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エネルギー特集

エネルギーチャンネルは、第3次安倍政権の重要テーマでもある「エネルギー」の特設サイトです。週刊・月刊「世界と日本」の執筆者、東京・各地懇談会の講師、専門家のインタビュー記事等を掲載して参ります。

2017年7月17日号 週刊「世界と日本」第2105号 より

現地リポート

『イチエフ(福島第一原発)』訪問記

実質感が持てない復興の現実

中高生の「対話」から将来の創出を

 

東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏

《さわだ・てつお》 1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。


 2011年3月11日に起きた、東京電力・福島第一原子力発電所(通称=イチエフ)事故から6年有余の歳月が流れた。そこで今回、事故発生の翌年1月に初めて現場に入ってから、毎年1回は詣でているという、原子核工学の研究者で東京工業大学助教の澤田哲生氏が、さる4月11日に現地で、自らの目で観て感じた、この5年余の変化と、「将来に向けて、今何ができるか」の現地リポートをお届けする。

日進月歩 改善の積み重ね

写真1=福島第一原発 3号機
写真1=福島第一原発 3号機

 「“温かいメシ”が食えるようになった。これが一番ありがたい。長く待ち望んでいたことだ」。現場に響く明るい声がした。
 3.11の翌年から毎年1回は『1F(イチエフ)』に詣でる。最初に1Fの現場に入ったのは、事故の翌年の1月だった。
 当時、海外から「福島第一の4号機の使用済み燃料プールが危機に瀕している。3.11よりもっと大きい悪夢が再来するぞ」という脅しが日々流れていた。「早く逃げろ!」などというフェイクニュース(偽情報)が伝わってきて、慎重派のみならず悲観論と恐怖が世間に渦巻き始めていた。
 ありえないことだと思ったが、真実を発信するには、まずは現場を踏破しプールの現状を自らの目でしっかり確かめてから。そういう想いだった。
 あれから5年余り。毎年1Fの現地を訪れるたびに、様々な点で改善が積み重ねられてきていることに驚く。あの最も痛烈な水素爆発を起こした3号機も目にするたびに姿を変えている(写真1)。まさに日進月歩である。
 常時6000人を超える作業員が現場にいて、良くも悪くも活気がある。初めの頃は作業員の表情も複雑だったが、今や余裕の表情さえ見て取れる。
 当初、視察にあたっては防護服に防塵マスクをつけて、厳重そのものの装備を身にまとうのが当たり前だったが、今ではそれらは不要である。構内でも放射線レベルが低いエリアでは、作業員も防護服を着用せず、ごく普通の作業衣に簡易マスクで仕事をしている。
 “温かいメシ”は、大熊町でいち早く除染を終えた大河原地区の、極めて近代的で合理化された施設で日々作られている。昨年夏ごろから本格操業し始めた大熊町にある福島復興給食センターで、東京電力自慢の施設でもある。実際に見学して驚嘆した。区画が実に合理的に区切られ、区画間で作業者が行き来しなくても済む。また、衛生管理に細大の注意が払われている。

写真2=福島復興給食センター
写真2=福島復興給食センター

 このセンターは1Fから南西へ9キロの居住制限区域内にあり、日々3000食を1Fに供給する。約100人の地元雇用も生み出した(写真2)。
 こうして少しずつではあるが、広大な帰還困難エリアのなかに人々の姿が見える“島”ができつつある。このように「今できること」には、東京電力の実力がいかんなく発揮されている。昔の東電のプライドが少しずつ取り戻されつつあることを実感した。
 ただ、「東電の態度が少し変わってきたように思う」と、地元浜通りには違和感を吐露する知人もいる。そこには事故のことが時代とともに風化していく一方で、復興が進んでいない地域が確実にあることや、復興そのものに、なかなか実質感が持てない現実がある。つまり、政治の無力あるいは無責任さと重なって見えてくるものがあるのではないだろうか。

深刻な問題 3つのタブー

 見た目の進歩が著しい部分は間違いなくある。その一方で1Fに足を踏み入れる回数を重ねるとともに、どんどんと鬱積するやるせなさにさいなまされる事柄もある。何年たっても解決の糸口が見えてこないものがあるのだ。
 事実上ますます深刻になってきている3つの問題がある。それは、「汚染水」「溶融デブリ」「除染」である。いずれの問題にもタブーがつきまとっている。

(1)溜まり続ける汚染水

写真3=溜まり続ける汚染水
写真3=溜まり続ける汚染水

 現在までに、原子炉建屋の周囲に掘りすすめられてきた井戸から地下水をくみ上げる「サブドレイン(下位の排水設備の意味)」という効果と合わせ、かつては1日400トン以上あった汚染水の発生量は、今では200トン以下に減少している。
 しかし、凍土壁の凍結が完成しても、毎日50トンの汚染水は発生し続ける。
 つまり、現行の汚染水対策が完遂しても、新たな汚染水が発生し続けるのである。
 汚染水の問題は、とどのつまりトリチウムの問題である。原子炉建屋から回収される汚染水には放射線を出す63種類の物質が含まれている。そのうちセシウムやストロンチウムなど62種類の物質は除去装置によって取り除かれている。
 唯一除去されていないのがトリチウムである。トリチウムとは水素の仲間で三重水素という。これが酸素と結合してトリチウム水となる。トリチウムは放射性物質であり、ベータ線(その正体は電子)を出す。トリチウムは水素と化学的性質が同じなので、水に混じったトリチウム(水)を分離するのは難しく、コストがかかりすぎる。
 ただし、トリチウムは私たちの身の回り、つまり環境中のどこにでもある。大気中で宇宙の営みの結果として常に一定量が生み出されている。また、通常に運転している原子力発電所からも出てくる。そういう物質であるから、国際的な取り決めの中で、一定の薄さに希釈すれば環境、つまり海に流して良いことになっている。
 ドレイン水と汚染水の差は、トリチウムの濃度の差に過ぎない。これまでに溜まった汚染水、これからも発生し続ける汚染水は、薄めて海という環境に流すしかないのである。そして流して良いのである(写真3)。

(2)溶融デブリの回収

 原子炉の炉心燃料が溶けて圧力容器内で流下し、一部は圧力容器を溶融貫通して格納容器の床などに落ち、コンクリートを溶かしてぐちゃぐちゃになっている。溶けた燃料は原子炉内の他の部材(鉄など)も溶かして瓦礫や小石や砂状になっていると考えられている。これをデブリ(debris)という。デブリのタブーは2つある。
(1)すべてを回収することは不可能だといえる。
(2)回収したデブリをどうするかであるが、事実上、1Fのサイトから外に持ち出すことはできないであろう。
 これらの問題はいずれも深刻で広く共有しなければならないものであるが、今誰も声を大にして言及していない。(1)と(2)を踏まえれば、1Fの溶けた3基の原子炉は「石棺」にすることも現実的な選択肢のひとつとして浮かび上がってくる。
 実はこの問題は、原子力損害賠償・廃炉機構の理事長である山名元氏が、2016年7月13日に公の会議で言及した。しかし、そのことが報じられるや、地元から大きな反発を招き、福島県知事の内堀雅雄氏が15日に経済産業省を訪問して抗議するに至った。その結果、山名氏はこの言及を取り消さざるをえない事態となった。
 なぜ(1)なのか?
 1979年のスリーマイル島の原子力事故では燃料は約5割が溶けたが、すべて圧力容器の内部に留まった。しかし、実際に回収できたのは97%止まりだった。つまり、回収できないものがあるのである。一方、福島第一では、釜の外にまで漏れ出てしまっている。
 なぜ(2)なのか?
 いわゆる使用済み燃料は、六ケ所村の再処理施設に移送することができる。使用済み燃料は定型の容器に収まっていて、当然溶けていない。一方、福島第一のデブリは溶けていて不定形である。
 こういったものを受け入れる施設は今のところ(そして2020年の最初のデブリ取り出しの頃も)日本にはない。スリーマイルの溶融燃料は、アイダホ州に運ばれ暫定保管されているが、最終的な行き場所は決まっていない。
 このデブリの問題は、石棺問題といってもよい。このタブーに正直に向き合わねばならないのは、まずは専門家や学協会であるはずだ。
 なぜ、誰も声を上げようとしないのか。結果的に地元住民が蹂躙(じゅうりん)され、苦悩するのは日を見るより明らかだと思う。

(3)地域の除染

 そしてもう一つの問題、それは地域住民と最も密接でありながら、彼らを苦しめている除染の問題である。
 いわき駅から1Fのサイトに行く途中にも、うず高く積まれた黒いフレコンパックの山並みがあちこちで目に入ってくる。国道6号線から海岸線近くまで、果てしなくこの人工の黒山が連なる光景を目にする。果たしてここまで膨大な除染を行う意味が本当にあったのだろうか。浜通りを照らす陽光はこの暗澹(あんたん)たる黒山を射抜くように降り注いでいた。
 その対照に、ある種の怯えに似たものを感じた。事実上“1mSv(ミリシーベルト)まで除染”とした除染特別措置法(正式名称は「放射性物質汚染対処特措法」、2012年1月1日全面施行)がもたらした光景である。
 農地に関して言えば、本当は“天地返し”でことは済んだはずである。そうしていれば、黒山がここまで数多く浜通りに出現はしなかったであろう。最後の最後で1mSvまで除染を法案に押し込んだ時の原発大臣・細野豪志氏は、この浜通りの暗澹たる黒山群を目にしているのだろうか。1mSv除染は地域の人々の安心を醸成するのに本当に役立ったのであろうか。
 いわゆる空間線量は事故後減り続けているが、それはセシウムの放射能が時間とともに自然に減少していくことによっている。人家の周囲はともかくも、広大な田畑の除染による効果は、実はほとんど見られない。
 1mSvとセットにして出された食品の出荷基準値(100Bq/kg、12年4月から施行)がある。民主党政権末期に時の厚労大臣・小宮山洋子氏が打ち出した愚策である。これは世界的な基準の常識を大きく逸脱しているが、補正される見込みはない。
 当時、専門家の良識は時の政治の独走の前に無力であった。その反省は今に活かされているのか。地域住民への配慮は、十分になされているのであろうか?

将来に向けて、今できること

 今、私は学校の生徒たちや先生方の意向を受けて、首都圏と福島浜通りの中高校生が対話のできる機会を作ろうとしている。
 そもそものきっかけは、甲状腺の検査を受けている福島の生徒たちが、その現状や風評被害、そして、福島そのものを知ってほしいという希望を持っていたことから始まった。一方、首都圏の生徒たちは、福島を知らない、是非一度福島に行って見て聞いて話をしたいという。
 昨年末東京で、そして今年4月には、いわき市で双方から集まって『対話』を行った。相互理解と情報共有から始めて、対話の下地ができたように思う。
 これからいよいよ各方面の専門家も交えて、中高生自身の目線とマインドで未来を切り開けないかを模索し始めようとしている。
 首都と地方という政治や行政にありがちな区別、敷居を越えた何かが中高生の中から創出される予感がある。

 

2017年5月22日号 週刊「世界と日本」第2101号 より

 

これからの原子力平和利用とは

 

NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 氏

《いしかわ・かずお》 1989年、東京大学工学部卒業、通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー、産業保安、消費者保護など各般の施策に従事、2007年退官。08~09年、内閣官房企画官。規制改革会議専門委員、東京女子医科大学特任教授、政策研究大学院大学客員教授、東京財団上席研究員などを兼任。11年から、NPO法人社会保障経済研究所代表、現在に至る。


 米国トランプ政権でのエネルギー政策動向に関して調査し、当面の日本のエネルギー政策に関する的確な方向性を見いだすため、今年3月中旬、米国の原子力規制委員会や、エネルギー政策に詳しいシンクタンク、エネルギー業界団体などを訪問し、ヒアリングを行った。

 総じて言えることは、米国では、原子力も再生可能エネルギーも、低炭素エネルギーとしての評価は顕著ではないということだ。だからと言って、日本では従来通り、原子力と再エネを、低炭素エネルギーとしての観点からも、積極的に評価していくことを怠ってはならない。
 日本としては今後とも、これまでの国際協調の下での『エネルギー・環境政策』を進めていき、「パリ協定」の路線を踏襲していくのは当然のことだ。そのため、日本のエネルギー事情を俯瞰すれば、国産エネルギー扱いとなる原子力と再エネについて、的確な振興策が必要となるはずだ。
 電力全面自由化が昨年始まったばかりの日本だが、ほぼ全てのエネルギー源は輸入化石燃料に依存している。原子力は、再エネと同様にゼロ炭素供給を実現するだけでなく、低廉・安定・大規模な供給を実現するので、日本では引き続き、最重要電源の筆頭格であることに変わりはない。
 自由化が今後も進んでいく見通しである中では、既設原子力発電所の採算性悪化を防ぎながら、運転期間を可能な限り長期化すべきだ。原子力発電所の新設は当面非常に難しいだろう。そのためにも、原子力発電所と電力小売事業者の間で、現行と同等の長期購入契約を締結することを制度化する必要がある。
 原子力平和利用に関しては、日米間で重要な取り決めがある。日本での核燃料サイクルが国際的に認められる拠り所にもなっている「日米原子力協定」がそれだ。2018年には改定時期を迎える。
 これに関することは、現時点では、米国政界の中では全く語られていないし、トランプ大統領や周辺からも、この問題への関心は全く感じられない。
 だが、この改定を阻止し、日本に核燃料サイクル事業をさせたくないと考えている勢力は、トランプ政権にアクセスできる人々の中にも必ずいるはずだ。
 日本の核燃料サイクルは、存廃を天秤にかけた場合、日米関係はもちろん、日本のエネルギー安全保障上からも、核不拡散の観点からも、廃止することの意義を見いだすことはできない。
 この協定に関係する日米双方の関係者たちは、協定延長に対する国内外からの妨害工作やプロパガンダにかかわらず、『単純延長以上』の内容を目指していくべきである。
 再エネ振興策について、米国では、税制優遇など公的支援策付きではあるが、風力発電や太陽光発電の高コスト構造が随時改善され、今では石炭火力発電を凌ぐ発電単価を実現している。風力・太陽光は気象条件に左右される不安定電源ではあるが、天然ガスなど低コスト電源との「ブレンド」で、さらに普及・拡大していく余地は大きいと見込まれる。
 日本での天然ガス火力発電は、輸入LNGによるものなので発電コストは相当高く、米国のように安価な電源ではない。日本での低コスト電源は原子力・石炭・水力なので、これらとの「ブレンド」を積極的に進めることが、日本での再エネ振興策として最適だ。
 「原子力平和利用」に関しては、さらに以下の4点について深掘って調査した。
 (1)「最終処分場」建設計画の行方は?
 トランプ政権は、原子力発電所から出る使用済燃料(高レベル放射性廃棄物)の「最終処分場」建設に関し、前オバマ政権が中止したネバダ州ユッカマウンテン処分場建設計画の再開のために、来年度予算案に所要額を計上した。
 米国では、使用済燃料の行き場がないことも大きな課題。トランプ政権の方針は課題解決への前進材料になるが、建設計画が再開されても、実際の建設までには相当の時間を要するだろう。
 米国は広大なので、ユッカマウンテン以外の場所を探すことは難しくない。ウェースト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社が所有するテキサス州の処分場が、使用済燃料の「保管施設」に関する原子力規制委員会(NRC)の許可を受けるべく申請中。
 ユッカマウンテン計画を支持している人の多くは、閉鎖後に「ドライキャスク」という特殊な容器で使用済燃料を保管し続けている原発の地元関係者たちである。
 全米にあるこれらのドライキャスクの行き場として、WCSテキサス処分場が手を挙げた。そこでドライキャスクを保管することは、あくまでも「中間貯蔵」であって「最終処分」ではない。将来的にここが最終処分場に姿を変えるかどうかは、政治的に重要な話ではない。
 WCSテキサス処分場での「中間貯蔵」が永続されても、何ら政治的な動きは出てこないだろう。それは、「最終処分」を着実に行っていくための人間の叡智だ。
 (2)米国では原子力事故後、何が変わったか?
 1979年のスリーマイルズ島(TMI)事故の後、事故の影響の他、当時のインフレ状況やエネルギー使用構造の変化など幾つかの理由から、建設途上にあった多くの原子力発電所の新設が撤回された。
 しかし、現存する原子力発電所のほとんどは、TMI事故後に許可されたものなので、この事故が米国の原子力産業にとって終末を告げたわけではなかった。
 TMI事故後の規制強化や原発向け政府債務保証枠の設定といった政策対応もあり、2007年以降は新規建設許可が相次いだ。直近の新設は、昨年秋に竣工したワッツバー2号機(テネシー州)。
 事業者は、TMI事故、チェルノブイリ事故(1986年)、9.11テロ(2001年)から多くを学び、その教訓を反映させているからこそ原発はより安全になっている等々、安全対策の改善点に焦点を当てた説明をするようになった。
 TMI事故後に米国内の全ての原発を停止したということはない。米国では、事故を起こしていない原発を強制的に停止させたり、再稼働を認めないような運用はしていない。
 (3)化石燃料が豊富な米国で、原発が推進される理由は?
 原発の魅力は、低廉安定供給が可能なベースロード電源であること。初期投資はかかるが中長期的な運転資金はそれほどかからない。完全に市場原理に委ねると、天然ガスなどとの競争上厳しくなる。それは電源構成上も好ましくない。
 天然ガス価格は、今は安いが昔は違った。長期的には価格は降下するだろう。歴史から学ぶとそうなる。天然ガス一辺倒にならないためにも、原子力は一定比率を維持しておくべきだ。
 (4)原子力規制委(NRC)の人事は、どう決まるのか?
 NRCの委員は5名で、人事権を持っているのは大統領と上院。NRCの任務に見合った専門性を持った者を選ぶことになっている。
 政治的には、委員5名のうち、同じ政党出身者は3名までとされている。実際には、共和党系2名、民主党系2名、独立系1名というように、超党派的な構成で『人事ベストミックス』になるようにしている。
 以上の4点を総合的に踏まえると、日本が学ぶべきは、(1)原子力規制委員会の人事構成は政治的に均衡させること、(2)事故炉以外の原子炉は早期に正常稼働させること、(3)“原発ゴミの最終処分”は中間貯蔵期間も含めて超長期的視野で考えること・・・となるはずだ。これは、日本へのとても意義高い示唆である。

2017年5月1日号 週刊「世界と日本」第2100号 より

エネルギー座談会

これからの原子力・エネルギー政策

 

鼎 談

ジャーナリスト (公財)国家基本問題研究所理事長  櫻井 よしこ 氏
東京工業大学助教 工学博士  澤田 哲生 氏
政治ジャーナリスト 千葉工業大学理事  細川 珠生 氏

左から細川珠生氏、櫻井よしこ氏、澤田哲生氏
左から細川珠生氏、櫻井よしこ氏、澤田哲生氏

《さくらい・よしこ》

ベトナム生まれ。ハワイ大学歴史学部卒。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスターを経て現在、(公財)国家基本問題研究所理事長。インターネット配信の言論テレビ主宰。『凛たる国家へ 日本よ、決意せよ』(ダイヤモンド社)など著書多数。

《さわだ・てつお》

1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。

《ほそかわ・たまお》

平成3年、聖心女子大学卒。平成7年に『娘のいいぶん〜がんこ親父にうまく育てられる法』で、日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。平成7年より「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本)に出演中。千葉工業大学理事。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。

櫻井 メディアは「反対」より正情報を
澤田 専門家は「原発メリット」発信を
細川 老朽化「火力発電所」の対策も

澤田 「最終処分場」は技術的に可能だ
櫻井 「福島出身」政治家は命をかけて
細川 「エネルギー教育」を義務教育に

 内外ニュース「創業45周年記念特集号」の第2弾企画として、「エネルギー座談会」を実施した。日本は今、東日本大震災以降、原子力発電やエネルギー自給率の大幅低下など、さまざまなエネルギー問題に直面している。今回は「これからの原子力・エネルギー政策について」と題し、このような状況をどう捉え、どのような解決を目指していくべきかについて、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と、原子核工学の研究者で東京工業大学助教の澤田哲生氏、さらに政治ジャーナリストの細川珠生氏を迎え、忌憚なき意見交換の鼎談を行った。

 澤田 日本では今、原子力は、後ろ向きの産業になっていますが、中国では「3.11」以降、20基から30基の原発の新設、そして韓国でも新設しており、世界的にはそういう動きがあります。日本は原発先進国として、貢献していかなければならないですね。

 櫻井 世界最大の石油備蓄のあるサウジアラビアでも、いずれ石油の時代ではなくなることを考え、原子力で国のエネルギーをまかなっていくために、日本の原発技術を導入したいと考えています。日本は原発に対し、どうしてこんな後ろ向きのメンタリティーになるのでしょうか。

 細川 日本の原子力技術は、国家としてお金を稼げるし、優れた人材・能力もあり、それらを寝かしておくのは宝の持ち腐れですよ。

 澤田 それは原発のポジティブな面が、あまり伝えられていないからです。原発は一つの悪の塊のように言われているので、将来、どういうところにつながっていくか、という話がされていないのです。

 櫻井 日本では安全と安心が、ごちゃ混ぜになっています。科学的に見て安全というのと、人々が安心を感じるのは別だと思うのですが、そこのところが混乱している。科学的な知見が欠けているのです。

 澤田 メディア、特にテレビが不安を煽っているように思います。関心が集まり、視聴率が取れる、ということで。

 細川 今稼働している火力発電所についても、あまり語られていません。実際に火力発電所は老朽化し、あちこち修繕しながら稼働しているようですが、これでは、いつ大規模な事故が起こるかわからないです。

 澤田 東南海地震が起こって津波がくると、火力発電所は無防備ですから、とたんに全部使えなくなる可能性が高いです。現在使用している電気のうち、火力発電が8、9割を占めているので、そうなると電気はなくなります。もう一つ、火力発電の問題は、燃料をどんどん継ぎ足さないといけないことで、石油を大型タンカーで運んできても、1つの発電所で、たった2、3日で使ってしまうわけです。

 一方、原子力発電所は、いったん燃料を入れると、少なくとも1年、さらに数年は、そのままで使えるだけのエネルギーをリザーブできる施設です。さらに核燃料サイクル、つまり新しい燃料プルトニウムをつくるという、非常に有り難い面もあります。

 しかし現在は、原子力の怖い面ばかりが強調されて、メリット、特に日本のような資源小国では、どういう長期的な視点でメリットがあるかが、ほとんど語られていないし、人々も聞く耳を持たない状況になっています。これは我々専門家の責任でもあります。

 櫻井 NHKなどの大きな影響力を持つメディアが、澤田先生のような、きちんとした考え方を伝えていない。非情に大きな責任があります。

 また、今の原子力にとって不幸なことは、メディアが「反原発」ということで、頭から否定する論調を報じることに加え、原子力規制委員会の委員らが民主党政権によって選ばれ、原発を潰すという考えの下に各原発に対し、非合理極まる対策を要求していることです。結果、原発の稼働は遅々として進まない。

 澤田 話は変わりますが、お二人は原発の現場をご覧になっていますよね。

 櫻井 随分いろいろな現場に行き、取材しました。

 細川 現場がずっと工事をしているのを見ると、何か悲しくなりますよね。

 澤田 現場の工事ですが、何とかゴールが見えてくると、次にまたハードルが出てくるのです。その結果、追加的安全措置対策の多くは、次にいつ起こるかわからない重大事故対策なので、使わない機器ばかりが増え、しかも数千億以上も投資していて、こんなバカなことはありません。

 細川 安全対策の工事にものすごくエネルギーが取られていて、本来はより安全に運用していくために、知恵を絞っていかなければならないのに、研究者も事業者もなかなかその方向にいかない。

 澤田 まして追加安全対策工事が10年も続いたら、やる気が失せますよ。どこにいっても最新の設備など、素晴らしいものがありますが、それをいつ動かせるかわからない状況にしているわけで、これはメンタル的に疲れますね。

 櫻井 その一番の例が「もんじゅ」だと思います。私はもんじゅのことをよく勉強していなかった時は、「どうして失敗ばかりするのかしら」と思っていました。しかし現場を取材して、当事者の話を聞いてみると、いかに不条理な非難を浴びているか、わかりました。もんじゅは、日本の非科学の極致で潰されていった組織ではないかと思うのです。

 細川 原発の稼働がなかなか進んでいない理由の一つに、原発の廃棄物をどうするのかということとセットにされ、「最終処分場がないからダメだ」と言われますが、そういうことに対して、どのように説得していったらいいと思われますか。

 櫻井 日本は使用済み核燃料を大量に持っていますが、これをどんどん核燃料サイクルで処理すれば、その分量が7分の1になるだけでもすごいことだと思います。こういった前向きの側面をわかりやすく伝えていくことです。

 細川 最終処分場との関連でいうと、どのような論理を展開すれば、原発反対の人に対抗できるのでしょうか。

 澤田 最終処分場を日本でつくることは、技術的には可能なのです。ただ、技術者たちが、一般の人に広く伝えるノウハウを持っていないことが、非常に大きい。日本はだいたい300メートルも地下を掘ると、火山の近くとか、活断層の近くを排除しても残るところ、つまり、科学的有望地とされる箇所が、日本には結構あります。

 櫻井 日本人のイメージとして、最終処分場や貯蓄場は日本にはないという思い込みがすごく強いと思います。今のお話ですと、日本にもあるんだったら、それがどこか知りたいと思いますが。

 澤田 科学的有望地を提示すると、反対運動が起きるとか、大手のメディアが政治的イシューにしかねないので、発表する良いタイミングを見計らっていて、それでどんどん先延ばしになっているのだと思います。

 櫻井 しかし、日本には「最終処分場がない」ところから話が始まるのと、日本には「いくつもあるが、政治的にどう克服しようか」では、話の土台が全然違います。であれば、可能なことから出発しないといけないわけで、澤田さんたち専門家が、どんどん発表していただきたいですね。

 澤田 だから私は一般の方とか、中学生や高校生にそういう話をする機会がある時には伝えています。「技術はあります、場所もありますよ」と言うと、みんな「えっ?」、「そんな話は聞いていない」と言うのですよ。

 細川 例えばどんな場所があるのですか。

 澤田 日本全国にあります。北海道の幌延や岐阜県の瑞浪で、試験的に300メートルや500メートル掘り進んで、そこの地盤がどうなっているか調べています。

 ただし使用済み核燃料で、再処理した後の最終処分用のガラス固化体みたいなものは、おそらく六ヶ所村で作って、船で運ぶのが一番現実的なので、沿岸部から穴を掘って地中深くの底につくるのがいいと思います。

 細川 六ヶ所村を見るだけでも、日本ってすごいなと思います。あのリサイクル技術や国家石油備蓄基地、風車などのエネルギー集積地もあり、それを本格稼働させられないというのは、努力したことが無駄になってしまいます。

 そういうことも、実際に現地に行かないとわからないですし、メディアもさることながら、事業所の発信力に問題があると思います。それに加え、そもそも一般の人たちが、エネルギー全般に関して学ぶ機会がなかったことが一番大きな問題ではないでしょうか。エネルギーの専門家が努力してきたことを、義務教育の中で教える機会が必要です。

 澤田 おっしゃる通りで、私は義務教育の中ではありませんが、岐阜県瑞浪の最終処分場の試験施設を、六ヶ所村と都会の中学生が一緒に見て、そこで対話をしましょうということをやっています。

 六ヶ所村の中学生たちは、自分の村がエネルギー問題を引き受けていることに誇りをもっていますが、都会の中学生は六ヶ所村がどういう所で、何をしているのか知りません。そこで、日本のエネルギー問題については、中学生や高校生などの、まだ自分の立場が決まっていない人たちが考え、現場を見ておくことは、日本の将来にとって非常にいいと思います。

 櫻井 そういう中学生同士の交流を、見てみたいですね。

 細川 そうなのです。これからの小学生や中学生が原子力に関心を持つためには、ぜひ義務教育の中に、原子力を含めたエネルギー教育を入れていってほしいですね。

 澤田 ただし、教育の現場はすごくセンシティブなところがあります。よく言われるのは、「3.11」が起こった時、ほとんどの人が放射能とは何かを知らなかった。それは30年間、学校教育の現場から放射能教育がなくなっていたからで、この空白が「放射能はとにかく怖いのだ、どんなに微量であっても怖いのだ」という、放射能恐怖症を蔓延させてきたのです。

 細川 最後に、原子力に関する情報発信として、どのような方法がいいと思われますか。

 澤田 今、安倍首相がニコニコ動画などに積極的に出ておられます。原子力問題もネットを利用して情報発信すると、割りにポジティブな反応が多いので、それも一つの方法です。

 もう一つ大切なことは、情報は発信するだけでなく、どこにどういう情報が埋もれているのかを見つけ出してあげることですが、それがなかなか難しい。

 櫻井 加えて、与野党ともに福島出身の政治家なら、ここで命をかけて走り回って、勉強し、どうしたらもう一度、原子力とともに、ふるさとを立て直せるか行動してほしいのに、ただ、メディア任せ、世論任せの態度が、私は本当に残念です。

 政治家なら選挙を気にせざるを得ないことはわかりますが、そこを越えてもう少し中長期の考えを持ってほしいです。そして一方、有権者である私たちも、問題の本質、基本をきちんと見ていかないといけない。目の前のことで右往左往し、ポピュリズムになってしまいますが、そういう国民であってはいけないと思います。

 細川 たしかに私たち国民としても、正しい科学的知見を持ち、問題の本質を見ていく必要がありますね。今日はどうもありがとうございました。


2016年8月15日号 週刊「世界と日本」第2083号 より

国論を二分する難題に答えを・・・

中高生に「リスクダイアローグ」を実体験

 

東京工業大学助教 工学博士 澤田 哲生 氏

《さわだ・てつお》 1957年兵庫県生まれ。京都大学理学部物理学科卒業後、三菱総合研究所に入社。ドイツ・カールスルーエ研究所客員研究員などを得て、91年から現職。中・高校生向け講座も多く開催。専門は原子核工学、核融合システム安全など。著書は『御用学者と呼ばれて』など多数。


 7月の参議院選で18歳からの投票権がわが国で初めて実施された。私は我が家の18歳男子と一緒に投票所に出向いた。そして、今度は東京都知事戦である。街頭のポスターを見ても選挙公報を読んでも、全くもってピンとこないという。

 そういった場合は、主張が最も近い人に投じるのが良いのではと勧めるも、18歳の不満は「争点をぼかしていてまともな政策論争など戦わせていない。誰が真摯に若者世代のことを考えてくれるのかわからない」と言う。

 安保法制や原発のように国論を二分するような問題に、どのようにして主権者意識をもち、感情論ではなく理性をもって議論し、判断する方法はないのか?

 私自身、そのことを3.11前から模索してきた。そして、科学者のみならず科学への信頼が失墜した3.11以降、ますますその思いを強くしている。私の思いを後押ししてくれた出来事が2つあった。

 1つめは、2014年の年初に、京都、福井、新潟、横浜の中学生総勢約20名が岐阜県瑞浪市の超深地層研究所に集まって、「中学生サミット」を開催した。

 高レベル放射性廃棄物の地層処分について、研究施設の地下300メートルの坑道を見学し、処分方法を座学で学び、処分の問題点をめぐって討論を実施した。

 私や中学校の先生方は、メンター(指導)役に徹して、できるだけ中学生が工夫企画して、どこまで討論ができるか―という実践的な試みだった。

 結果は、中学生の中から自発的にファシリテーター(進行役)が出現し、生徒たちは賛成派・反対派に分かれて討論を行った。課題は、相手を言い負かすのではなく、相手がどういうような思考を持っているのか、またその底にある想いは何か―に触れること。

 つまり自分と他者の「心(マインド)に触れる」ことだった。結果は、それぞれがそれぞれの知識とマインドをもって、相手が何をどのように考えているのかに興味をもって模索し始めた。

 討論を終えた生徒が発したことは、「学校ではない経験をした」「とても楽しかった」「相手が何をどう考えているかが少しわかってきた」などなど。討論を終えて解散し、出身地に帰る姿は清々しく見えた。

 もう1つは、2014年の春に、首都圏の中高生と先生方総勢40数名で、浜岡原子力発電所を見学した。原発は日々のニュースで嫌というほど耳にしているが、実物を目にするのは皆初めてだった。見学を終えた、帰りのバスの中は大盛り上がり。そんななか、みんなの率直な感想を言い合おうではないかとなった。とても印象深い意見が2つあった。

 U高校2年女子生徒K「お爺さんは、原子力には反対でデモにも行っています。お母さんはちゃんとした意見を持っています。福島第一原発事故が起きたことと、対策が十分でなかったことを批判しています。お父さんもいろいろ言っています。私は今日、自分がこの目で見たことを帰ってから家族と一緒に話し合いたいと思います」

 J高校2年女子生徒B「原発があることで、事故への不安や、後処理の問題などのデメリットもあるが、一方で職を生み、日本の主要電力でもある。きっと多くの日本人が、原発がある方がいいのか、ない方がいいのか分からないと答えると思う。それは“どちらか分からない”ではなく“どうすればいいか分からない”という、もっと根源的な所だと思う。今回、原発を実際に見て、そのように考える切っ掛けになったことが一番の収穫だった」

 これらのことから私が想念したことは、(1)中高生でも主権者意識を持って考え討議する枠組みは作れないか、(2)世代や立場を超えて語る方法はないか、(3)自他のマインドの、より深い所に触れあう方法はないか、であった。

 その結果、1つの試みとして「リスクダイアローグ(リスク対話)」という方法を編み出した。この方法は至って簡便である。リスクをイメージするカードを20数枚程度用意する。そして、その中から例えば自分の関心の高いカードを8枚ほど選ぶ(例えば、原発、里山、温泉、原爆、風車、電気、放射線等々)。

リスク認識マップの比較例─ 隣同士で全く異なる結果にまず驚く
リスク認識マップの比較例─ 隣同士で全く異なる結果にまず驚く

 それを2次元平面に並べて「リスク認識マップ」(※写真参照)を作る。縦軸はリスクの高低、横軸は価値の大小である。これを他者と比較して、イメージを選んだ理由や、リスクや価値の位置付けについて、対話をするのである。

 ポイントは、此彼(これかれ)の認識の違いを認識すること、先入観を排して相手の位置付けとその背景にある理性や論理、つまりロゴス(logos)に触れて受け入れる。こうすることで、他者を鏡として自己を映し見ることが可能になってくる。世阿弥の言う『離見の見』である。

 そうした他者とのやり取りの中で、最初に持っていた自分のリスク認識マップは柔軟に変えていける。同時に、事実に根ざした知識の獲得に極めて積極的になる。

 このリスクダイアローグの手法は、これまでに全国の10校程度、総計約200名の生徒に体験してもらった。聞かれた声には、「こういうのは今まで学校ではなかった」「とっても楽しい」というものが少なくなかった。

 その一方で、対話の中で認識マップをフレキシブルに変えていける者とそうでない者がある。そこにある種の特徴があることも分かった。

 ひとまずリスクダイアローグの有用性を確認した今、次の関心は、『離見の見』を実践しながら、グループで叡智を出し合って、つまり集合知を活かして、何か1つの答えを編み出すための方法はないかということである。

 中高生というまだ価値観が固着していないうちに、自己の認識を省みる胆力と、他者との交わりの中で叡智を活かすスキルを身につけておけば、実社会において国論を二分するような難題においても、ロゴスをもって主権を発揮できるようになるのではないかと実感している。

2016年5月2日号 週刊「世界と日本」第2076号 より

電力自由化

変貌するエネルギー業界

 

ガスエネルギー新聞編集長 今井 伸 氏

《いまい・しん》 1973年毎日新聞社入社。主に経済分野を取材。『週刊エコノミスト』編集長、論説委員を務めた後、早期退職。2004年から天然ガス・都市ガスの専門新聞である「ガスエネルギー新聞」の編集長。


 4月1日、電力小売市場が全面自由化された。さっそく、都市ガス、LPガス、石油などのエネルギー業界や、エネルギーに直接関係のない通信、鉄道、物販などの業界から多数の企業が新規参入した。3月末時点で、経済産業省の小売電気事業者の登録は266社に上った。これらすべての企業が直ちに電力販売を開始するわけではないが、有力視される大手は1月ごろから、テレビCMや街頭での宣伝など活発な営業活動を行ってきた。

 自由化初日の4月1日までに全国で52万件の需要家(ユーザー)が、購入先を既存電力会社から新電力などに切り替えた。大手電力会社9社(沖縄電力を含めると10社)による独占の時代は終わり、新旧・大小の勢力が入り混じってしのぎを削る競争時代に突入した。

 来年4月には、同じように都市ガス小売市場の全面自由化が予定されている。その時に都市ガス会社が電力を売り、電力会社がガスを売る相互参入が始まる。エネルギー業界の壁を越えた競争が激化するほか、「電力対電力」「ガス対ガス」という規制時代には見られなかった、業界内競争も本格化することが予想される。

 戦後60年にわたって規制の壁に守られてきたエネルギー業界は、一転して競争の時代に突入し、大きく変貌しようとしている。わが国ではこれまで、段階的に3回の電力自由化が行われてきた。4回目となる今回の自由化により、すべての市場が自由化されたので「全面自由化」と呼ばれる。

 第1段階の2000年3月には、大規模工場などの需要家を対象にした市場が、第2段階の04年4月には中規模工場、第3段階の05年4月には小規模工場・スーパー・中小ビルなどの需要家を対象にした市場が自由化された。

 この時点で電力全体の62%が自由化された。そして今回、第4段階として残されていたコンビニ・町工場・家庭などを想定した小口の市場が自由化された。

 全面自由化はまだ先のことと思われていたが、5年前の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所事故で、わが国の電力供給システムの限界や脆弱性が明らかになったことなどから、電力供給システムについて、自由化を含め抜本的に改革しようという機運が一気に高まった。

 政府は議論のスタートにあたって、改革の目的を「安定供給を確保する」「電気料金を最大限抑制する」「需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する」の3点とした。これを受け、学識者からなる「電力システム改革専門委員会」は2013年2月、(1)広域的な送電線運用の拡大、(2)小売りの全面自由化、(3)法的分離による送配電部門の中立性の一層の確保―という3本柱の改革案を打ち出した。

 自由化は、電力システム改革の(非常に重要ではあるが)一部という位置づけで行われた。都市ガスについては、過去、電力と歩調を合わせて段階的に自由化を進めてきた経緯もあり、電力自由化の1年後の2017年4月から全面自由化すると決まった。

 電力の小売全面自由化により、小売電気事業者に登録すれば誰でも電気の小売市場に参入でき、全てのユーザーは自分が好きな電力会社から、いろいろ工夫された料金メニューに基づいて電気を買えるようになった。

 今回自由化されたコンビニ・町工場・家庭向け小口市場の規模は8兆円と言われる。さらにすでに自由化されていた大口・中口の市場規模は18兆円とされる。

 大口・中口については、自由化されてかなりの時間が経過しているが、新規参入者のシェアは5%以下であり、特に10の電力会社の地域を超えた競争は全く起こっていなかった。

 しかし、今回の全面自由化を契機に、すでに自由化されていた大口・中口市場も含め、大手電力会社の地域を超えた競争、つまり「電力対電力」の本当の競争がいよいよ始まることになりそうだ。

 電力会社にとっての電力自由化はまず、他エネルギーあるいは異業種からの新規参入者に対する防衛戦として始まった。新規参入者の料金メニューに対抗して新しい料金メニューを打ち出した。会員制ポータルサイトを立ち上げたり、エネルギー以外の家庭向けサービスを開始したりして、顧客の囲い込みを始めた。

 電力会社の弱点は、都市ガス会社が保安や器具点検などで日常的に家庭の台所まで入れるような顧客接点を持っていないことである。そのため、東京電力は複数の営業力の強いLPガス会社と提携した。

 新規参入者の中で最も勢いがあるのが都市ガス業界だ。52万件に達した既存電力会社からの切り替え件数の約半数は都市ガス会社が獲得したようだ。

 都市ガス会社の戦略は、顧客接点の強さを生かし、電気とガスをセットで安く提供することだ。また、地元自治体と協力して新電力を設立し、再生可能エネルギーとガスを組み合わせて売ったり、エネルギーの地産地消、地域活性化に挑戦する地方ガス会社もある。

 ガス会社は全国に206社ある。10社に集約された電力業界と最も異なる点だ。公営企業もあれば年商3億円程度の小規模企業も多い。1年後、ガスの自由化が実施されれば、巨大な電力業界や異業種からのガス市場への新規参入が始まる。東京ガスや大阪ガスといった大手は十分にそれらと対抗できるが、中小のガス会社は厳しい現実に向き合うことになる。

 このため、業界団体の日本ガス協会は自由化が決まった一昨年から「総合エネルギー企業への進化」を合言葉に、地方ガス会社の生き残り策を模索している。ガスのほか電気などのエネルギーはもちろん、リフォームなど住宅関連サービス、家事サービス、高齢者向け事業など、あらゆる家庭向けサービスを手掛けようとしている。

 諸外国ではエネルギー自由化後、数社の強大な「電力ガス会社」への集約が起きた。日本では、大都市圏は厳しい競争が予想されるが、地方においては、地域から絶大な信頼を受けている地方ガス会社が総合事業化を進めつつ、行政と協力しながらエネルギーの地産地消を通じ、地域活性化の一翼を担っていく可能性は決して小さくない。

2015年8月3日号 週刊「世界と日本」第2058号 より

原子力問題

総合的な解決に向けて・・・

 

21世紀政策研究所研究主幹 国際環境経済研究所所長  澤 昭裕 氏

 先日、2030年のエネルギーミックスや電源構成に関する政府案が決定された。電源構成で言えば、原子力は20〜22%、再生可能エネルギーが22〜24%、残りの56%がLNG、石炭、石油などの化石燃料火力発電が、あるべき姿とされている。

大きな曲がり角の原子力政策

 電源構成は、次の3つの政策目標を達成するために、必要な割合として算出されている。

 第1に、エネルギーの安全保障を確保するために、自給率を約25%程度まで高める。

 第2に、電力コストを現状以下に抑制する。

 第3に、温暖化対策に必要な温室効果削減の努力が、欧米諸国に比べて遜色がないようにする。

 この電源構成の決め方に当たっては、当然ながら将来の原子力の比率がどうなるのかに注目が集まった。特に、安倍政権は原子力の再稼働は決めているが、中長期的な原子力への依存度低下を目指すことを公約としていたからである。

 東京電力福島第1原子力発電所(1F)の、事故以前の原子力割合約30%弱に比べると、今回の20〜22%という数値は確かに低減している。しかし、脱原発を主張している人たちの評価は、その低減の程度が生ぬるいものに止まっているという厳しいものだ。

 一方、原子力は中長期的にも日本のエネルギー政策上欠くべからざる電源だ、と考えている人たちにとっては、逆に、この割合にまで低下させるとなれば、今後の原子力の人材や技術の維持にとって相当厳しい状況になってしまう、という強い懸念が表明されている。

 実は、今回のエネルギーミックスや電源構成については、昨年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画を実行するための、定量的な裏付けという意味以上のものではなく、今年末に行われる温暖化交渉国際会議(COP21)を前にした、日本の削減目標の提示のために必要な作業という新たな側面はあるものの、基本的に大きな政策の変更を伴うものではない。

 したがって、エネルギー基本計画では決定されなかった原子炉の新設やリプレースといった問題は、今回の検討対象となっておらず、そもそも今回のエネルギーミックスの目標値はその範囲内で、上述の3つの政策目標を達成しうる構成が探索されたもの、という位置付けなのである。

 では、原子力の中長期的な問題については、いつどういう形で抜本的な検討が行われるのだろうか。それは、次回のエネルギー基本計画の見直しの時期に向けて、というのが正しい答えだろう。

 意外に知られていないが、エネルギー基本計画はエネルギー政策基本法第12条第5項に基づき、少なくとも3年ごとに見直しの検討を加えることが政府に義務付けられているのだ。昨年4月に決定された現行のエネルギー基本計画は、あと2年弱でまた見直される予定だということである。

 次のエネルギー基本計画の見直しでは、さすがに原子力についての新設・リプレース問題を含む、さまざまな課題を先送りするわけにはいかない。特に、高経年化が進む日本の原子力発電所の状況を考慮し、運転開始までのリードタイムを考えると、新設・リプレース問題についての判断は2年後には、もう待ったなしの状態になっている。

 あと2年というと、行政のスケジュールから言えばほんの「短期」でしかない。現行の基本計画は、総合資源エネルギー調査会の原案が提示された後、政府や与党内部の調整プロセスに半年弱かかっている。次回の見直しに当たっても、同様のプロセスを経るとすれば、実は、実質的な議論を深く行い、持続可能な新たな政策方針を編み出していくために残されている時間は意外に短いのだ。長くみても1年半程度しかないだろう。

 原子力の中長期的政策について、その間に議論して、一定の方向性と具体的施策を打ち出していくためには、次のような課題を検討対象にしておく必要がある。

 [1](新設・リプレースに前向きになるならば)電力自由化の総括原価主義による、料金規制の撤廃によって困難になる、初期ファイナンス問題の解決策。

 [2]核燃料サイクル政策に関する、官民の役割分担と費用回収の仕組みの構築。

 [3]原子力安全規制の合理化と、1F事故の教訓の国内外への普及。

 [4]原子力損害賠償法における、官民のリスク分担や事故時のコミュニティ再建策の検討。

 [5]最終処分地選定に関する、新手法(国が科学的有望値を示す)の効果の評価。

 [6]原子力技術に関する研究・技術開発体制、予算のあり方に関する考え方の整理と実施。

 [7]原子力関連インフラ輸出戦略の検討。

 [8]原子力人材の維持・育成についての、組織体制及びプログラムの確立、等々である。

 従来であれば、原子力委員会が中心となって、原子力利用に関する長期計画や大綱的なものをまとめてきた。しかし、1F事故後に、原子力委員会の権限と責任が大幅に縮小された現在となっては、別の検討体制を組む必要がある。

 基本的には経済産業省が中心になって、上記の各課題を検討していくべきだろうが、現在経済産業省には、原子力事業に関する法的なツールは存在せず、「担当だから」という理由だけで行政を行ってきている。

 この際、原子力の将来について考えるため、経済産業省や現在の原子力委員会が共同事務局となって、内閣官房に検討組織を設置し、原子力基本法から以下の法的な体系や原子力事業に関する、実施体制の見直し作業を実施してはどうだろうか。

 検討メンバーとして、これまでの原子力コミュニティの範囲にとどまらず、電力ユーザーであり、かつ産業保安でも共通の課題を有している、別の産業界からの経営者や研究・技術開発マネジメントに実績のある有識者、さらには世界の安全規制や原子力事業に詳しい、海外からのメンバーなどを集めて、原子力政策の基本的なあり方について議論してもらうことが重要だ。

 政府で音頭をとるのが難しければ、民間に「原子力政策臨調」を組織して、こうした課題に総合的な検討を加える体制を組むことも考えられる。

 いずれにせよ、原子力政策は大きな曲がり角に差し掛かっている。そろそろ、これまでのように諸課題を個別に処理するのではなく、相互の関連性を考慮しつつ総合的な政策を打ち出さなければ、原子力の未来はないというポイントまで来ているという認識が重要だ。


2015年4月6日号 週刊「世界と日本」第2050号 より

国家戦略のエネルギー政策を

戦略的重要性を持つ原子力発電

 

21世紀政策研究所研究主幹 国際環境経済研究所所長  澤 昭裕 氏

 主要な先進国はエネルギーを、国家と国民の生存と繁栄の糧と考えている。そして、軍事、政治、経済の諸側面での自国の影響力と存在感を維持すべく、どのようなエネルギー技術やシステムに戦略的に投資していくかに知恵を絞っている。果たして日本はどうか。本稿ではその実情を探ってみた。

主要国のエネルギー政策

 エネルギー政策の根幹は安全保障だ。国家共同体の完成形に近いEUだが、エネルギー政策については各国とも、政策決定権限をEUに委譲してこなかった。

 EUは、温暖化対策に力を入れている面ばかりが強調されるが、ここ最近はエネルギー安全保障の意識を急速に強めている。もちろん、引き金はウクライナ情勢だ。ウクライナ問題に関して、ロシアが天然ガス供給をテコに揺さぶりをかけてきている。

 こうした攻勢に対して、EUは「エネルギー同盟」構想を打ち出し、域内の天然ガス市場統合や融通、共同調達の可能性などを視野に入れ始めている。

 EUは47%の自給率を保ちつつも、これ以上のエネルギー対外依存度を高めなくても済むよう、原子力への新設や維持、再生可能エネルギー導入のための送電線網の整備など、戦略的な投資を進めようとしている。

 逆にロシアは、天然ガスや原子力技術の輸出をテコとして、旧東欧諸国への政治的影響力を行使する一方、アジアでは、原発が止まっている日本や、今後エネルギー需要が増大する中国に対しても、資源開発やエネルギー供給の話を持ちかけ、政治経済両面での戦略的な動きを絶やさない。

 中国は、資源開発・調達力を武器に、アフリカ諸国や東南アジア等、他の途上国の意思を左右してきたうえに、最近ではロシアに倣って原子力産業を国家的に育成し、成長のためには電力を必要とする、有力途上国にアクセスしようと試みようとしている。

 これまでは日本とのつながりが強かった豪州も、中国の調達量の多さになびき始めており、アジア太平洋地域のバランスの変化が加速しようとしている。

 また米国は、シェールガスの恩恵をフルに活用し、エネルギーの対外依存度を低下させて、外交的な自由度を確保する戦略をとっていることは明らかだ。

 さらに、石炭から天然ガスへの燃料移行が容易になって、自国の排出削減に一定の見込みが立つようになったことから、気候変動国際交渉でもリード役となることができる状況を最大限に活用。

 中国を含めて、関係各国にも排出削減を要請し始めており、温暖化対策による自国産業の相対的な競争力への影響を、最小化する狙いを持った交渉戦略を遂行している。


日本のエネルギー政策と政治課題

 振り返って、日本のエネルギー政策を巡る議論の実情はどうか。

 福島第1原発事故によるショックから覚めやらず、太陽光や風力といった、いわゆる「グリーン」なエネルギーに夢を託すといっただけの、「戦略」も何もない議論に陥っていないか。

 そのような問題意識しかない中では、原発が何%になろうが、再エネが何%になろうが、諸外国から見れば、日本は先進国の仲間からとうとう落ちこぼれてしまったなという印象しか持てない。

 今の安倍政権の歴史的使命は、長く続いたデフレの真っ最中に、東日本大震災によって大きな打撃を受けた日本経済の活力を取り戻すとともに、日本の技術力や経済力、そして国家経営力に、国民全体が自信と誇りを取り戻すことにある。

 なかんずく原子力は、技術自体の複雑性や先端性から戦略的重要性を持っている。ゆえに、原子力をエネルギー戦略にどう組み込み、それを安倍政権の政治課題とどう結びつけていくかが問われているのだ。

 安倍政権の政治課題で最も重要なのは、アベノミクスの成就である。そのためには、今後のエネルギー政策は、安定供給とコストを最も重視したものとなっていなければならない。「原子力依存度低下」は既定路線ではあるが、原子力を電源のオプションから外してしまうことは望ましい選択ではない。


再生可能エネルギー増加に伴う問題

 日本のような構造的エネルギーの脆弱性を有する国は、すべてのオプションを維持しておくことにより、全体的なエネルギー危機のリスクを最小化できるのだ。

 再生可能エネルギーだけを増加させても、それは全体の脆弱性をより深刻な状態に置くだけになる。その理由の第1は、「再エネ一国主義」は不可能だからだ。特に風力や太陽光といった、お天気まかせの発電設備で生まれる電気は、往々にして需要を上回る余剰電力を発生させる。余剰電力は系統運用を乱す厄介者だ。

 ドイツでは、自国内の送電線建設計画が、住民の反対などでほとんど進捗していないため、北欧や東欧各国に余剰電力を「捨てて」いる。これができるのも、ドイツが隣国と送電線で連系されているからである。

 ドイツではすでに、国内発電量の4分の1を超える部分が再エネによるものとなっており、これ以上の拡大は難しいということで、ノルウェーとの送電線敷設計画に期待をかけている。しかし、欧州全体の系統運用を司る機関や、ドイツの隣国の間では、流入する余剰電力に頭を痛めており、ドイツに自国内での処理を促している。

 第2に、不安定な再エネを増やせば増やすほど、その発電量の変動を吸収するための、調整電源が必要になってくることも問題だ。

 ドイツでは、再エネ発電量が増えるにしたがって、天然ガスや石炭火力の稼働率が落ちて採算性が悪化したため、電力会社が撤退の意向を示し始めている。しかし、本当に撤退されてしまうと、例えば風が吹かないときに、風力発電の穴を埋める電源がなくなってしまい、停電の危機が訪れる。

 こうした問題を解決するため、ドイツ政府は、大手電力会社が勝手に火力から撤退しないよう法的に規制したり、電源維持で生じる損失を補助金で埋めるといった措置までとり始めているのだ。

 調整電源で生き残っているのは最も安い褐炭火力であるが、この電源はCO2を大量に排出する。ドイツでは再エネをこれだけ増やしたにもかかわらず、CO2がむしろ増加した年もある。

 第3に、経済的負担の増加だ。

 ドイツもスペインも、固定価格買取制度を導入して再エネを増やした。特に太陽光には、高すぎる買取価格を設定した。そのため投資が集中してしまい、結果として電気料金が大きく上昇。今や、産業界のみならず消費者からも、コスト無視の再エネ導入に対しては厳しい批判が寄せられ、両国とも固定価格買取制度を廃止し、市場での競争に晒す仕組みに変更した。

 ドイツは「脱原発」を決めたことばかりが強調されるが、実はまだ9基も原発稼働中だ。これ以上電気料金が上昇すれば、日米との産業競争力の格差が広がることを懸念しているからだ。ドイツ企業が払っている再エネ賦課金は、米国企業が払っている電気料金全額に等しいと言われる。

 メルケル首相が訪日時に、日本も脱原発に転向するよう働きかけたと報道されたが、こうした自国の産業競争力の低下懸念がその背景にあるのだ。


経済戦略としてのエネルギーコストの最小化

 エネルギー政策を経済戦略として捉えることは極めて重要だ。アベノミクスは、経常収支が赤字構造のままでは、財政赤字との双子の赤字を抱えることになり、市場の信頼を失いかねない瀬戸際にある。

 野田政権時、大飯原発の再稼働を決めた次の日、LNG(液化天然ガス)のスポット輸入価格が急落した。市場も産ガス国も、日本のエネルギー政策の動きを監視しているのだ。

 化石燃料費増や再エネ賦課金による電気料金の続騰は、中小企業も直撃している。このままでは、地方創生も夢のまた夢ということになってしまうだろう。原発の再稼働は、マクロ経済や成長戦略と表裏一体なのである。

 経済戦略としてのエネルギー政策は、電気料金を始めとするエネルギーコストを最小化することにある。

 そのためには、第1に原発再稼働、第2に固定価格買取制度の即刻廃止と再エネの市場統合化が必要だ。特に、今の固定価格買取制度のまま、再エネ導入を漫然と進めていけば、総費用は80兆円以上にもなる(電力中央研究所試算)と懸念されているからである。

 第3に、固定価格買取制度によってこれまで再エネ事業者に過剰に移転された、電力ユーザー(産業、消費者)の富の再移転である。

 高額の買取価格で想定されていた設備費と、実際に調達した設備費の差分は、再エネ事業者の棚ぼた利益である。この利益に逆賦課金を課して、それを財源に国際競争に晒されている産業界への減免措置を拡大したり、低所得者層への交付金に当てる。

 スペインでは、買取価格の低下を遡及適用し、国民負担の増加を抑制しようという荒療治を始めている。それほど再エネにかかる費用の増加は深刻なのである。

 また、再エネ導入はもともと「脱原発」ではなく、CO2削減を目的としている。

 固定価格買取制度によるCO2削減費用と、省エネ強化等で行うCO2削減費用との差分(前者の方が数十倍以上だと考えられる)を、地球温暖化対策税収から補助金を出す、もしくは税そのものの減免を行う、ということも有力な経済負担軽減案だ。

 このような具体的政策にまで踏み込んだ、エネルギーミックスの議論が必要な段階に来ている。


原子力の平和利用を政策目標に

 中長期的な電源構成としては、再生可能エネルギーの導入をまず20%程度とし、原子力発電の構成比率とほぼ同程度にする。これで、良いバランスがもたらされる。

 さらに、現状世論のアゲンストの風が強い原子力に、新たな役割を付与することが必要だ。そのための戦略はこうだ。

 日本が原子力の平和利用の成功国として、原子力技術を軍事から徹底的に切り離した形で開発普及を促進し、それを人類全体の発展と社会的安定に結びつけていくことを、大きな政策目標として掲げる。

 これを具体的に実践する方策として、福島第一原発の事故での経験を、原子炉の新たな設計や運転技術に反映するという前向きな形で消化し、その新たな技術力に裏付けられた原子力発電システムを、世界に普及させることに注力する。

 これによって、人類共通の危機である気候変動に対して、再エネと手を携えて挑み、電力アクセスに恵まれずに困っている途上国の、10数億の国民生活と経済発展の安定に協力することができる。

 こうした戦略を遂行するためには、国内の原子力技術や施設や人材を最大限動員することが必要である。また、将来においても原子力は、日本にとって国家戦略としての価値を有する技術だという共通認識も必要だ。

 再稼働ひとつできないままでは、こうした技術や人材は腐っていく。使わない家が朽ちるのと同じだ。安全性の確保はもちろんだが、「ゼロリスクはない」ということに立ちすくんではならない。

 国家戦略の立案・遂行の責任者である政治家や官僚、そしてその最高リーダーとしての安倍総理には、現在のエネルギーミックスの議論を、エネルギー政策の内部に閉じた議論に矮小化するのではなく、日本国の生存と繁栄という観点から適切な結論を導きだしてもらいたい。


2014年9月1日号 週刊「世界と日本」第2036号 より

エネルギー安全保障は多様化推進で

輸入価格の低下・安定化がカギ

 

エネルギー・環境問題研究所代表 石井 彰 氏

 エネルギー安全保障とは、安定的にエネルギー供給を確保するということだが、エネルギー専門家だけではなく、外交・軍事関係者など他分野の専門家も、しばしばこの問題に言及する。しかし実は、この「安定的」という意味が実はそう単純ではなく、また時代とともに大きく内容が変遷し、誤解がしばしば生じる。

 一般のエネルギー供給安全保障のイメージは、70年代の一連の石油危機を典型として、資源輸出国が、主に政治的動機で禁輸をしかけ、消費国が必要量を確保できないということだろう。

 しかし、70年代の一連の石油危機の実態は、アラブ石油輸出国機構による、イスラエルを一方的に支持した米蘭2国に対する報復的な原油輸出制限をきっかけにした、消費国自身のパニック的行動による自縄自縛(じじようじばく)的な価格暴騰の様相が強かったし、当時、日本をはじめ先進諸国の必要量自体は結果的に確保できた。

 これは統計的にも、当時の関係者証言からも明らかだが、一般的なイメージは、石油の政治手段化により、消費国が必要量を確保できなかったというものだ。

 消費国自身のパニック行動による石油価格高騰で、先進諸国は交易条件が大幅悪化して長期不況に突入した。一方で大産油国は潤う事になったが、当時も国際石油市場はかなり機能しており、その実相は単純ではない。

 さらに、1941年の、日本に対するいわゆる「ABCD包囲網」が一番の典型的なイメージだ。これで日本は石油入手が不可能になり、直接的に真珠湾攻撃の引き金を引いた。

 しかし、「ABCD包囲網型」危機は、現在の日本の石油に関して蓋然性(がいぜんせい)がほとんどない。

 理由は、1941年当時の国際石油市場は、米国が世界の石油生産量の7割を占め、その国際貿易は、ABCD諸国の内のABD国籍のいわゆるメジャーズが完全支配する、非常に寡占的で流動性の低いものであった。しかし現在は、輸出国数が数十カ国と、寡占度が大きく低下し、市場流動性が国際商品の中で最高となった。

 この市場実態の激変をよく認識していない、時代遅れの安全保障論が後を絶たない。

 現状で、特定の産油国、ないし連合が、日本等に石油の禁輸を仕掛けても効果はほとんどなく、必要石油量を物理的に確保できない事態は考え難い。

 もちろん、その場合に価格高騰の可能性は高いし、代替購入に若干時間を要するが、その時間を稼ぐための先進諸国の戦略石油備蓄が存在する。

 産油国側の禁輸が消費国に対して直接効果を持つのは、国連制裁によるものぐらいだ。ただし、禁輸ではなく、ホルムズ海峡が物理的に長期通過不能になれば深刻な事態になる。他の海峡、シーレーンのトラブルは深刻な事態を引き起こす可能性は非常に低い。

 また、そもそも需要は価格の関数であり、絶対必要量などと言うものは経済論理からは有りえない。

 石油の重要性自体も、1970年代の一連の石油危機の時代は、例えば日本の1次エネルギー消費の7割、電源の73%が石油だったが、現在では、1次エネルギー消費の約4割、電源の1割以下にまでシェア低下した。

 現在の国際石油市場は、むしろ市場流動性が高くなりすぎ、金融投機や特定産油地域の政治混乱による「価格ボラティリティ型」リスクが非常に大きい。

 石油市場が金融市場と一体化し、中東産油国自身の安定性が構造的に悪化しているためだ。

 電源、産業部門で石油より重要性が高くなった天然ガス(LNG)や石炭についても、市場流動性が相対的に低いが故に、本来、価格ボラティリティ・リスクは低いはずだが、日本では石油価格準拠の長期購入契約が大半であるため、日本ではこのリスクが大きく、現状で不当に高い輸入価格となっている。

 また、今回の福島原発事故の影響による電力危機のような「事故・国内要因型」の安定供給リスクも大きい。

 過去、米国などの先進国でも、中国などでも、原発事故以外に、渇水(水力発電の稼働不能)や送電網投資不足、あるいは石炭鉱山の大事故、石炭労働者のゼネストなどで、何度も大停電、深刻なエネルギー供給危機が発生している。

 最近、再生可能エネルギー導入に関して、輸入ではなく「地産地消」なので、供給安全保障の決定打という、単純素朴な議論が目につくが、そもそも太陽光・風力発電は時間・天候に大きく左右され、原理的に始めから安定供給が不可能だ。

 量的不足リスクに関しては、歴史的な事実として、「ABCD包囲網型」よりも、「事故・国内要因型」の方がはるかに蓋然性は高い。輸入品は危険で、国産は安全という、伝統的で素朴な信仰は現実には全く成り立たない。

 安定供給リスクは、各エネルギー源で、その内容が大きく異なるが、対策を敢えて一般化すると、エネルギー源構成の多様化、及び各エネルギー源のソース多様化と、備蓄・代替能力などの予備能力確保がキーだ。

 エネルギー安全保障の要諦に関し、第一次大戦直前にチャーチルは「多様化、多様化、多様化」という箴言(しんげん)を残しているが、地産地消も程度によってはかえって危険になる。

 既に日本では、先進国平均より石油比率が依然高いものの、エネルギー源構成の多様化はかなり進んでいる。最大の懸念は、現在全面停止している原発の再稼働が、中長期的にほとんど進まない事である。

 現在、日本が直面する最大のエネルギー安全保障問題は、原発代替のLNG・石炭輸入価格の、他国と比しての異常な高さだ。

 いわゆる「資源外交」等という事が良く言われるが、以上のようなリアリズムからは、不当に高い寡占的輸入価格の低下を図る場合、例えば、3・11後に日本外交の課題となり、結果的に成功した、米国産LNGの米国にとっての、非FTA国への輸出解禁を外交的に働きかける等の、市場寡占度低下を図る場合や、核燃料再処理や核廃棄物処理関連等に、ニーズはかなり限定される。

 従来型の、特定のエネルギー源輸出国との二国間関係構築によって量的確保を図る、という「資源外交」は、容易に時代錯誤に陥りかねない。

 現在のエネルギー安全保障政策のキーは輸入資源の量的確保ではなく、多様化推進と輸入価格の低下・安定化である。


電気事業連合会八木会長 2014年1月24日定例会見要旨

◆冒頭発言の主旨

 

1.今年の課題と抱負

・昨年は、日本経済の緩やかな回復や、東京オリンピックの開催決定など、明るい話題が出始め、年末には、福島復興の加速化に向けた新たな対策も

打ち出された。今後の復興の進展を期待するとともに、汚染水問題等について、引き続き、業界全体で支援してまいる所存。

・電力を巡る動きとしては、これまでに7社16プラントが適合性確認の申請をしたが、現時点で再稼働には至っていない。電力需給、事業収支の面で非常に厳しい状況が続いており、国民の皆さまにも、節電のご不便に加え、値上げにより多大なるご負担をお掛けしていることを、あらためてお詫び申し上げる。

・今年こそは事業活動を軌道に戻すべく、原子力規制委員会の審査に真摯に対応し、速やかなご判断をいただくとともに、立地地域をはじめ広く社会の皆さまからご理解をいただくことにより、少しでも早く、発電所の再稼働が実現できるよう、最大限の努力を続けてまいる所存。

 

2.「エネルギー政策に関する議論」について

・今年は、エネルギー基本計画など、国の中長期的なエネルギー政策の方向性が定まる、大変重要な年になる。

・基本政策分科会では、特定の電源や燃料源に過度に依存することなく、バランスのとれた供給体制を構築することの重要性が示された。その上で、原子力発電を「基盤となる重要なベース電源として引き続き活用」し、「必要とされる規模を確保する」こと、さらには、原子燃料サイクルを「着実に推進する」ことが明確化された。

・ぜひ、こうした方針を基本計画として定めた上で、40年を超えるプラントも含め、安全が確認された既設炉の有効活用、新増設・リプレイス、原子燃料サイクル事業などを重要政策として、着実に推進いただきたい。

・電力システム改革については、真に国民の皆さまの利益につながる電力システムの実現に向け、引き続き、詳細検討に協力してまいりたい。

・一方で、改革を実効的なものとするには、電力需給の安定が前提であり、安全性が確認された原子力発電所の再稼働は不可欠と考える。また、原子力政策との整合性も重要であり、競争の進展下でも、原子力特有のリスクを限定する方策や、投資回収の見通しが立つような措置を講じることが必要。

 

◆会見要旨の全文は、下記をご覧下さい。

http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/kaiken/__icsFiles/afieldfile/2014/01/24/kaiken_20140124.pdf

 

電気事業連合会八木会長 2013年12月20日定例会見要旨

◆冒頭発言の主旨

 

1.エネルギー基本計画に対する意見

・このたびの意見では、「S+3E」の重要性を挙げた上で、原子力を「基盤となる重要なベース電源として引き続き活用」し、「必要とされる規模を確保する」こと、原子力燃料サイクル」についても、「着実に推進する」ことが明確化された。こうした方針が改めて確認されたことは、大変意義があるものと受け止めている。

・高レベル放射性廃棄物についても、「国が前面にたって最終処分に向けた取り組みを進める」という方針が示された。私どもも、NUMOとの連携を一層強化するとともに、更なる取り組み強化策を検討してまりたい。

・今後、正式な「エネルギー基本計画」として決定されると承知しているが、国の基幹計画として、中長期的にぶれることなく推し進めていただきたい。

 

2.電気事業を巡る今年1年

・今年1月の会見では、「事業活動を何とか軌道に戻し、新たなスタートを切る年にしたい」との抱負を申し上げたが、残念ながら、喫緊の経営課題である原子力の再稼動には現時点では至っておらず、事業収支、電力需給の両面において大変厳しい状況が続いている。

・そうした中でも、新規制基準も踏まえた原子力の安全対策の推進や、電力の安定供給確保へ向けた対応など、一歩一歩取り組みを進めてきた1年ではあった。社会の皆さまからご信頼いただけるよう誠心誠意努力し、直面する課題を乗り越え、来年こそは、事業活動を軌道に戻してまいりたい。

・そのためには、安全確保を大前提に、早い段階での原子力発電所の再稼動を、何とかしても実現てまいりたい。また、小売り全面自由化など、電気事業を取り巻く環境が大きく変わっていく中においても、「低廉で良質な電気を安定的にお届けする」という私どもの使命を改めて肝に銘じ、引き続き、全力を尽くしてまいる所存。

 

※下記資料をあわせてご覧下さい

http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/pdf/s_20131220.pdf

 

◆会見要旨の全文は、下記をご覧下さい。

http://www.fepc.or.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2013/12/20/kaiken_20131220.pdf

 

2013年3月11日 東京懇談会

「いま、何を議論すべきなのか ―エネルギー政策と温暖化政策の再検討」

 

澤 昭裕 氏

21世紀政策研究所 研究主幹

http://www.21ppi.org/

NPO法人国際環境経済研究所 所長

ツイッター@sawaakihiro

https://twitter.com/sawaakihiro/


<講演者プロフィール>

一橋大学経済学部卒業後、通商産業省入省(現経済産業省)。産業技術環境局環境政策課長、資源エネルギー庁資源燃料部政策課長を歴任、同省退職後平成19年より現職。エネルギー政策の専門家。

<講演資料PDF>

平成25年3月11日 東京懇談会 澤 昭裕氏「いま、何を議論すべきか?」.pdf
PDFファイル 4.1 MB

澤 昭裕氏の講演について、みなさまのご意見・ご感想をお寄せください。

※管理者が著しく不利益と判断する記事や他人を誹謗中傷するコメントは、予告なく削除することがあります。

2013年1月30日 東京懇談会

「危機の“突破力”ある日本経済 ―日本が直面している危機―」

 

三村 明夫 氏

新日鐵住金株式会社 取締役相談役


<講演者プロフィール>

東京大学経済学部卒業後、富士製鉄入社(現新日鐵住金)。新日本製鉄(同)、平成15年社長、20年会長24年から現職。日本鉄鋼連盟会長、国際鉄鋼協会会長、日本経済団体連合会副会長、政府の経済財政諮問会議民間議員等を歴任。現在でも政府の中央教育審議会会長、総合資源エネルギー調査会長を務める他、日豪経済委員会会長等に就任。

2012年10月15日号 じゅん刊『世界と日本』No.1218

「日本におけるエネルギー問題 ―シェールガス革命と世界のエネルギー需給状況の大変貌―」

 

武石 礼司 氏

東京国際大学 国際関係学部教授


<講演者プロフィール>

1952年生まれ。東北大学法学部卒業、アラビア石油入社(サウジアラビア駐在84年から87年)を経て、(財)日本エネルギー経済研究所・主任研究員、(株)富士通総研経済研究所・主席研究員等を経て、2007年より東京国際大学国際関係学部教授、早稲田大学博士(学術)、エネルギー・環境問題・発展途上国経済を専門とする。

<じゅん刊『世界と日本』掲載号PDF>

jyunkan1218.pdf
PDFファイル 2.3 MB

最新エネルギー情報お役立ちリンク集

電気事業連合会 http://www.fepc.or.jp/

同サイト内情報ライブラリー http://www.fepc.or.jp/library/index.html 

電事連チャンネル http://fepcvcms.primestage.net/

・学校教材としても使える動画が豊富。
・海外のエネルギー事例もわかる。
・これからのエネルギーについて知ることができる。

日本ガス協会 http://www.gas.or.jp/

ガスエネルギー新聞 http://www.gas-enenews.co.jp/

経済産業省 http://www.meti.go.jp/
資源エネルギー庁 http://www.enecho.meti.go.jp/
エネルギー・環境政策一覧(経済産業省内)

 http://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/index.html
総合資源エネルギー調査会等審議会

 http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/index.htm

首相官邸災害対策ページ http://www.kantei.go.jp/saigai/

一般社団法人 日本経済団体連合会 http://www.keidanren.or.jp/

経済産業省関連リンク http://www.meti.go.jp/network/data/b300001j.html

NPO法人 国際環境経済研究所(International Environment and Economy Institute) http://ieei.or.jp/

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