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2024年5月6日号 週刊「世界と日本」第2268号 より

台湾有事の可能性に今すぐ対処せよ

 

政治学者・元米海兵隊太平洋基地政務外交部次長 

ロバート・D・エルドリッヂ 氏

《ロバート・D・エルドリッヂ(エルドリッヂ研究所・代表)》

1968年、米国生まれ、99年、神戸大学大学院より政治学博士号。大阪大学准教授、海兵隊顧問等を経て現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員。『沖縄問題の起源』、『オキナワ論』、『尖閣問題の起源』、『人口減少と自衛隊』、『中国の脅威に向けた新日米同盟』など多数。

 

 台湾の政治と外交について研究するため、今年1月に台湾に渡り、丸1年を台湾で過ごすことになった。具体的には、1月13日に行われた総統選挙の結果が、台湾の今後の外交政策に与える影響を調べている。

 総統選挙の10日ほど前の1月4日に到着した。アパートを見つけ、幸い数日で引っ越しを完了した後、専門家と会い、それぞれの陣営を観察し始め、二大政党(台北市と新北市でそれぞれ民進党と国民党)の集会に参加した。また、総統選挙で初めて二大政党に挑戦する第三の小政党(台湾民衆党)の集会場にも足を運んだ。

 私のアパートは総統府と立法院から徒歩7分圏内だが、それぞれ方向が違う。

 選挙当日(土曜日)、私は2人の大学生の実家(台北市と新北市)近くにある投票所を、ともに訪れ、投票とその過程を見学した。彼らは初めての投票だった。私はこの訪問に興奮し、投票した彼らを誇りに思った。

 投票所(どちらも地元の小学校だった)は、(近年のアメリカとは違って)とてもよく運営され、スムーズで迅速だった。多くのボランティアが素晴らしいカスタマーサービスを提供していた。情報は明確に掲示されていた。投票箱にはきちんとラベルが貼られ、色分けされていた。

 投票する時間は午前8時から午後4時までで、期日前投票、郵送投票、タブレット端末の使用はない(これらはすべて、米国の選挙の完全性を大きく損なっている)。このように投票できる時間が限られているにもかかわらず、選挙の投票率は71・9%と、先進国の中では国際的に非常に高い数字を記録した。

 面白いことにこれは国際的には高い数字だが、台湾国内では1996年に民主化されて以来8回行われた総統選挙の中で2番目に低い投票率であり、おそらく若者や国民が二大政党制に不満を抱いていることを示唆している。

 

 選挙結果は、民進党の頼清徳(らいせいとく)候補が総統に、野党が立法院を制するというもので、投票前に正確に予測されていたため、驚くようなものではなかった。頼次期総統の就任式は5月20日に行われる。一方、立法院の任期はすでに2月1日から始まっている。

 1月の選挙への関心は国際的にも非常に高かった。当時、7000人以上の外国人記者や代表団が台湾を訪れたという(私自身、その時来台した日本の記者やオブザーバーとの打ち合わせに大忙しだった)。総統選挙は終わったが、台湾の将来に対する関心は依然として高い。

 私は、1月の投票はより大きな台湾総統選挙の第一段階だと考えている。つまり、11月の米大統領選の結果を知るまでは、台湾の将来を予測することは難しい。

 今後、機会があれば、台湾の将来を予測するための論点を書きたいと思うが、その前に、本稿を執筆している現在までの3カ月間の台湾滞在で得たいくつかの気づきを紹介したい。

 まず、台湾外交部との交流である。私は毎月2回、外交部の外交官とランチやティータイム、ディナーを共にする機会がある。彼らは皆、とても賢く、フレンドリーで、洗練されている。彼らは私が台湾で過ごす時間が実り多いものであり、すべてがうまくいっていることに深い関心を寄せてくれる。彼らは非常に良い見識を持ち、私が台湾政府に行った多くの問題についての提言や提案を歓迎してくれている。その対応や姿勢に深く感謝している。

 

 ところが、今年11月の米大統領選に関して、米国との二国間関係に携わる担当者の理解が限られていることに、私は非常に不安を覚えた。特に、ドナルド・J・トランプ前大統領に対する彼らの見解は、慎重かつ丁寧に検討された意見というよりは、まるでアメリカ民主党の党派的なトーキングポイントか、反トランプのアメリカメディアの再掲のようだった。私はそれらに驚き、気になったので、初めて聞いたときに激しい反論を展開し、2回目に会ったときにフォローした。

 これは、私がトランプ支持者のためにやった訳ではない。実は、共和党の党員でもなければ、トランプの支持者でもない。この反論の目的は、台湾外交部の関係者にアメリカ社会と政治を正しく理解してほしいからだ。それがなければ、彼らは適切な仕事をすることができないだけでなく、彼らの誤解が台湾とアメリカの関係や地域の安全保障に影響を与えかねないからだ。

 彼らの見解は、台湾の他のエリートたちにも共有されているようだ。それは、2月に日本でウイルスのように感染した「もしトラ」という造語の現象と同じく。

 トランプ政権がどのような政権になるかは、すでに4年間務めたトランプが知っているはず。日米関係は強化し、米台関係を前進させるためにあれだけのことをしたのだから。

 もうひとつ得た気づきは、台湾有事に対する日本の現実的な考えと計画の欠如である。私は多くの理由から、中国は遅かれ早かれ台湾に侵攻する。早ければ今年中にも台湾に侵攻すると見ている。

 もしそうだとしたら、「なぜあなたは台湾にいるのですか?」

 私のアメリカ側の家族は、まさにその質問を私に投げかけてきた。別の言い方をすれば、なぜ危険な場所に行くことを選んだのか?

 それは、私が「現場記者」タイプの研究者だからだ。台湾がどのような準備をしているのか、中国が何をしでかすのかを間近で見たいからだ。

 ところが日本では、外相経験もある麻生太郎元総理など、台湾有事の日本への影響を警告する政治家はいても、台湾関係法などの法整備はまったくされていないし、台湾に住む日本人や台湾を訪れる日本人を避難させるという議論もない。

 後者については、事実上の在台日本大使館である日台交流協会が、何の計画も立てておらず、台湾在住者との効果的なコミュニケーションもない。それどころか、それについて話すことさえ忖度されている。ただ、「自分の身は自分で守れ」「できるだけ早く避難しろ」としか言っていない。

 台湾に住んでいる私は、日本が手遅れになる前に、台湾有事の可能性に今すぐ対処しなければならないことを、これまで以上に実感している。

 


2024年4月15日号 週刊「世界と日本」第2267号 より

皇室を支える仕組みを改めて考える

 

麗澤大学 客員教授 江崎 道朗 氏

《えざき みちお》

1962年、東京都生まれ。九州大学卒業後、国会議員政策スタッフなどを経て2016年夏から評論活動を開始。主な研究テーマは近現代史、外交・安全保障、インテリジェンスなど。産経新聞「正論」執筆メンバー。2023年、フジサンケイグループ第39回正論大賞を受賞。最新刊に『なぜこれを知らないと日本の未来が見抜けないのか』(KADOKAWA)。

 

 立憲君主国家である日本にとって今年は極めて重要な年になりそうだ。

 現行の皇室典範のままだと、皇族がいらっしゃらなくなるかもしれない。そうした危機感を背景に令和3年、菅義偉政権が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」に関する有識者会議を設置し、令和4年1月に報告書をまとめた。

 この報告書において政府は、皇族数の確保を図ることは喫緊の課題だとして次の三つの改革案を提示した。

⑴内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとする

⑵皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする

⑶皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする

 要は女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案と「皇統に属する男系の男子」が皇族になる案を提示したわけで、いずれも何らかの法整備が必要になる。

 この「皇統に属する男系の男子」とは、現行憲法制定下の昭和22年10月まで皇族であった伏見宮、閑院宮、山階宮、北白川宮、梨本宮、久邇宮、賀陽宮、東伏見宮、竹田宮、朝香宮、東久邇宮の、いわゆる十一宮家に属する男系男子のことを指す。

 

 この報告書を踏まえて各党は議論を進めているが、大勢は報告書に賛同する方向だ。よって与野党の意見がまとまれば、近いうちに法整備が進むことになるが、だからと言ってそれで問題解決とはならない。「皇統に属する男系の男子」が皇族になるための大きなハードルが幾つか残っているからだ。その一つが、マスコミと一部国民による「誹謗中傷」対策だ。

 現状のままだとマスコミは「皇統に属する男系の男子」に対して個人的なことまであれこれ詮索し、ある言動を切り取って「皇族として相応しくない」と印象付ける報道を行うだろう。誰にだって人に知られたくない過去があるが、それをワイドショーや週刊誌を通して全国民に<RUBY CHAR="晒","さら">され、「皇族として相応しくない」と批判されるのだ。それは恐怖でしかない。

 問題は、誹謗中傷対策だけではない。「皇統に属する男系の男子」は、我々一般国民とは違って皇室との接点をお持ちだが、民間でお育ちだ。そういう方々が皇族になった際、皇室独自の歴史と伝統をいかにして学び、受け継ぐのか。そもそも皇族としてのお振舞、言葉遣いなどを身に着ける教育システムがなければ、皇族として相応しくあってほしいという国民の要求にどう応えればよいのか、途方に暮れてしまうだろう。よって「皇族になる方々」を支える仕組みも新たに構築しなければならない。

 

 こうした仕組みを整えるに際しては、明治の先例が参考になる。

 拙著『天皇家百五十年の戦い』(ビジネス社)で詳述したが、実は明治時代、皇室と政治、皇室と国民の関係について活発な議論を行っている。その議論を主導した一人、慶應義塾を創設した福澤諭吉は『帝室論』と『尊王論』を著して次のように説いた。

 政治はある意味、党利党略、権力闘争だ。どうしても政治家同士の対立、反目が強まっていくし、国民の側も政治家を厳しく批判することになる。よって政治家、政府への不信が強まるのはやむを得ない。

 だが党利党略に振り回され、分断と不信が強まると国家としての一体性は失われ、外国に付け込まれる隙が生まれ、国家の自由と独立が損なわれることになりかねない。幸いなことに我が国では、長い歴史と伝統を誇る天皇が政治、つまり党利党略の圏外にあって国民をまとめる役割を果たしてきた。

 この福澤らの議論を念頭に明治の先人たちは、以下のような国民的合意を形成した。

 我々は明治新政府の発足に際して「廣ク會議ヲ興(おこ)シ、萬機(ばんき)公論(ごうろん)ニ決スヘシ」(五箇条の御誓文)と宣言し、議会制民主主義体制を採用すると決めた以上、強権的な専制君主制を望まない。と言って党利党略に陥りがちな政治指導者のもとで政治的混乱が続くのも困る。よって長い歴史を有する天皇に敬意を表することでまとまっていく立憲君主制を択ぼう。そして立憲君主制を択ぶ以上、天皇を「政治(党利党略)の圏外」に置かなければならない。

 また、天皇・皇族が尊いのは、長い歴史と伝統を受け継いでいるからだ。聖人君子であるからではない。皇族は聖人君子であるべきだという先入観のもとで、皇族のプライバシーを暴くことを放置していれば皇室不信が強まるだけだ。よって「皇室のことは言挙げせず」、つまり皇族本人の振る舞いについては殊更に言い立てないようにする。

 具体的には、皇族とその縁者のプライバシーを暴くような報道はできるだけ控えるという国民的合意を形成し、そうした「良識」を学校教育その他で国民の間にも徹底していく。

 とはいえ問題行動を起こす皇族が増えると、皇室の権威が損なわれる。よって皇族に対して品位を保つよう監督する権限を天皇が持ち、場合によっては天皇の名で謹慎などの処分を下すことができるようにしておく。併せて皇族としての品位を保つことができるよう学習院などの専門教育機関も、天皇の名で設置する。

 

 こうやって明治の日本は、皇室と政府、国民との関係について考え方を一つ一つ整理し、「皇室を守り、支える仕組み」を整えてきた。

 だが、昭和20年の敗戦とその後のGHQによる占領改革によって、そうした仕組みは解体され、国民的合意も失われつつある。

 今後、皇族数を増やすための法整備が進めば、「皇統に属する男系の男子」の方々は覚悟を決めて皇籍を取得されることになるだろうし、その家族・親族もかなりの覚悟が迫られることになる。

 そうした方々に対して心無い誹謗中傷を浴びせかけていいのか。むしろ立憲君主制を守るため、政府も国民の側も「皇族のプライバシーをあれこれ詮索すべきではない」みたいな合意形成に努めるべきではないのか。

 併せて皇族の一員として振舞うための教育システムを構築すべきではないのか。

 明治の先人たちに倣(なら)い、令和の我々も「皇室を守り、支える仕組み」構築に向けて議論を深めていきたいものだ。

 


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