サブメニュー

●週刊「世界と日本」コラム

外部各種イベント・セミナー情報

  • 皆様からの情報もお待ちしております

お役立ちリンク集

  • お役立ちサイトをご紹介します

Coffee Break

  • 政治からちょっと離れた時間をお届けできればと思いご紹介します

東京懇談会録

  • ※会員の方向けのページです

●時局への発言ほか

明治維新150年チャンネル

  • 2018年、平成30年は明治維新からちょうど150年。
  • お知らせ

    ●会員専用コンテンツの閲覧について
    法人会員及び個人会員、週刊・月刊「世界と日本」購読者の方で、パスワードをお忘れの方はその旨をメールにてご連絡ください。その際に契約内容が分かる内容を明記ください。折り返し、小社で確認後メールにてご連絡します。

    パスワードお問い合わせ先

    tokyo@naigainews.jp

特別企画

内外ニュースでは「特別企画チャンネル」において、週刊・月刊「世界と日本」の執筆者、東京・各地懇談会の講演、専門家のインタビュー記事等の情報を掲載して参ります。

2025年5月5日号 週刊「世界と日本」2292号 より

政治家を評価することは容易ではない

 

同志社大学 法学部教授

 

村田 晃嗣

《むらた こうじ》

1964年、神戸市生まれ。同志社大学法学部卒業、米国ジョージ・ワシントン大学留学を経て、神戸大学大学院博士課程修了。博士(政治学)。広島大学専任講師、助教授、同志社大学助教授を経て、教授。この間、法学部長・法学研究科長、学長を歴任。現職。専攻はアメリカ外交、安全保障研究。サントリー学芸賞、吉田茂賞などを受賞。『大統領たちの五〇年史』(新潮選書)など著書多数。

トランプ劇場を巡る評価

 

 「辞書の中で関税ほど美しい言葉はない」と、ドナルド・トランプ大統領は豪語してきた。

 その「トランプ劇場」は、さながらジェット・コースターである。トランプ氏は就任早々から大統領令を乱発し、ついには関税カードを弄ぶようになった。改めて、「ニクソン・ショック」が想起されよう。1971年7月に、ニクソン大統領は金・ドル交換停止や10%の輸入課徴金などの新経済政策を発表し、8月には宿敵だった中国を翌年に訪問すると発表した。トランプ大統領がウクライナを見捨てて、ロシアとの大幅な関係改善を図れば、それこそ「ニクソン・ショック」の再来である。ただし、ヘンリー・キッシンジャー博士の知恵と戦略なしで。

 さすがに、トランプ大統領の支持率も低下し、米国をはじめ世界の株価も下落している。ドルも米国債も、売りに出されている。すると、トランプ氏はイーロン・マスク氏と距離を置き、大統領3選に言及しはじめた。民主党にとっては、トランプを攻撃しても効果は乏しいが、今や、マスク氏は格好の攻撃対象なのである。先般も、この大富豪が巨費を投じながら、ウィスコンシン州最高裁判所判事の選挙で、民主党のリベラル派が勝利を収めた。

 

 大統領3選はなるか。次の選挙でJ.D.ヴァンス副大統領が大統領候補になり、トランプ大統領が副大統領候補に回る。当選、就任後にヴァンス氏が辞任すれば、トランプ副大統領が大統領に昇格する。さすがに、米国の能天気な有権者も、保守化した連邦最高裁判所も、これは認めまい。むしろ、三選を仄めかさなければならないほど、トランプ政権にとって、1期限りという時間的な制約が大きいのである。とりわけ、来年11月の中間選挙で、共和党が連邦議会の多数を失えば、その後のトランプ政権は「死に体」(レイム・ダック)になってしまう。

 石破茂首相は2月に訪米し、日米首脳会談を「成功」させた。だが、関税攻勢を前に、石破氏はなす術もない。むしろ、トランプ大統領は安倍晋三元首相の名前に言及した。トランプ大統領は「強い」リーダーが好きなのである。だから、習近平もウラジーミル・プーチンも、金正恩さえ好きである。強くなければ、トランプ氏と「取引」(ディール)しても、国内で実行できないかもしれない。もとより、安倍氏は独裁者ではなかったが、自公連立政権が衆議院で3分の2を超える多数を擁し、自民党内でも安倍派の議員が100人を超えていた。石破氏とは大違いである。

 

評価する側の見識も

 

 振り返ってみて、安倍氏の最大の業績は平和安全法制を定めて、限定的とはいえ集団的自衛権の行使を可能にしたことであろう。トランプ大統領は今でも日米安全保障条約が不平等だと語っているのだから、この法制がなければ、日米関係は今よりかなり不安定になっていたであろう。トランプのアメリカはどうせ日本を守りはしない、だから大切なのは軍事力ではなく外交の力だと、ある識者が述べていた。なぜ軍事と外交が二者択一なのか。また、日米安保条約は信じないくせに外交力を説く―この程度の論理の飛躍や自己矛盾に気づかない「文化人」は、外交や安全保障の分野には不向きである。しかも、長らく有事法制に反対してきた人々が、日本の危機管理体制の不備を批判するのなど、実に噴飯ものである。平和安全法制については、数々の違憲訴訟が起こされたが、「憲法学者の多数意見」は司法の場でことごとく斥けられている。これを不満としてシールズが再びデモを展開したという話も、寡聞にして耳にしない。もうお忘れであろうか。シールズとは、「自由と民主主義のための学生緊急行動」なる団体のことである。彼らなしにも、立憲主義は立派に守られている。

 

健全な民主主義を育てる

 

 他方で、安倍氏のロシア政策は、今となっては失敗だったと断ぜざるをえまい。おそらく、プーチン大統領に北方領土を部分的にも変換するつもりなど、まったくなかったであろう。また、いわゆるアベノミクスがどれほど成功したかについても、大いに意見が分かれよう。

 わずか10年ほどで、政治家やその政策への評価は大きく変わりうる。荒唐無稽に見える「トランプ劇場」が、10年後、20年後には歴史の中で然るべき評価を受けているであろうか。それとも、決定的な「ぶち壊し屋」と断罪されていようか。そして、安倍氏や石破氏の評価はどうなっているか。

 昨年末に、米国のジミー・カーター元大統領が100歳で死去した。人権外交を推進したカーター元大統領の人生は、ほとんどトランプ大統領の反語である。ジョー・バイデン前大統領も、カーター氏の人格を絶賛した。だが、そのカーター氏も、在職中には未熟、頑迷、軟弱と罵詈雑言を浴びせられ、再選は叶わなかった。われわれは政治家と政策を常に評価し、時には厳しく批判しなければならない。さもなければ、民主主義は守れない。しかし、自らの判断や評価を疑い見直す精神がなければ、健全な民主主義は育たない。左右を問わず、今日の政治に欠けているのは、この自己懐疑の精神であろう。

 

 先ほど、トランプ大統領は「強い」リーダーを好むと述べた。当のトランプ氏には1期しかなく、しかも中間選挙で敗北する可能性が高い(おそらく下院で)。彼が「取引」しようとしても、実はプーチンも習近平も「弱い」トランプ政権を相手に、大きな政策変更をするつもりはあるまい。政治にとって、力や金よりも時間こそが貴重な資源なのである。だからこそ、独裁者は強い。

 

 そしてもう一つ、政治にとって重要なのは知恵である。確かに、トランプ氏は政治的経験を増して、したたかに知恵をつけてきた。しかし、日本をはじめとする諸外国も、トランプ大統領とどう向き合うかの知恵を積んできたはずである。関税競争の背後で、トランプ大統領とわれわれの知恵比べが展開されようとしている。そして、集合知に乏しい分、長期の知恵比べでは、独裁者は脆い。自己懐疑の精神を欠き、諫言を退けるトランプ大統領にも、それは当てはまろう。

 


2025年5月5日号 週刊「世界と日本」2292号 より

危機に直面する

 

皇室の尊厳を守る

 

ジャーナリスト 

俳優

 

葛城 奈海

《かつらぎ なみ》

東京都生まれ。東京大学農学部卒業。ジャーナリスト。防人と歩む会会長。皇統を守る会会長。予備役ブルーリボンの会幹事長。日本文化チャンネル桜、レギュラー出演中。産経新聞『直球&曲球』連載中。近著に『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社新書)、『日本の要衝・与那国を守る』(明成社)。

 宮内庁は3月28日、4月から筑波大学に進学される悠仁親王殿下が、当面は東京・元赤坂の秋篠宮邸から車で通い、その後は様子を見て大学近くのつくば市内に民間の集合住宅を1部屋借りて使用していくと発表した。身の回りの世話をする職員は市内に常駐しないという。悠仁親王殿下のご成長を嬉しく思う一方、中学校時代には学校の机の上にナイフが置かれる事件等もあったことから、安全面での不安は拭えない。

 そうした物理的な警護の問題もさることながら、同時に気にかかるのは、秋篠宮家、中でも悠仁親王殿下に対するバッシングのひどさだ。悠仁親王殿下への誹謗中傷は、SNSを中心に常軌を逸するといっても過言ではない。筑波大学生命環境学群生物学類へのご進学が決定する前には、「東大進学に反対するオンライン署名」が1万2000筆も集まるなど「いじめ」としか思えないようなことまで現実に起きた。

 

 3月3日には、悠仁親王殿下がご成年をお迎えになっての記者会見が行われた。成人年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、昨年9月6日のお誕生日をもって成年を迎えられていたが、当時は進学の準備があったため、同時期の会見となった。「緊張しています」と仰りながらも、約30分、まったくメモを見ることもなく、記者ひとりひとりと目を合わせるように視線を動かしながら「成年皇族としての自覚を持ち、皇室の一員としての役割をしっかり果たしていきたい」等と述べられた会見のご様子は、とても18歳とは思えないほど頼もしいもので、さんざん秋篠宮家をたたき続けてきた女性週刊誌も称賛の声を送らざるを得ないほどであった。この会見をもって、SNSでのバッシングも吹き飛んだ…といいたいところであったが、残念ながら、そうはならなかった。中には悠仁親王殿下が「好きな女優やアイドル、音楽」といったプライベートな質問に対して具体的な回答を避けたことに対し、言うに事欠いて「秋篠宮家の言論統制」などと評する向きもあるから、その執拗さには呆れるばかりだ。

 皇族が名誉棄損で自ら訴えることはできず、事実上、言葉の暴力によるサンドバック状態に陥っているといっていい。これを放置してよいのだろうか。

 

 かつては日本にも皇族の名誉や尊厳を守るための不敬罪が存在したが、戦後の刑法改正により廃止されて今に至る。「不敬罪」を求めた吉田茂首相に対し、マッカーサーは「天皇には、一般国民に与えられる法律上の保護と全く同じ保護のみが与えられる」と不敬罪廃止を命じた。つまり、皇室への不敬な言動が野放しにされる元凶を作ったのは、GHQなのだ。

 ここで読者のみなさんに思い起こしていただきたいことがある。皇統の危機が叫ばれて久しい。その原因となったのが、旧11宮家の臣籍降下であることをご存じだろうか。

 現在、悠仁親王殿下と同世代の男性皇族が存在しないことから、悠仁親王殿下が将来ご結婚され、男子が誕生すればよいが、お子様が生まれない、もしくは女子ばかりであったとしたら、万世一系の皇統が潰える。いや、その前に、こんなことは決してあってほしくはないが、悠仁親王殿下の身に万が一のことが起きれば、同様の事態に陥る。

 

 万世一系とは、「父親の父親の父親…」と父方のみをたどれば初代神武天皇に繋がる一系の血統が続いてきたということだ。126代となる今上天皇までお一方の例外もなく受け継がれてきたこの「たったひとつの決まりごと」こそ、天皇の正統性の根拠だ。

 では、なぜその「万世一系の皇統」が脅かされるような事態に陥ったのか。昭和21年5月21日、GHQにより「皇族の財産上その他の特権廃止に関する総司令部覚書」が発令され、当時14あった宮家への歳費支出は昭和21年5月分をもって打ち切ると通告された。また課税の免除もなくなる等、皇室は経済面で苦境に立たされることになった。この苦境を乗り切るためには、皇室の規模を小さくするよりほかなく、昭和天皇の弟宮である三直宮家(秩父宮家、高松宮家、三笠宮家)を除く11宮家が皇籍離脱することになったのだ。そして、昭和22年10月13日、あたかも自主的に臣籍降下したかのような体をとりつつ、実際は11宮家がやむなく皇籍を離脱したというのが真相であった。

 この臣籍降下さえなければ、現在の皇位継承問題は生起していない。なぜなら、旧11宮家には悠仁親王殿下と同世代の男系男子が何人も存在するからだ。宮家とはそもそも皇位の安定継承のために設けられているもので、直系の後継ぎが存在しなかった場合に、傍系、つまり宮家から皇位を継承するためにこそ存在している。皇室の藩屏であったはずの宮家をばっさりと臣籍降下させたところに、GHQの「皇統を先細りさせ、ゆくゆく断絶させる」という深謀遠慮が透けて見える。

 

 不敬罪の廃止によって、日本人の精神的中心である皇室への尊崇の念を褪せさせ、旧11宮家の臣籍降下によって皇統そのものの断絶に向けて時限爆弾をしかける。いずれも日本の弱体化という目的において通底している。

 皇室を守ることは、すなわち日本を守ることだ。他国の圧力によって変えられたルールは、日本人自らの手であるべき姿を取り戻していくべきであろう。バッシングを野放しにすれば、天皇を中心とする皇室と国民が君民一体となって紡いできた国柄が激しく損なわれ、皇位継承問題を解決しなければ皇統が断絶しかねない。いずれにしても「日本が日本でなくなる」と言っても過言ではない事態を阻止すべく、政府と国会は危機感を持ってこの問題に対処するべきだ。また、私達国民も「時代の歯車を自ら回す」気概を持って、政府や国会が動かざるを得ない世論を作っていかなければならない。

 


2025年4月21日号 週刊「世界と日本」2291号 より

米トランプ政権下での

 

米ロ急接近の戦略的背景と日本の選択

 

笹川平和財団上席研究員

 

畔蒜 泰助

あびる たいすけ

1969年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、モスクワ国立国際関係大学修士課程修了。東京財団研究員、国際協力銀行モスクワ事務所上席駐在員を経て現職。専門はユーラシア地政学、ロシア外交安全保障政策、日露関係。著書に『「今のロシア」がわかる本』、『原発とレアアース』。監訳本に『プーチンの世界』がある。

 米トランプ政権発足直後から米ロ両国が急接近し始めている。2025年2月11日、ロシア政府による米国人人質の解放を受けて、翌2月12日、米トランプ政権発足後、初めての米ロ首脳電話会談が行われた。これに続き2月18日にはサウジアラビアの首都リアドで米国側からはマルコ・ルビオ国務長官、マイケル・ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官、スティーブン・ウィトコフ中東特使が、ロシア側からはセルゲイ・ラブロフ外相とユーリ・ウシャコフ外交問題担当大統領補佐官が参加する米ロ高官協議が開催されている。

 

 2024年11月の米大統領選に勝利したドナルド・トランプは、その選挙キャンペーン中からウクライナ戦争を早期に停戦させる意向を表明していた。そして2025年1月20日、米トランプ政権が正式に発足する前後から、ウクライナがNATO加盟すべきでないというロシアの立場に理解を示すなど、ウクライナや欧州諸国の頭越しに米国は従来の対ロシア政策の一大転換を図っているのだ。

 ここで2025年2月12日に行われた米ロ首脳電話会談後、ロシア大統領府が発表した文書を確認したい。

 「両首脳はウクライナ和平の可能性について話し合った。ドナルド・トランプは出来るだけ早く停戦し、危機を平和的に解決することに賛成した。一方、ウラジーミル・プーチンは紛争の根本原因を取り除く必要があると指摘し、平和的な交渉を通じてのみ持続可能な和平に達することができるという点で、ドナルド・トランプ大統領と同意した。また、中東和平、イランの核開発計画、ロシアとアメリカの二国間経済関係の問題も会話の中で取り上げられた。」

 また、2月18日の米ロ高官協議後に米国側が発表した文書によると、米ロ両国は以下の点で合意している。

 ・在外公館機能の正常化・ウクライナ停戦・和平を巡るワーキング・グループのメンバー選定・立ち上げ・ウクライナ紛争終結の成功によって生まれるであろう、地政学的な相互利益と歴史的な経済・投資機会に関する将来の協力のための土台作り

 ここで注目すべきは、米ロが一連の交渉において①ウクライナ停戦・和平、②相互利益のある地政学的問題での協力、③経済・投資分野での協力という三つの柱を同時並行的に行っているという点である。

 但し、①についてはやはり2月12日の米ロ首脳電話会談でのロシア側の発表文書から判断して、米国が「出来るだけ早い停戦」を志向しているのに対して、ロシアは停戦の前に「紛争の根本原因を取り除く必要がある」と主張しているなど、米ロ両国にはその時間軸も含めて明確な違いがある。

 

 2025年3月18日の二度目の米ロ首脳電話会談において、エネルギー関連施設への30日間の攻撃停止に合意する一方、アメリカがウクライナとの間で合意した30日間の停戦には応じないなど、米ロ両国の立場の違いは既に鮮明に現れている。ウクライナや欧州諸国は、戦況で有利に立つロシアが意図的に停戦を先延ばしにしているとの批判を積極的に仕掛けている。米国でもトランプ大統領自身、停戦交渉のスピード感に不満を抱いていることから、ロシア産石油・ガスの取引に追加制裁の可能性を示唆している。

 それにもかかわらず、一連の米ロ急接近のトレンドは、今後、紆余曲折はあるものの反転はないと見ている。米トランプ政権は自らの戦略的必要性から従来の対ロシア政策の一大転換を余儀なくされているからだ。これを理解する上で参考になるのが、ウォルツ国家安全保障問題担当大統領補佐官がまだ下院議員時代の米大統領選挙直前に英エコノミスト誌に寄稿した共著記事の中の次の一節である。

 「次期大統領は、ウクライナと中東の紛争を速やかに終結させるために緊急に行動し、最終的に戦略的に注意をすべきこと、即ち中国共産党のより大きな脅威に対抗することに集中させるべきである」と述べている。

 つまり、米トランプ政権はもはや世界のあらゆる場所に軍事的に関与する余裕はなく、一日も早く欧州(ウクライナ)と中東での紛争を終結させて、米国にとって唯一の戦略的競争相手である中国の潜在的な脅威に備える必要があるとの戦略観が根底にあるのである。

 

 ところで、前述の通り、米ロは①ウクライナ停戦・和平、②相互利益のある地政学的問題での協力、③経済・投資分野での協力という三つの柱を同時並行的に交渉していると指摘した。ここにおける②は前述した2月12日の米ロ首脳電話会談でのロシア側の発表文書から判断して中東和平問題やイラン核開発問題といった中東地域での米ロ協力であろう。

 前述したウォルツの「ウクライナと中東の紛争の速やかな終結」との指摘とピタリと符合する。米トランプ政権はロシアが直接の当事者であるウクライナでの停戦は勿論、中東地域、特にイラン核開発問題の解決においてロシアとの協力を必要としているのである。

 なお、ロシアは米ロ接近と引き換えに中国との戦略的関係を犠牲にすることは出来ないし、そのつもりもない。それでも米国がロシアと協力してウクライナと中東での紛争を終結さられれば、その戦略資源を中国が大きな影響力を有するインド太平洋地域に集中させることが出来る。ロシアもまた対ロシア制裁の部分緩和を受けて米国やその同盟国との経済・投資協力が復活すれば、ウクライナ戦争の勃発以降、中国への経済的依存度を著しく高めている状況を改善でき、あからさまに露中関係を悪化させることなしに、中国とのバランス・オブ・パワーを回復できる。

 とすれば、米トランプ政権が対中国戦略の一環としてロシアとの急接近を図る中で、我が国もまた、安倍政権時代の対ロシア積極関与政策を復活させるのか?それとも異端のトランプ政権の対ロシア政策の一大転換は成功しないと見て「今日のウクライナは明日の東アジア」との岸田政権が掲げたスローガンの下、引き続き欧州諸国と連携してウクライナ支援と対ロシア経済制裁という従来の対ロシア政策を継続するのか?早晩、どちらかの決断を迫られることになろう。

 


【AD】

国際高専がわかる!ICTサイト
徳川ミュージアム
ホテルグランドヒル市ヶ谷
沖縄カヌチャリゾート
大阪新阪急ホテル
富山電気ビルデイング
ことのは
全日本教職員連盟
新情報センター
さくら舎
銀座フェニックスプラザ
ミーティングインフォメーションセンター