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2025年6月2・16日号 週刊「世界と日本」2294・2295号 より

トランプ関税に備える

 

インド・モディ政権の期待と懸念

 

防衛大学校 教授

伊藤 融

《いとう とおる》

1969年広島県生まれ。中央大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程後期単位取得退学、博士。在インド日本国大使館専門調査員、島根大学法文学部准教授等を経て2009年より防衛大学校。2021年4月より現職。『新興大国インドの行動原理―独自リアリズム外交のゆくえ』、『インドの正体―「未来の大国」の虚と実』など著作多数。

 世界が戦々恐々とするなか、インドはトランプ2.0の発足に冷静だった。いや、モディ政権に関して言えば、むしろ心から歓迎したというのが本音だろう。

 というのも、バイデン民主党政権との間では、半導体や戦闘機エンジンなど機微な分野も含めた協力関係が進んだのは確かだが、ロシア非難や制裁に同調せず、ロシア産の原油や肥料を買い増しするインドの姿勢や、インド国内で進む民主主義や人権、宗教の自由の後退、さらにはカナダや米国でのインド諜報機関による標的殺害計画疑惑などを巡って溝も広がっていたからである。その点、トランプ氏は第一期政権期にモディ首相と極めて相性が良かっただけでなく、こうした価値観を巡る問題に頓着しないとみなされていた。また、ウクライナ支援に消極的で戦争終結を求めるトランプ氏の立場は、ロシアとの戦略的関係を維持したいインドの方針と合致するはずだと考えられた。

 

 もちろん、「アメリカ・ファースト」、「アメリカを再び偉大に(MAGA)」を掲げるトランプ氏に何の懸念も抱かなかったというわけではない。トランプ氏は選挙戦中から、「関税王」とか「関税乱用国」などと、インドへの名指し非難を繰り返し、貿易を巡ってインドに注文を突き付けてくることは予想されていた。そもそもトランプ1.0の2019年、米国は一般特恵関税制度(GSP)の対象からインドを除外して途上国としての優遇措置を剥奪し、反発するインド側は米国からの輸入品の関税引き上げで報復したという経緯がある。その意味では、「貿易戦争」を仕掛けてくることは織り込み済みだった。

 

 モディ首相は今年2月、石破茂首相らに続き、いち早くホワイトハウスに招かれた。それはトランプ2.0がインドを重視していることの証左であった。貿易問題が議題に上ることを念頭に、モディ訪米前にインドはハーレーダビッドソンや自動車、スマートフォン部品の関税引き下げを発表して先手を打った。それでも、トランプ大統領はモディ首相の面前で、インドの高関税を「大きな問題だ」と露骨に不満を示した。これに対し、インド側は今秋までに懸念事項に対処する二国間貿易協定をまとめることに合意した。

 この首脳合意に基づき、二国間交渉が進むなか、4月2日にトランプ大統領は世界各国への「相互関税」リストを発表した。インドへの関税は日本を上回る26%とされたが、日本や欧州で驚愕の声が上がったのとは対照的に、インドはここでも泰然自若としていた。

 

 インドの落ち着きぶりにはいくつかの要因がある。まずインド経済はそもそも内需依存型で、関税引き上げが産業界に及ぼすマイナスの影響は、日本のような国と比べると限定的である。そもそもトランプ大統領が問題視しているのは、インドの輸入関税そのものというよりも、米国が抱える二国間の貿易赤字であると思われるが、これについては、たとえば石油やガスの購入を増やすことでほぼ解消できると思われている。

 最も重要なのは、トランプ大統領にとっては、一時は145%もの関税を課すと発表した中国こそが本丸の標的であることには変わりはないという点である。だとすれば、トランプ関税は中国との競争においてインドに有利に作用する。そのうえ、ASEAN諸国やバングラデシュ、スリランカなど他の輸出競合相手は、インドよりも高い税率を設定されていることを考えれば、世界の企業はインドを脱中国の生産拠点としてみなすだろうとの自信である。

 

 実際、アップル社は米国向けiPhoneの大半をインドで製造する計画を発表した。これに対し、トランプ大統領はその場合には25%の関税を別途支払うことになるなどと牽制したものの、米国内で製造を完結するというのは非現実的なのは火を見るより明らかである。インドへの投資が進むはずだ。そんな楽観論が広がっている。

 他国に先駆けて進んでいる二国間交渉では、インド側は一定量までの自動車部品や鉄鋼の関税ゼロを提案しているなどとされる。第一次産業が依然として就業人口の半数近くを占めるインドの現状を踏まえると、主要農産物の自由化を受け入れることはないであろうが、それ以外の分野では譲歩の余地がある。トランプ関税という外圧が、むしろインドの保護主義的な政策を転換し、競争力を高める改革のきっかけになると期待する向きもある。

 実際、トランプ関税を意識した2025年度予算では、EV用バッテリー製造の資本財、銅、コバルト粉、リチウムイオン電池を含む12の重要鉱物のスクラップに対する関税免除が発表され、自動車業界はインドでの製造を後押しするものとしてこれを歓迎した。

 

 他方で、モディ政権は「トランプペース」での交渉を避ける対抗策も打ち出している。5月に入り、インドは米国が3月に発動した25%の鉄鋼・アルミニウム関税に対し、報復措置を取る意思を世界貿易機関(WTO)に通知した。また、トランプ関税を牽制するかのように、一時は暗礁に乗り上げていた英国との交渉を一気にまとめ上げ、5月、印英自由貿易協定(FTA)合意を発表した。例えばインド産のエビが最大の消費国である米国から締め出された場合には、英国という新たな市場で売ることが可能になると期待されている。英国のみならず、欧州連合(EU)やニュージーランドなどともFTA交渉を加速させ、トランプ関税への対応を急いでいる。

 トランプ関税と今後ありうる米中貿易戦争を巡ってインドが恐れているのは、世界経済自体が停滞し、そのことがインド経済の成長の妨げになるという点だが、これは自国ではどうにもならない。もう一つの懸念は、米市場から締め出された中国や他の国々の輸出品が、ダンピングされて大量に流入するというシナリオである。

 14億の成長市場を世界が見逃すはずはないからである。すでにその兆候は見え始めているが、これに対しては、その都度、反ダンピング関税を発動するという対処療法を採用していくものと思われる。懸念はあるが、インドでは、トランプ関税は総じて自らの成長と改革の機会になるとのポジティヴな受け止め方が支配的である。

 


2025年7月7日号 週刊「世界と日本」2296号 より

宙ぶらりん状況が続くのか?

 

~参院選後の政治の行方~

 

政治ジャーナリスト

 

島田 敏男

しまだ としお

1959年山梨県甲府市生まれ。81年中央大学法学部政治学科卒、日本放送協会入局。福島、青森放送局記者を経て、報道局政治部記者となり中曽根内閣以降の政治報道に携わり、2001年より解説委員となり「日曜討論」キャスター、解説主幹、解説副委員長、名古屋放送局長等を歴任し、24年より現職。

 7月20日投開票の参議院議員選挙は、「コメ」そして「給付か減税か」が大きな焦点になっている。コメの流通目詰まりに伴う価格上昇を抑えるために起用された小泉進次郎農水相。ピンチヒッターが放った「随意契約での備蓄米売り渡し」がどこまで功を奏するか。そして自民党・森山幹事長が先頭に立って訴える「将来世代に社会保障負担を押し付ける消費税減税はNO」という主張だ。

 「野党が主張する消費税減税や消費税廃止に対抗するには弾が必要だ」こういう自民党内の切実な声に押され、石破首相は「ばらまきではない」と強弁して、国民1人当たり2万円の現金給付、子どもには1人2万円の追加給付などを党の公約に盛り込むことを決めた。4月に「カネで票を買うのか」と世間から酷評されて一度断念した現金給付を、選挙直前に蒸し返した形だ。この辺のモタモタ感は、慎重なあまりに後手に回ることが多い石破首相らしいとも言える。

 

 非改選も加えた参議院の自民党現有勢力は113で、単独では125の過半数に届かないが、公明党の27を加えて何とか140。衆議院が自公で過半数に届いていない状況でも「少数与党政権」を維持できているのは、この参議院の命綱があるからだ。

 ではこの命綱を保つためには今回の改選で何議席が必要か?自公の非改選議席は74(非改選の関口議長は無所属)なので、50を自公で確保すれば関口議長を加えて過半数の125になる。

 参議院選挙では毎回言われることだが、全国に32ある1人区での勝敗と、比例代表での議席の伸長が結果を左右する。各種世論調査の多くは、6月に入って石破内閣の支持率と自民党の政党支持率が横ばいから若干上向く傾向を見せた。随意契約での備蓄米売り渡しによって、各地のスーパーマーケットなどに5キロ2000円程度の値札が見えるようになったというアナウンス効果が支えになったのだろう。しかし、この「一種の猫だまし」のような緊急措置で有権者の気持ちが大きく自公の与党支持に向かうかは即断できない。

 

 先月22日の東京都議会選挙でも、自民党は候補者を絞ったにも関わらず、現状維持の30議席から大きく後退。コメの大消費地の東京でも効果は限定的で神通力を発揮できなかった。参院選の投票日までに、コメがどこまで全国の消費者の気持ちをつかむかが焦点になる。

 昨年秋の衆議院選挙を振り返ってみよう。岸田首相の下で抜本的解決を図れなかった「政治とカネの問題」の煽りが石破首相に襲いかかった。これが大敗の最大の理由だ。6月22日に会期末を迎えた先の通常国会でも、この問題で各党間の考え方の隔たりは大きく、結論先送りのまま参議院選挙を迎えることになった。「国民は政治とカネの問題は忘れかけている」という楽観的な見方も存在するが、そう甘くないのではないか。この点は引き続き自民党にとっての懸念材料だ。

 仮に「非改選を含め参院も自公で過半数割れ」となれば石破総理は辞任せざるを得ない。参議院選挙前に党内には「石破降ろし」の動きは現れなかった。とはいえ、2回の国政選挙で続けて与党の過半数割れを招いてしまえば、引責辞任するのが当然の姿だ。それを引き留める石破側近は限られるだろう。

 

 一方で野党側はどうかといえば、野党第一党の立憲民主党の求心力は政権交代を実現するほど強くない。ルーツは一緒なのに最も深い溝を築いているのが国民民主党。衆議院選挙で議席を4倍増させた成功体験から、2匹目の泥鰌を狙って参議院の1人区でも積極的に候補者を擁立し、野党候補一本化を探る立憲民主党の打診を断る選挙区が相次いだ。ただその国民民主党は、元衆議院議員の山尾志桜里氏に国政復帰を求めて比例代表候補に祭り上げながら、過去のスキャンダルに対するSNS上の批判などを受けて公認取り消しを決めた。玉木代表のガバナンス欠如を露呈したこの出来事は、無党派層の中の「よりましな中道保守勢力」という見立てに黄色信号を点滅させている。

 そして日本維新の会は近畿エリア以外では勢いがなく、共産党は長期低落の気配。いずれも自分たちの議席確保が最優先で「野党統一」「野党連携」といった声はどこにもない。

 

 こういう野党各党バラバラの状況にありながら、石破首相や森山幹事長が通常国会の会期末で解散・総選挙に踏み切り衆参同日選に突入する決断に至らなかったのは何故か。ひと言でいえば、自民党の勢いが上向きつつあるとはいえ、少数与党から脱する乾坤一擲の勝負に出るほどの支持を集める予測は成り立たなかったということだ。

 選挙対策に関わってきた自民党執行部のベテラン議員は、「内閣支持率が40%台後半、政党支持率が40%台半ばまで上向けば同日選挙が選択肢に浮上するのだがなあ・・・」

 ゴールデンウイーク明けの終盤国会に差し掛かったころの希望的発言だった。

 確かに自民党に対する国民の支持が、今後その水準まで急速に上向き、参議院選挙で自公圧勝、野党自滅ということにでもなれば、参院選後の臨時国会で解散・総選挙に踏み切ることがあってもおかしくない。とはいえ難題のトランプ関税対応はG7サミットでの日米首脳会談を経ても着地点が見いだせていない。秋口に向けたコメの価格も石破首相が国会で答弁した「5キロで3000円台」に進むかは不透明だ。

 

 こうして見ると、野党各党の要求を受け止めながら匍匐前進を続ける石破首相のもとで、引き続きハングパーラメント継続=宙ぶらりん状況が続く事態を覚悟しなくてはならないだろう。昨年秋からの8カ月余りを見ると、宙ぶらりん状況の下での政権運営は、度重なる与野党協議で手間はかかるが、政治過程を可視化する契機になった面もある。

 人口減少・少子高齢化が急速に進み、社会保障と税を巡る本格的な議論が待ったなしになってくるだろう。国民にとって痛みを伴う重い課題だ。安定した政権の下での「お任せ政治」から脱却することが、日本の政治家と国民に迫られている。

 


2025年7月7日号 週刊「世界と日本」2296号 より

イスラエル・ガザ紛争

 

日本はどのように取り組んでいくのか

 

日本エネルギー経済研究所理事

中東研究センター研究顧問

 

保坂 修司

《ほさか しゅうじ》

日本エネルギー経済研究所理事・中東研究センター研究顧問。慶應義塾大学大学院修士課程修了、在クウェート日本大使館、在サウジアラビア日本大使館、中東調査会研究員、日本学術振興会カイロ研究連絡センター長、近畿大学教授等を経て、現職。日本中東学会会長を兼任。おもな著書に『ジハード主義』(岩波書店)など。

 2023年10月7日以降のガザにおけるイスラエルとパレスチナのイスラーム主義組織ハマース等との衝突は、発生以来1年半を経過したが、解決の目途すら立っていない。犠牲者数はガザだけで5万人を超え、その大半が女性や子どもを含む民間人であった。勝敗はすでに決しているにもかかわらず、イスラエルは攻撃の手を緩めていない。ガザは瓦礫の山と化したうえに、食料や医薬品など援助物資も届かず、住民は飢餓や病気に苦しめられている。

 紛争勃発直後、日本を含むG7メンバー国は、ハマースの攻撃をイスラエルへのテロだと糾弾、イスラエルにはハマースへの反撃の権利があると主張した。米国は、バイデン政権時代こそ、イスラエルの過剰な反撃に不快感を示すことがあったが、トランプ政権になってからは、そうした批判も聞こえなくなり、事実上、イスラエルにフリーハンドを与えてしまっている。

 

 他方、中東のなかでも、ハマースを支援していたイランやレバノンのシーア派武装組織ヒズバッラー、イエメン北部を占拠するフーシー派等いわゆる「抵抗の枢軸」はハマースの攻撃を容認したうえで、イスラエルの対ガザ政策にこそ原因があるとして、イスラエルを非難、実際にイスラエルと軍事衝突を繰り返した。しかし、イスラエルの攻撃を食いとめられていない。

 それ以外の国のガザに関わる立ち位置は基本的にこの両極のあいだに入る。たとえば、パレスチナの大義を支持するアラブ諸国の多くは、イスラエルとの直接衝突を避けながら、イスラエルのガザでの軍事作戦を断罪、パレスチナ問題の抜本的な解決の必要性を強調した。ロシアや中国もこの立場に近い。また、ガザの人道状況悪化につれ、EUやNATO加盟国のなかからも、イスラエル非難の声が高まっている。

 

 国際社会の大半は、イスラエルとパレスチナの2つの国が共存する、いわゆる「二国家解決」を支持しているが、当事者たるイスラエルのネタニヤフ政権、それを支援する米トランプ政権、さらにハマースとそれを支援する抵抗の枢軸は二国家解決には、いろいろ条件をつけたり、否定的だったりする。

 しかし、ガザ紛争の泥沼化で西側諸国のなかからも二国家解決の前提ともなるパレスチナ国家承認の動きが出てきたのは皮肉であろう。すでに国連加盟国の過半数を超える約150カ国がパレスチナ国家を承認しているが、西側諸国を中心に約50カ国は未承認である。そのなかでスペイン、アイルランド、ノルウェーが2024年5月にパレスチナを国家承認した。また、フランスは、中東諸国がイスラエルを承認する代わりに、いまだパレスチナ国家承認に向けた議論を行う会議をサウジアラビアと共同で開催すると発表した。

 

 こうした状況のなかで日本はどうしてきたか。日本は、上述のとおり、事件勃発以来、米国などG7と歩調を合わせてきた。2023年には日本はG7の議長国であったため、G7の意見をまとめる必要があったことも影響しているだろう。直近でいえば、なるべくトランプ政権を刺激したくないという思惑も透けてみえる。

 日本の外交は米国追従との批判を受けることが多いが、こと対中東政策にかぎっては、かならずしも米国と同調してきたわけではない。ガザ戦争の、ちょうど50年前、1973年10月6日、第4次中東戦争が勃発した。このとき起きた、いわゆる「石油ショック」で日本はパニックに陥った。そのため日本は、米国からの同調圧力をはねのけ、対イスラエル外交を抜本的に見直すとの声明を出すとともに、アラブ諸国に対する大規模な経済支援を約束、アラブ諸国に石油禁輸措置を解除させることに成功した。以後、日本は、こと中東外交に関してはエネルギー安全保障を踏まえた独自外交を展開することが珍しくなくなったのである。

 

 しかし、近年、地球温暖化等を含め、石油の重要度が低下し、中東で事件が起きても、石油ショックのような事態になりづらくなると、日本の中東外交は米国寄りにシフトしていった。今回のガザ戦争では、日本は早い段階からハマースの攻撃をテロだと厳しく非難する一方、イスラエルの反撃に関しては「深刻に憂慮」といった程度の言及にとどまっていた。また、日本は、ガザへの緊急人道援助を約束していたが、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)職員がハマースのイスラエル攻撃に関与していたとして米国がUNRWAへの資金供与を停止すると、日本もそれに同調することになった(のち解除)。

 しかし、ただでさえ、中国の経済的・政治的なプレゼンスが中東で増大し、逆に日本の地盤沈下が顕著になるなか、このまま中東の問題で手をこまねいていれば、日本の埋没はますます加速するだろう。個人的には中東地域は日本のエネルギー安全保障や経済の浮揚で今後も重要な役割を果たすと考えている。中東との関係が大事であるなら、G7ではじめてパレスチナを国家承認するといった大胆な政策を打ち出してもいいはずだ。

 

 ガザ戦争勃発後、日本政府はパレスチナの国連正式加盟に関する国連安保理決議案に賛成した(決議は米国の拒否権で否決)が、日本政府は、パレスチナの国連加盟と日本政府のパレスチナ国家承認は別問題だとし、国家承認には及び腰である。しかし、ガザ情勢のさらなる悪化で国内からもパレスチナ国家を承認すべきとの声が高まっている。

 

 本稿執筆中の6月13日、イスラエルがイランの軍事施設等を攻撃、イスラーム革命防衛隊司令官や原子核物理学者らを殺害した。イランもまたイスラエルに対し報復攻撃を実施、そのため、フランスとサウジアラビアが共同主催する予定の二国家解決に向けた国際会議も延期され、中東における全面的軍事衝突の恐れが現実味を帯びてきた。日本は、イスラエルとイランの軍事的応酬に懸念を表明、両国に自制を求める外相談話を発表したが、これでは言わないよりはマシという程度にすぎない。カナダでのG7サミットでも、イスラエルの自衛権を支持し、イランを非難する声明が出された。日本は、パレスチナ問題解決にあたって、G7の結束ではなく、G7とそれ以外の国や地域との調整役を果たすことでこそ、外交力を発揮できるのではないだろうか。

 


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