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2024年10月15日 週刊「世界と日本」2279号 より

分断か沈没か継続か民意に問う石破自民

 

 

評論家

ノンフィクション作家

塩田 潮

《しおた うしお》

1946年高知県生まれ。慶大法卒。雑誌編集者、月刊『文藝春秋』記者などを経て独立。

『霞が関が震えた日』で講談社ノンフィクション賞受賞。『大いなる影法師』、『昭和の教祖 安岡正篤』、『日本国憲法をつくった男 宰相幣原喜重郎』、『憲法政戦』、『密談の戦後史』、『内閣総理大臣の沖縄問題』、『危機の権力』、『解剖 日本維新の会』、『大阪政治攻防50年』。近著に『安全保障の戦後政治史』など著書多数。

 10月1日、石破茂首相が登場した。9月27日の自民党総裁選は決選投票での逆転勝利だった。国会議員票は189対173で、高市早苗氏との差はわずか16票である。この結果を見ると、自民党は大きく勢力2分の党内分裂状態と映る。

 石破、高市の両氏は路線や理念では、共に「保守・右寄り・タカ派」を自認するが、大きな違いもある。石破氏は田中角栄元首相、高市氏は岸信介元首相の政治の継承者という顔だ。その意味で、今回の総裁選は戦後保守政治の2潮流の対戦という一面もあった。

 石破氏はかつて取材で、「政治の師は田中さん」「民意を知り、民意を実現するのが政治、という姿勢を学んだ」と答えた。

 

 高市氏については、2021年の総裁選の翌日、安倍晋三元首相がインタビューで「祖父の岸が築いた自民党の本来の役割と目指す方向を見つめ直す。そのために擁立した」と明かした。3位に終わった高市氏を「岸政治の再現者」と見立てて支援したのだ。

 自民党の保守路線には、予算ばらまきや既得権益確保を望む層も含め、草の根の国民の声を大切にする民意型と、伝統的思想に基づく「国家・国益重視」の理念型の2つの基本形がある。石破氏は民意型、妥協を許さない国家主義者の高市氏は理念型の代表選手だ。

 

 争点のテーマでは、憲法改正、靖国神社参拝、集団的自衛権行使、選択的夫婦別姓が議論となる。

 石破首相は「憲法第9条2項の削除」を唱える改憲派だが、現実の政治では「改憲より経済成長」が持論で、改憲は「急がず」という立場だ。対する高市氏は総裁選の党主催討論会で「『日本人の手による憲法』への幅広い改正」を訴えた。積極的改憲論者である。

 靖国では、首相に近い防衛相の中谷元氏は石破氏について、「公式に参拝したことがない。中国や韓国に対しても排他主義的ではない」と評した。一方の高市氏は総裁選出馬の記者会見で「国策に殉じ、祖国を守ろうとされた方々に敬意を」と参拝続行を明言した。

 集団的自衛権では、14年に安倍内閣が行使容認、安全保障法制の制定に舵を切った。当時、高市氏は自民党政調会長として政策面で政権を下支えした。

 

 14年の内閣改造で、石破氏は防衛相就任要請を断った。代わって引き受けた中谷氏が安倍氏と石破氏の差異について「集団的自衛権容認という点は同じだが、安倍さんは『限定的容認まで。それ以上は改憲が必要』と。石破さんはそうではなかった」と回顧した。石破氏は「現憲法下でも集団的自衛権の幅広い行使は可能。そのために安保法制の制定を」という考え方だった。

 注目の選択的夫婦別姓でも、総裁選で姿勢の相違が明らかになった。積極派の石破氏は「基本的には賛成」と唱える。消極派の高市氏は「旧姓を通称使用できるように地方自治体などに義務付けを」という点にとどめた。

 

 高市氏は石破政権の人事で総務会長就任要請を断り、「協力拒否・無役」を決めた。安倍氏は12年の総裁選で同じく逆転勝ちし、直後の人事で相手方の石破氏を幹事長に起用した。高市氏はその例を手本に、幹事長なら受諾の方針だったが、望みがかなわず、「党内野党」を選択した。

 とはいえ、自民党でナンバーツーに躍り出た高市氏は、現段階では誰もが認める「ポスト石破」の最有力である。「石破政権の早期終結」も視野に、「岩盤支持層」など、党内外の高市支持勢力の結束維持と基盤拡大を最優先にするのが得策という計算だろう。

 

 その点では異論もある。麻生太郎元首相は政権獲得前の07年と08年、1年で終わった第1次安倍と福田康夫の両政権の末期、共に約1カ月だけ幹事長を務めた。当時、少数派ながら福田退陣の直後に政権を握ったのは、2代続けて幕引き役を引き受けたのが幸いしたという分析もある。

 麻生内閣で官房副長官だった腹心の鴻池祥肇氏はその場面を振り返って、「政治家として一番大事なのは、泥船に飛び乗って一緒に沈むこと。桟橋で見送って、泥船が沈むのを見ていたら、誰も敬愛しない」と語った。

 

 高市氏の強みは、揺るがない保守思想、1993年の衆議院初当選以来、自由改革連合、新進党、自民党と歩きながら約30年を生き抜いてきた政治家としての生命力などだ。

 他方、弱点は、我が強く、自己中心的で、しばしば「人柄に難あり」と評されてきた個性、といわれる。猛進型の裏返しで、バランス感覚、複眼思考、柔軟性に欠ける点も克服課題のようだ。

 僅差の惜敗の直後、相手方の弱体新政権にどう対応すべきかという判断では、もしかすると、荒波に船出する泥船の新政権を桟橋で見送るのではなく、沈没も覚悟の上で泥船に同乗するという選択肢を考慮したほうがよかったかもしれない。

 

 保守2大潮流という党内構図を抱えた自民党の今後はどうなるのか。民意結託型の石破首相は「民意に聞く」という自分流に徹していきなり衆議院の解散・総選挙というカードを切った。答えは総選挙の結果次第だが、大きく2つの「次代」が予想できる。

 第1は、衆院選で自民党が何とか単独過半数を確保し、泥船ながら、「石破丸」が沈没せずに航海を続けるケースである。結果、党内対立を超克して、自民党のもう一つの伝統である「包括政党」という持ち味を発揮できれば、「大逆風」という現在の党危機の克服も不可能ではないが、視界ゼロだ。

 第2は、自民党の単独過半数割れで、政治大激動・政党大再編の幕が開く展開である。「混乱政治・日本弱体化・失われた時代」の再来という悲劇的な予測も少なくないが、大激動・大再編の始まりが新しい日本の夜明けとなる可能性もないとはいえない。

 自民党の2つの潮流を背負う石破首相と高市氏は、日本政治の旧構造と旧体制の幕引き役で終わるのか、それとも新時代の扉を開く先導役となるのか。民意の回答が、次の衆院選の第一の見所である。

 


2024年10月15日 週刊「世界と日本」2279号 より

安定的な皇位継承策、時計の針戻さず実現急げ

 

 

麗澤大学 教授

八木 秀次

《やぎ ひでつぐ》

1962年生まれ。早稲田大学法学部卒、同大学院政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。憲法学専攻。教育再生実行会議や法制審議会民法(相続関係)部会など政府関係会議の委員を歴任。いち早く皇位の男系継承維持と旧宮家の皇籍復帰を提唱、平成以降の皇室に関する政府の有識者ヒアリングの全てに招かれた。

  安定的な皇位継承をめぐって衆参両院議長の下で各党の意見集約が行われている。九月下旬に中間報告を首相に提出したが、各党にはなお意見に隔たりがある。議長の指導力の下、早急な法制化が望まれる。

 

 議論の前提となるのは、政府の「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」の『報告』(令和三年十二月)が示した案だ。

 その附帯決議(平成二十九年六月)には「政府は、安定的な皇位継承に関する諸課題、女性宮家の創設等について(中略)検討を行い、その結果を、速やかに国会に報告すること」と明記されていた。政府は『報告』を国会に報告したが、附帯決議に「報告を受けた場合においては、国会は、安定的な皇位継承を確保するための方策について、『立法府の総意』を取りまとめられるよう検討を行うものとする」としていたにも関わらず、国会は二年半も放置してきた。

 なお、附帯決議が「安定的な皇位継承に関する諸課題、女性宮家の創設等について」とする部分はいわゆる女性宮家の創設を提案したものではない。諸課題の検討に当たって一つの例示としたものだ。後述のように有識者会議は検討の結果、女性宮家の創設を否定している。

 

 有識者会議の『報告』は、基本的な考え方として「皇位継承の問題と切り離して」と述べている。「今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、次世代の皇位継承資格者として悠仁親王殿下がいらっしゃることを前提に、この皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」とし、「悠仁親王殿下の次代の以降の皇位の継承について具体的に議論するには現状は機が熟しておらず、かえって皇位継承を不安定化させる」としている。これは悠仁親王殿下を差し置いて「愛子天皇」の即位はないとの認識を示すものだ。

 その上で、皇族数の確保を図ることが「喫緊の問題」であるとして「様々な方策を今のうちに考えておかなければなりません」と具体策を示している。現状では皇室会議の議員・予備議員の確保や公務の分担に支障を来している。

 

 現行の皇室典範第一条は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と規定している。天皇としての正統性は何かを示した最も重要な規定であり、皇位継承の原理を規定したものだ。天皇の地位には初代天皇からの純粋な男系の子孫だけしか就けない。推古天皇など過去に八人十代(二人は二度即位)の女性天皇は存在したが、何れも歴代天皇の男系女子であり、皇族以外の男性と結婚した女性天皇や内親王・女王の子が天皇や皇族となった例はない。女系(男系でない血統)は天皇や皇族としての正統性を欠くからだ。

 今さらのように女性・女系天皇の可否を議論しようとする政党もあるが、時計の針を女性・女系天皇を容認した小泉純一郎内閣の有識者会議報告(平成十七年十一月)に戻すものでしかない。その後、悠仁親王殿下が誕生され、皇位継承に関する理解が少なくとも政府レベルでは深まったこともあり、小泉内閣の有識者会議報告や野田佳彦内閣での女性宮家創設の検討(平成二十四年)は白紙に戻された。

 

 『報告』は、具体的に①内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を維持する、②皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする、③皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする—の三案を示している。何れも歴史的な前例がある案だ。

 ①は、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持するが、配偶者と子は皇族の身分を有せず、一般国民としての権利・義務を保持し続けるとする。徳川第十四代将軍家茂と結婚した和宮親子内親王などの前例を挙げている。立憲民主党の一部には女性宮家創設を想定して配偶者と子も皇族とすべきとの主張もあるが、『報告』は皇位継承資格の女系への拡大に繋がるとして否定している。

 ②③でいう「皇統に属する男系の男子」とは昭和二十二年十月に皇籍を離脱した伏見宮系のいわゆる旧十一宮家の皇族男子の子孫である男系男子のことだ。『報告』は「これらの皇籍を離脱した旧十一宮家の皇族男子は、日本国憲法及び現行の皇室典範の下で、皇位継承資格を有していた方々」であるとし、その男系男子孫が皇族となることは正当としている。

 ①②で十分な皇族数が確保できない場合に③を検討するとしている。②③は将来の皇位継承を男系で繋ぐための措置でもある。なお、三案はどれか一つを選ぶというものではなく、①と②はセットとして構想されている。

 これまでの各党の議論と衆参正副議長の下での意見陳述は三案の詳細な論点が詰められているとは言い難い。有識者会議の事務局は『報告』に先立って『事務局における制度的、歴史的観点等からの調査・研究』(令和三年十一月)を会議に提出し、今後の法改正で検討すべき論点を提示している。

 

 ①について、時限的ではなく恒久的な措置とすることが適切としている。今後、皇族数が大幅に増加することが想定し難く、時限的とした場合、終期間際に内親王・女王の人生に大きな影響を与えることを理由としている。現在の内親王・女王については婚姻に際して皇籍離脱も可とするが、制度改正後に生まれる内親王・女王には恒久的な適用が適切とする。明示はないが、内親王のみでなく、女王も対象となる。②の制度導入で生まれる女王も想定している。恒久的な措置であれば、立法形式は特例法でなく、皇室典範改正が必要となる。

 婚姻後の戸籍上の取扱は、内親王・女王は皇統譜に残り、配偶者と子は戸籍に登録され、戸籍の身分事項に内親王・女王と婚姻した旨を記載する。外国人と結婚する際と同様の措置を取るとする。警備や皇族費に関する措置も必要となろう。

 

 ②については、恒久的な措置としないことを示唆している。立法形式は皇室典範改正ではなく、皇族の養子禁止を一時的に解除する特例法になろう。立憲民主党からは、旧宮家の当事者の意向を確認してから立法措置を講じるべきとの意見も出されているが、有識者会議事務局は「法律は一般性(不特定多数の人に対して、不特定多数の事案に適用されること)を有していなければならない」ことから「個別処分的立法は難しい」とする。特定の人物を対象にした立法措置は認められず、「皇統に属する男系の男子」を対象とする。立法措置を先行させるということだ。

 同じく立憲民主党から憲法十四条の禁止する「門地」(血筋、家柄)による差別との指摘もあるが、内閣法制局は皇室制度の円滑な運用のために「現在一般国民である皇統に属する方を新たに皇族とすることを可能とする制度を法律によって創設すること」は「憲法が許容している」としている(令和五年十一月十七日、衆議院内閣委員会)。

 

 ②が旧宮家の男系男子を直接皇族とするのではなく、現在の皇族との養子縁組を経て皇族とするのは国民の理解を得てソフトランディングさせるための法的なテクニックだが、皇族としての身分取得の法的根拠を養子縁組とすることからやや複雑な制度設計となり、検討課題もある。

 養親側や養子側による養子縁組解消が、当事者の意思のみによって可能であれば、皇族数の確保や皇室の連続性・安定性に影響を与えるとし、皇室会議の承認が必要とする。

 寡妃(親王が薨去した親王妃)が養親となる場合(三笠宮家や高円宮家を想定)、養子は養方の血統において歴代各天皇の嫡男系嫡出の子孫とはいえない(民間出身の妃の養子となる)が、これを認めるかも検討課題としている。

 養子縁組によって皇族となった場合の身位は養方によらず実方である旧宮家の血統に従い、摂政や国事行為臨時代行の就任順位も実方によるとしている。

 『報告』は、新たに皇族となる「皇統に属する男系の男子」には皇位継承権を付与しないとし、子の代への言及はないが、自民党は子の代には皇位継承権を付与すべきと主張している。将来の皇位継承に繋がる案として主張を貫けるかも問われている。

 


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