるのも事実だ。
 しかし株高の根底には、もっと重要な中長期的な背景がある。企業の収益力そのものの回復だ。多くの日本企業はこの十数年間、事業の再構築=本来の意味でのリストラと構造改革に取り組んできた。その成果がここへきて表れているのである。
 上場企業の業績は今年3月期見通しの上方修正が相次ぎ、約2割の企業が過去最高益を達成する見通しとなっているが、前述の構造改革がなければ、コロナ禍でこれだけの業績を確保することはできなかっただろう。
 したがって、現在の株高は「実態と乖離している」とは、実は必ずしも言えなくなっているのだ。しかしそのような分析記事は、前述の日経をのぞいて全国紙ではほとんど見当たらない。
 ここに、主要メディアの経済報道をめぐる2大欠陥がある。
 第1の欠陥は、日本経済に対する過小評価と過度な悲観論だ。
 バブル崩壊以後、世間では「日本の競争力は低下した」「日本経済は衰退している」などのイメージが定着し、先行きについても悲観論が支配的だ。
 しかし数年前から明らかに前向きな動きが表れ、基調が変化している。まだまだ不十分ではあるものの、その流れはコロナ禍の厳しい中でも継続している。
 だが多くのメディアは、そうした側面をほとんど無視している。
 第2の欠陥は、株価が上昇すると条件反射的に「バブル」と評することだ。
 もちろんバブルは警戒すべきである。だからこそ常に分析が必要なのだが、多くの場合、大した分析や検証なしに、「バブル」と決めつけているのが現状だ。ましてや前述の毎日の記事のように、株価上昇自体がまるで「悪」であるかのように表現するのは、メディアが取るべき態度ではない。
 この2大欠陥を筆者は「経済報道の自虐史観」と呼んでいる。これが、多くの人の経済マインドを後ろ向きにするなど、日本経済復活にマイナスの影響を与えることを憂慮している。

(岡田 晃)週刊「世界と日本」第2193号

 

中国国家統計局発表

20年の経済成長率

GDP倍増目標が未達

習政権 どう総括する

 1月18日、中国国家統計局は20年の経済成長率(実質GDP成長率)が前年比2.3%であったと発表した。当日の日経夕刊は、「コロナ下、主要国唯一プラス」となったが、「20年の実質GDPは10年の1.94倍にとどまり、中国共産党が掲げた倍増目標は未達だった」ことを伝えた。

 主要国が軒並みマイナス成長となる中でプラス成長となったのは驚きだが、GDP倍増目標達成の失敗をどうみるか。

 中国の20年1~3月期成長率が大幅マイナスとなった際に日経は、「長期目標が達成できず、習近平政権への政治的な打撃になりうる」(20年4/18)とし、4~6月期に回復した際も、倍増目標の達成は難しく、「政治的には痛手」(20年10/20)と論じた。

 倍増目標未達が不可避となった20年10月下旬の中共第19期中央委員会第5回全体会議(5中全会)では、「党幹部人事なし、後継者棚上げ」の一方、20年GDPの100兆元超えと脱貧困を誇示し、「党の核心」である習氏の指導力を礼賛した(日経20年10/30)。5中全会では、35年までの15年間にGDPと1人当たり収入の倍増が可能だとの見通しも示された(日経20年11/4)。

 11~15年と16~20年の各5カ年計画では、GDPの年平均成長率目標は、責任を伴う約束性でなく、努力目標の予期性である。しかし、10年から20年までのGDP倍増は単なる努力目標ではない。中共創立100周年にあたる21年の前に貧困撲滅と全面的小康社会を実現したことを国内外に誇示する象徴的目標で、習近平共産党指導部の下で実現したことを国民に示す政治的目標だ。だから、目標未達は政治的打撃なのである。

 倍増目標未達の政治的打撃を緩和する方策は、早期のコロナ禍収束やプラス成長の誇示、15年後の長期目標の設定や対外摩擦の利用である。これによって倍増目標から国民の視線と関心をそらすことができる。

 それでも、倍増目標未達を強調し、これを政権批判につなげる勢力があれば、経済社会の発展と安定を阻害する国家転覆勢力に仕立てて攻撃するであろう。そうすると、香港やウイグルの制圧を知る国民は、政府への表面的な同調と沈黙を強いられることになる。

 現政権が治安と国防を強化する中でこうしたシナリオが現実化する可能性は低いとはいえ、3月の全国人民代表大会で倍増目標未達がどのように総括されるかは見ものだ。

 なお、20年目標にはGDP倍増のほかに、平均所得倍増もある。1月19日の国家統計局発表によれば、20年の全国住民平均所得は10年比で倍増を達成した。しかし、胡錦涛政権が倍増目標を発表した12年11月段階では、全国住民でなく、都市・農村住民の平均所得倍増が目標だったのである。実績は、農村平均所得は2倍超、都市平均所得は2倍未満であり、倍増目標の対象が微妙にすり替えられたのだ。内外のメディアにはこうした細部にも目を向けてほしい。

(谷口 洋志)週刊「世界と日本」第2192号

 

忘れてしまったのか

震災報道を巡って

記憶・教訓の風化を防ぐ役割を

「備えあれば憂いなし」なのだ

 平成7(1995)年1月17日、兵庫県の淡路島北部沖の明石海峡を震源として、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が起きた。この地震は、日本で初めて大都市直下を震源とする大地震で、気象庁の震度階級に震度7が導入されてから初めて最大震度7が記録された地震である。

 今年は、阪神・淡路大震災から26年が経つなか、新型コロナウイルスの感染防止もあり、追悼行事は規模が縮小、中止となったことは非常に残念である。なぜなら今年は、17日が日曜日であり、多くの神戸市民が追悼行事に参加できる絶好の機会でもあったからだ。

 一方で、災害の記憶や教訓は、時間が経てば忘れられ風化する。それを防ぐ役目を果たすのがマスコミではないだろうか。朝からテレビ各局の報道・情報系の番組を見ても、しっかりと阪神・淡路大震災をテーマにして番組を放送していたのはテレビ朝日『サンデーLIVE!!』だけだった。番組では「映像で記憶を未来につなぐ」というテーマで、兵庫県内を放送対象地域としているサンテレビが保管している神戸市内の被害の映像を交えながら、かなりの時間を割いて、阪神・淡路大震災のことを伝えようとしていた。

 TBS『サンデーモーニング』では、阪神・淡路大震災に関しては、たったの約30秒という短さだった。あまりにも短すぎないか。それに対して、約5分もの時間を割いて、コメンテータの松原耕二氏が黒板を使って「安倍晋三前首相の『桜を見る会』前夜祭を巡る国会答弁」問題を解説していた。色んなテーマやニュースがあるなかで、時間をかけて解説する必要があるテーマとは到底思えないのだが・・・。

 驚いたことに、TBSと同じグループの毎日新聞17日付の社説タイトルは「安倍氏の『桜』前夜祭 国会の場で疑惑の解明を」だった。松原氏と毎日新聞が示し合わせたかのようだ。ちなみに、全国紙のなかで、毎日新聞だけが、17日の社説で阪神・淡路大震災を取り上げていなかった。

 NHK『日曜討論』も新型コロナウイルスに関するテーマで討論が行われていた。連日、新型コロナウイルスに関しては、医療関係者や政治家が対策や解説を行っており、17日ぐらいは阪神・淡路大震災の教訓から学ぶ地震対策を中心とした災害対応について討論して欲しかった。

 3月11日には東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が起きてから10年という節目の日が訪れる。また、4月14日には熊本地震が起きてから5年という節目の日が訪れる。日本人は日本列島に暮らす限り、地震と付き合って生きて行かなければならない。首都直下地震や南海トラフ巨大地震もいつ起きてもおかしくない。

 「備えあれば憂いなし」という諺がある。震災の記憶や教訓を未来に伝えていく責任の一端を担っているマスコミ人は、この諺を噛みしめて、節目となる日ぐらいは、日本人に響くような震災報道をして欲しいものだ。

(濱口 和久)週刊「世界と日本」第2191号

 

全メディアは倫理綱領を守れ

朝日新聞の「報道姿勢」を問う

吉田氏著『産経新聞と朝日新聞』

 いま全国紙6紙が報道姿勢から、保守が読売と産経、中間が日経、リベラルが朝日、毎日、東京と色分けされている。安全保障や安倍1強への対応から、この通説はほぼ当たっている。

 そんな折、産経新聞元論説委員長の吉田信行氏の『産経新聞と朝日新聞』が刊行された。産経の成り立ちや社員だった司馬遼太郎氏を巡る話は置いて、対極にある産経と朝日の報道を巡る内幕は、戦中戦後の状況から最近の事件まで活写されている。

 韓国の裁判所は1月、慰安婦問題で日本に謝罪と賠償を求める判決を出した。日本政府は即座に反論したが、韓国政府やメディアは判決を支持し反日姿勢を強めている。

 その原因を作った「吉田証言」を大きくかつ延々と報じたのが朝日であり、のちに社長が削除と謝罪を表明したが、今回の韓国判決に対する社説には反省の色は見えない。

 1月14日の産経で、論説委員兼政治部編集委員の阿比留瑠比氏は、コラム『極言御免』の「社会分断するリベラルの偽善」で、朝日の社説を厳しく批判した。

 「(略)朝日はこう書いた。『当時の安倍(晋三)首相が謙虚な態度を見せなかったことなどが韓国側を硬化させる一因となった』(略)もはや笑うしかない。(略)」

 吉田氏は、戦後の朝日が中国、北朝鮮、韓国に配慮というより迎合した報道を続けてきたケースを詳述している。産経記者の柴田穂氏が中国の実態を報道したために国外退去をさせられた。しかし朝日は、記者を在中させるために中国の嫌がる報道を控えたのだった。それは当時の社長・広岡知男氏の方針に従ったものだった。

 産経ソウル支局長・加藤達也氏は当時の朴槿恵韓国大統領から名誉毀損で訴えられた。セウォル号惨事の際、朴氏が行方不明だったことを報じた記事で裁判は延々と続いたものの、結果は加藤氏の無罪が決定したが、この間、朝日の若宮啓文論説主幹はあえて韓国に迎合する発言をしていた。

 吉田氏は朝日のこうした報道方針は、戦前は戦争を美化し鼓吹する一方、大東亜共栄圏構想を推進してきたこと、それが戦後は、笠信太郎論説主幹を中心に「反日」、いや「亡日」に走るようになった過程を詳述している。

 講和条約締結時や60年安保のとき、全国紙はほぼ画一的な報道をしていた。当時の世界情勢では不可能だった全面講和を主張し、実は圧倒的多数だったが、単独講和を呼び続けた。60年安保でも改正反対を煽り立てたが、反対デモが過熱化すると、6紙連合で「鎮静化を」と呼びかける変節を示した。新聞は相互批判をするべきである。

 吉田氏は末尾で、自身も関わった「新聞倫理綱領」を紹介しているが、朝日を含め最近のメディアの中には綱領から逸脱しているケースが目立っている。メディアに携わる全員が綱領を肝に銘じるときだ。

(加藤 淑太郎)週刊「世界と日本」第2190号

 

元旦の全国紙社説

メッセージの内容

読売  デジタル化の問題指摘

朝・毎・日経  経済中心に論展開

 コロナ禍の第3波が猛威を振るう中で、元旦の全国紙社説は経済やデジタル化についてどのようなメッセージを伝えたか。

 読売は、コロナ禍の収束が最優先課題であるとする一方、国際社会での日本の役割、成長戦略・社会保障制度改革の断行や国力充実を提言する。国力に関連して注目されるのは、読売がデジタル・トランスフォーメーション(DX)という流行語には触れず、デジタル化の遅れの一因が「技術者や研究者を大切にしない企業風土」にあるという根本問題を指摘したことだ。

 日経も、最優先課題としてのコロナ禍封じ込めと同時に、経済、民主主義、国際協調の3点での再起動が必要であると提言する。経済については、コロナ禍による困窮者への支援、ワクチン普及による人的交流再開に期待感を抱く一方、経済再生には「デジタル化や雇用市場の改革など」の戦略が必要であるとする。しかし、何度も議論してきたせいか、これ以上の具体的言及がないのは、「経済の日経」としては残念だ。

 朝日は、「核兵器、気候危機、コロナ禍」に立ち向かうことが必要だとし、「コロナ禍で傷んだ経済の再生を・・・気候変動への取り組みと連動」させる「グリーンリカバリー(緑の復興)」の動きに注目する。しかし、目下の課題である経済再生と、中長期の課題である脱炭素化・生態系保全との区別が認識されていない。また、社会余力がそぎ落とされ、医療崩壊につながった地域が出たのは効率追求のせいだというのは、安直で無意味な主張だ。

 毎日は、世界最悪の感染状況にある米国を例に挙げ、コロナ禍に対する民主政治の対応能力に問題があるという重要な論点を指摘する。それとは対照的に、強権政治の「中国は都市封鎖やIT(情報技術)を駆使した国民監視などの対策」により、感染拡大を早期に抑え込んだ。しかし、米中の比較から、コロナ禍対策では民主主義が敗北し、独裁政治が勝利したという結論を導くことは適切でない。

 中国政府は、新型コロナ感染への不安感を持った武漢住民が病院に殺到し、濃厚接触を通じて感染急拡大を招いたという反省から、強硬な都市封鎖・越境封鎖を導入し、収束後も相当期間にわたって移動・行動制限を継続した。こうした徹底的な隔離対策が奏功したと考えるのが適切であり、強権政治だから成功したという理解は表層的で間違いだ。コロナ禍は世界全体に蔓延しており、いまだ収束していないことを考えればすぐにわかる。

 また、「ITを駆使した国民監視」という表現にも注意が必要だ。徹底的な移動・行動制限を目的として監視カメラやドローンが利用されただけでなく、接触アプリを通じて各人が感染者との接触を回避したことも重要だ。

 日本にも類似のアプリがあるが、利用価値はゼロに近い。経済再生の切り札とされるデジタル化をDXと呼んで淡い期待を寄せる前に、読売社説のように、デジタル化を妨げる要因にもっと目を向けるべきだ。

(谷口 洋志)週刊「世界と日本」第2189号

 

臨時国会が閉会

大手各紙の社説

社説(産経除く)早期閉会を批判

光る読売 憲法議論へ提言

 菅政権が誕生して初めての国会(臨時国会)が12月5日に閉会した。野党が会期の延長を再三要求したが、与党は延長を拒み強引に閉会した格好だ。

 産経新聞以外の各紙は閉会に合わせて、臨時国会の総括を社説で論じた。各紙に共通しているのは、新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、国民に不安が広がっているなかにあって、早々と国会を閉じるのは到底理解できないとしている点だ。菅首相の説明不足についても批判している。

 朝日新聞は「自らが推し進める政策の狙いを丁寧に説明し、国民の理解を得ようという姿勢も、政治の信頼回復に向け、安倍前政権の『負の遺産』を清算しようという決意もうかがえなかった」と断じた。毎日新聞は「野党の質問に直接答えず、自分に都合のいい話ばかりを並べ立てて、問題点をはぐらかした安倍氏とスタイルは違う。とはいうものの、『議論封じ』という点では菅首相も同じだろう」と述べ、菅首相の答弁に苦言を呈した。東京新聞は「臨時国会閉会『ウソ』『カネ』は不問か」という見出しを社説に付け、「森友学園への国有地売却を巡る問題でも、安倍前政権下の17~18年に国会で行われた政府答弁のうち、事実と異なる答弁が計139回にも上った。政府側が正しく、誠実に答弁することは正しい法案審議や、三権分立が機能するための大前提だ。虚偽答弁が繰り返される状況は当然、放置するわけにはいかない」として、菅首相に真相究明を促した。読売新聞は「首相は折に触れて、立ち話の形式で感染症対策について説明してきたが、国民に危機への対処方針を十分に発信してきたとは言えない」としたうえで、「国難とも言われる状況を克服するには、行政のトップが自らの言葉で、明確な指針とメッセージを出す必要がある。積極的に訴える機会を増やしてもらいたい」と要望している。

 一方で、菅首相や与党の国会運営に対する批判の内容が、一般の国民が思っていることを長々と書き並べているだけでしかない。わざわざ時間を割いてまで読む必要があるのかと感じた読者もいただろう。新聞を含めたマスコミが、時の政権を監視し批判する役目を担っていることを否定するつもりはないが、批判一辺倒の論調では、読者は物足りなさを感じるに違いない。

 私が注目したのは読売新聞が社説で提言した「自民、立憲民主両党は、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案について、来年の通常国会で結論を得る方針で一致した。早急に成立させ、衆参両院の憲法審査会で、国の最高法規のあり方を議論することが大切である」という部分だ。安倍政権下で野党(維新の会を除く)は一切、憲法審査会の開催に応じようとしなかった。臨時国会でも憲法論議は一歩も進んでいない。緊急事態法の制定も含めて、国会が憲法議論を先送りすることは絶対に許されないことだと私は考えている。読売新聞の前向きな提言は評価できるものであり、私は支持したい。

(濱口 和久)週刊「世界と日本」第2188号

 

米大統領選挙

メディアの姿勢

禍根残した米メディア

日本も同じ  追随姿勢

 異例ずくめだった米大統領選が終わった。それにしても今回の大統領選でのメディアの報道姿勢は大きな禍根を残した。

 米国の主要メディアの報道に「反トランプ・バイアス」がかかっていることは以前に指摘したが(本欄8月3日号)、その傾向は投票日が近づくにつれて一段と強まった。投票後の開票速報やその後の報道ぶりでも、それは変わらない。

 その代表的な事例が、両候補のスキャンダルをめぐる報道だ。

 ニューヨーク・タイムズ(以下、NYT)は9月末、トランプ大統領が就任前の15年間のうち10年間は所得税の納税がゼロだったとの資料を独自に入手したとして大々的に報じた。

 しかしその半月後、大衆紙のニューヨーク・ポストが、バイデン氏の息子ハンター氏が使っていたパソコンの数千通のメール通信記録を入手し、ハンター氏がウクライナや中国と疑惑のビジネスを進め、バイデン氏が副大統領時代にそれに協力していたと報じた。だがNYTをはじめ多くの主要メディアは当初これをほとんど無視した。

 このようにトランプ氏に不利な材料は大きく報道し、バイデン氏の疑惑は無視するか小さく報道するという傾向が目立っていた。選挙期間中のこうした報道の仕方はメディアとして著しく公正を欠いていることは明らかだ。

 トランプ大統領の人種差別的な発言やコロナ対応、それにさまざまな乱暴な言動は批判されて当然だが、経済政策や外交政策では成果も上げている。

 だが多くの米メディアはそれらをきちんと検証するのではなく、「トランプ再選阻止」を最優先にし、それに沿った報道を続けていたのが実態だ。メディアが特定の「陣営」に参加してしまっては、もはやメディアとは言えなくなる。

 そしてバイデン氏が勝利宣言した11月7日、NYTは社説で「米国民は地獄の淵から引き返すことを選んだ」と書いていた。これではトランプ氏に投票した7000万人を全面否定することになる。

 米主要メディアのこうした姿勢は、トランプ氏の大統領就任当初から顕著だった。

 ハーバード大学の研究機関の調査によると、トランプ大統領就任後100日間で、同大統領に否定的なニュースと好意的なニュースの比率はCNNとNBCで13対1だった。CBSも否定的報道が90%以上、新聞ではNYTが87%、ワシントンポストが83%を占めていたという(マーク・R・レヴィン著/道本美穂訳『失われた報道の自由』=日経BP=より引用)。

 こうした姿勢が4年間続き、その“集大成”が選挙報道だったと言える。重大なことは、このような報道姿勢がメディアの信頼を失わせていること、そして同じ傾向が日本のメディアでも強まっていることだ。それは大統領選だけの話ではない。日本でも一部メディアが激しい言葉で「政府批判」を展開し、他の多くのメディアもそれに引っ張られている。こうした現状に危惧を覚える。

(岡田 晃)週刊「世界と日本」第2187号

 

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