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刻々と変化する国際情勢を各国の政治・経済など様々な視点から考察する。

2019年2月18日号 週刊「世界と日本」第2143号 より

米中摩擦 その歴史的本質を探る
厳しさを増す、米国の対中「脅威認識」

 

防衛大学校長 国分 良成 氏

《こくぶん・りょうせい》
1953年東京生まれ。81年慶應義塾大学院修了後、同大学法学部専任講師、助教授、教授、東アジア研究所長、法学部長。2012年4月より現職。ハーバード大、ミシガン大、復旦大、北京大、台湾大の客員研究員を歴任。専門は中国政治・外交、東アジア国際関係。元日本国際政治学会理事長。著書に『中国政治からみた日中関係』など。

 米中関係は、ジョン・ヘイ国務長官による1899年の門戸開放宣言に始まったと言われる。今から120年前のことである。西部開拓を通じて西海岸に到達した米国は太平洋国家として登場した。しかし、当時この地域はすでに多くの西欧列強が進出し、後発の米国が中国大陸に入り込む余地はなかった。それが門戸開放と機会均等の訴えとなった。
 中国大陸に対する米国の関心はやがて日本と衝突し、太平洋戦争となった。日本の敗退後、国民党と共産党の内戦が勃発し、米国は国民党を支援したが共産党が勝利した。米国は中華人民共和国ではなく、台湾に逃れた国民党の中華民国を正統政府と認めた。その直後の1950年6月に朝鮮戦争が勃発した。
 米国はこれに介入したが、中国の参戦によって米中は直接戦火を交えた。また、50年代にも台湾海峡で何度か米中間の危機が発生した。このように、戦後のアジアにおける冷戦は米中冷戦であった。
 米中冷戦の終結は、71~72年の米中接近とニクソン訪中であった。米中を接近させたのはソ連という巨大な敵対パワーの存在であった。その後、米中は79年に国交正常化、80年代には、米ソ新冷戦の中で米国は中国との連携を強めた。
 この良好な関係が崩れかけたのは、89年の天安門事件であった。米国は経済制裁を科し、高官の接触を禁止したが、実際には事件直後から米中間では秘密裏の接触が行われていた。
 そして92年に鄧小平が社会主義市場経済のもとで大胆な市場化を進めると、米中間の溝は一挙に溶解した。クリントン政権は発足当初、中国の人権問題を糾弾したが、成長路線が本格化すると江沢民との間で戦略的パートナーシップ(伙伴)関係を結んだ。
 米国はこれ以降、「エンゲージメント(関与)政策」を掲げ、中国を国際社会に引き入れることを目標とした。つまり、この段階で米国は中国を発展途上国として認識し、中国も鄧小平のもとで米国に対して低姿勢を貫く「韜光養晦(とうこうようかい)」に徹していた。
 21世紀に入り、ブッシュ政権は台頭する中国に対決姿勢を示したが、9.11以後は対テロ戦における中国の協力が必要となり、融和姿勢に変わった。この時代の対中姿勢の基本は「責任あるステークホルダー(利害関係者)」であり、経済的に巨大化し、国際社会の重要な一員となった中国に責任ある行動をとるよう促すものであった。
 つまり、この段階で米国は中国を台頭するパワーとして認知したが、脅威認識はまだ低かった。
 オバマ政権は当初から中国批判を避け、経済を重視して共存姿勢を示した。しかし、2008年の北京オリンピック、10年の上海万博を経てGDPで世界第2位になると、中国は居丈高に自己主張を強めた。米国の対中警戒心が増幅されたのは言うまでもない。
 2016年、米大統領選でトランプ氏が勝利した。トランプ大統領個人は、現在にいたるまで中国の政治・安全保障問題に多くを語らず、もっぱら通商問題に集中している。今月末には米国の対中経済制裁発動の猶予が終わるが、世界的な株価の暴落を見るにつけ、共倒れを避けるべく落としどころを見いだしたいのがホンネであろう。
 しかし、米国の対中認識は民主党も含めて厳しさを増している。その象徴が言うまでもなくペンス副大統領の昨年10月の演説である。対中不信は通商だけでなく、一帯一路、政治、軍事、サイバーなど、すべての分野に及んでおり、最終的には中国の現体制そのものを問題にしているようにも見える。ペンス演説は最後の部分で中国の改革・開放の継続に期待を示しており、冷戦の一歩手前で踏み止まっている。
 中国はこれにどう対応するのであろうか。習近平主席は毛沢東とも鄧小平とも異なる。彼の父・習仲勲は文化大革命で毛沢東に敵視され、鄧小平とも天安門事件などに関して意見を異にした。習仲勲は共産党の中で毛沢東の極左でもなければ、鄧小平の右でもなく、強いて言えば文革の最大の犠牲者・劉少奇の正統的マルクス主義観に近かった。
 それ故であろうか、近年、息子の習近平が最も口にする理念は「マルクス主義」である。今後、習政権は米国の圧力回避のために一時的に対米融和を図るであろうが、党と国家の存続こそが最大の核心的利益である習政権にとって、米国の要求を簡単に受け入れることはできない。
 最後に、以上のような米中関係の歴史的考察から何が読み解けるのか。
 (1)歴史的に見れば、米中関係は対立局面から協調局面への復元力が強かった。それは、特に米中接近や天安門事件、あるいは9.11の場合などに顕著であった。
 中国側は一貫して米国を重視する一方で、米国の対中外交は、民主・自由の理念重視と経済・ビジネス重視の間を揺れる傾向があった。ただ、中国が経済発展するとともに、米国も経済・ビジネスを重視して対立から協調局面に変わることが多かった。
 (2)しかし、今後は不透明である。歴史が示すように、米国の対中認識は時の経過とともに徐々に警戒心を増してきた。90年代の「エンゲージメント」は発展途上国の中国をどう国際社会に引き入れるかであり、21世紀初頭の「責任あるステークホルダー」は台頭する中国に責任ある行動を促すものであり、両者ともに中国を「我々の側」にとらえていた。
 しかし最近のペンス副大統領の演説は、中国を既存の国際秩序に挑戦する「修正主義者」としてとらえており、脅威認識が前面に出ている。
 もちろん、ここから単純に米中冷戦に進むわけではない。米ソ冷戦の本質がイデオロギーというよりパワーやヘゲモニー(覇権)であったように、今日の米中間の亀裂は中国という異質なパワーに対する米国の脅威認識から広がっている。それだけに米中関係には以前ほどの復元力はなく、徐々に悪化する可能性が高い。
 (3)中国国内の状況に注目する必要がある。鄧小平の改革・開放路線をそのまま進めれば、共産党一党独裁の維持は難しくなる。習近平は時計の針を戻し、マルクス主義を唱えるが、それは時代錯誤である。マルクス主義で失敗したからこそ、改革・開放があった。しかも、中国社会と個人の意識は改革・開放によって多様化・多元化している。そうした中で、社会と遊離した政治的強権に何の意味があるのか。
 また、中国の経済成長は限界にきており、選挙のない中国で権力の正当性をどう担保するのか。民生を無視して軍事と重工業に偏りすぎたソ連が辿った運命を、中国は避けることができるのであろうか。外部から中国を変えることは難しい。問題の根源は内側にある。

 


2019年2月4日号 週刊「世界と日本」第2142号 より

中南米は今、2つのポピュリズム政権
ブラジル新大統領 左派路線から決別、親米へ
メキシコ大統領 「3度目の正直」で当選も・・・

 

山形大学客員教授 山﨑 眞二 氏

 2019年の「中南米情勢」の行方を占う上で、左右2つの「ポピュリズム(大衆迎合主義)政権」が注目される。ブラジルの右派ボルソナロ政権と、メキシコの左派ロペス・オブラドール政権だ。両政権成立の背景と特徴、課題などを探ってみた。

《やまざき・しんじ》
昭和46年東京外大卒。時事通信社に入り、南米特派員、ニューデリー特派員、ニューヨーク支局長を経て、外信部長、解説委員兼時事総合研究所主任研究員を歴任。現在は山形大学客員教授、早稲田大学大学院客員教授、時事通信社客員研究員、(社)ラテン・アメリカ協会理事。

ブラジル新大統領

 「国民が一つになり、家族を大切にし、ユダヤ・キリスト教的伝統を尊重しよう」―新年1月1日、ブラジル首都ブラジリアの連邦議会での就任式でボルソナロ大統領は、こう高らかに宣言、長年の左派路線からの決別と保守回帰を表明、同時に市場開放の推進を約束した。
 ボルソナロ氏は多くのメディアが伝えているように、これまでのブラジルの政治家とは異なるタイプ。元軍人だが、政治の素人ではない。7期28年にわたり下院議員を務めている。ずっと少数政党に属し、政治エリートではない点が特徴の1つ。徹底した左翼嫌いで、過去の軍事政権を礼賛し、治安改善のための武力行使を主張。
 これが“極右”政治家とも評されるゆえんだ。女性などへの差別的発言や「ブラジル第一」「ブラジルを再び偉大な国に」といった発言から、“ブラジルのトランプ”とも呼ばれるのは周知の通りだ。
 昨年10月の大統領選で当初、泡まつ候補扱いされたものの、第1回投票でトップに立ち、決選投票で左派の労働党候補を大きく引き離して当選したボルソナロ氏の勝因は明確だ。汚職まん延や治安悪化、経済不振を招いた旧来の政治への国民の絶望的不信感をバックに「改革者ボルソナロ対エリート既得権益層」という構図を描き、有権者の心をつかんだ。
 ブラジルでは2003年以来、長期にわたり労働党の左派政権が続いた。労働党政権は当時の資源ブームを背景に貧困層に手厚い社会政策を推進した。しかし、その後、資源価格急落により経済は失速、時を同じくして労働党幹部が絡む過去最大級の政界汚職疑惑が広まる。
 2014年のサッカー・ワールドカップ(W杯)や、16年リオデジャネイロ五輪の前後には、大規模な反政府デモが展開される事態に。この間、治安も急速に悪化した。労働党政権の社会政策で、あまり恩恵を受けなかった中間層の不満が増大。この中間層がボルソナロ氏を支持し、同氏勝利の大きな要因の1つになった。
 もう1つ、ボルソナロ当選の重要要因はキリスト教福音派の強い支持を受けたことだ。ブラジルではカトリック教徒が多数派だが、実はプロテスタントが人口の約2割に当たる4000万人もいる。ボルソナロ氏は、近年信者数が急増しているキリスト教福音派との親密な関係を築いてきた。この点でも、米国最大の宗教勢力といわれる福音派を重要な支持基盤とするトランプ大統領と共通する。
 ボルソナロ大統領は内政面では経済改革、汚職撲滅および治安回復を最優先課題とし、野心的な年金制度改革も目指す。しかし、大統領の与党は上下両院で少数派。議会とどのように折り合いをつけるかが大きなカギになる。
 対外面では親米路線が展開されるのは間違いない。一方、反米左派のキューバ、ベネズエラとの関係が冷却化するのは確実。また、ブラジルと中国の関係にも変化が起きる可能性もあり、ブラジル外交の大転換が予想される。

メキシコ大統領

 ボルソナロ政権発足1カ月前の昨年12月1日、メキシコでオブラドール大統領の就任式が行われた。新大統領は就任演説で汚職撲滅と治安回復に全力で取り組むと表明した。
 オブラドール氏は、以前から有力政治家として内外で名を知られていた人物。この点がブラジルのボルソナロ大統領とは異なる。オブラドール氏はかつてメキシコ市の市長を務め、その政治的手腕は高く評価された。2006年と12年の大統領選に出馬するも、いずれも次点に終わり、涙を飲んだ。昨年の大統領選で当選したのはまさに「三度目の正直」。
 大統領選勝利の背景には、右派系の2大政党による長年の特権エリート政治に対する、国民の強い不満と失望感がある。政府と麻薬カルテルとの間で06年から続く「麻薬戦争」の激化によって治安情勢が極度に悪化。国民の7割近くが日々の生活で身の危険を感じているとの世論調査結果もある。政治家や官僚の収賄、マネーロンダリング(資金洗浄)に関するスキャンダルも後を絶たない。
 一貫して不正や汚職追放を政治スローガンとし、過去の政権の治安対策を批判してきたオブラドール氏が、国民の半数以上から支持を集めたのは当然かもしれない。
 加えてメキシコ経済が近年、低成長が続く中、貧困や経済格差拡大の問題が深刻化。オブラドール氏が汚職を減らし、高級官僚の給与を削減してその分を社会政策の強化に充てると主張したことも、当選をもたらした重要な勝因だろう。
 同氏の政党「国民再生運動」(MORENA)も上下両院で大幅に躍進、第1党に。MORENAと連携する他の政党を合わせると、両院で過半数の議席を確保したのは大統領にとっては追い風となる。
 オブラドール大統領はポピュリスト的性格が強いものの、従来の中南米の左翼政治家とは違う点も多い。例えば、新自由主義的政策には明確に反対しているが、民間資本や外資も有効に活用すべきとも主張。大統領は確かにポピュリズムの流れに乗って登場した政治家ではあるが、旧来の社会主義を遂行しようとするガチガチ左翼ではないようだ。
 オブラドール大統領の“懸念材料”として多くのメキシコ専門家が一様に指摘する点がある。それは既に工事が始まっていた首都の新空港の建設中止を、簡易な「国民投票」で決定したことだ。大統領は選挙期間中から空港建設事業が汚職の温床で、コストが高すぎるなどと批判していた。
 しかし、国民投票といっても、有権者の1%程度の住民へのアンケート調査。「法的根拠のない住民調査で建設反対が多数を占めたとして中止を決定したのは横暴」(在メキシコ日本企業幹部)との批判が強い。国家の重要な政策をポピュリズム的手法で覆すことが今後も行われるとすれば、新政権の前途には暗雲が立ち込めることになろう。
 いずれにせよ、中南米の2大国、メキシコそしてブラジルで発足した新政権の行方は、今後の同地域の政治的潮流にも重要な影響を及ぼすことになりそうだ。

 


2019年1月21日号 週刊「世界と日本」第2141号 より

米中貿易戦争
ひとまず「休戦」か
米国内 「対中強硬」に一定支持が

 

拓殖大学教授 富坂 聰 氏

 12月1日夜、アルゼンチンの首都・ブエノスアイレスで、トランプ大統領と習近平国家主席の夕食会を兼ねた会談が行われ、世界が注目した米中貿易戦争は、ひとまず「休戦」となった。

《とみさか・さとし》 1964年愛知県生まれ。単身台湾に渡った後、北京語言学院を経て北京大学中文系に進む。『週刊ポスト』『週刊文春』記者を経てフリージャーナリストとして独立。『龍の伝人たち』で21世紀国際ノンフィクション大賞(現・小学館ノンフィクション大賞)優秀賞受賞。近著に『トランプvs習近平そして激変を勝ち抜く日本』。国家基本問題研究所企画委員。

 米側の発表では、2019年1月に予定されていた追加関税率の引き上げを90日間凍結し、米中が新たな通商協議を始めることで合意したという。「凍結」である以上、協議の内容次第では90日後に追加関税の引き上げに踏み切る可能性も残し、中国サイドが「宿題」を背負った形となった。
 中国側の説明には90日間という文言は見当たらないが、〈改革を深化させ、開放を拡大する〉ことで〈米国が関心を寄せる一連の経済貿易問題が解決される〉との表現で、アメリカの要求に応えていく姿勢を示した。
 アメリカによる徹底した“中国潰し”を期待していた論者には、極めて残念な結果―といっても何度も繰り返されてきたことではあるが―となったが、かといって米中が対立構造を完全に払拭(ふっしょく)でき「蜜月」へと向かう素地ができたかといえば、決してそうではない。
 ただ90日間の宿題という意味では、米中が合意にたどり着く可能性を示したと言えるだろう。
 中国はそもそも、アメリカと対立して政権が最も望む経済発展が実現できるとは考えていない。トランプ政権が対中貿易での不公正さに言及し始めた当初から、大幅な譲歩案を用意していたと考えられている。一方のアメリカも、中国による報復関税により、長期的には自国経済が痛むことは避け難いとの判断が働いていたはずだ。
 つまり、何らかの障害が間にあったものの、米中が折り合いをつける前提はあったと考えられるのだ。
 では、なぜ米中の対立はこれほど複雑にこじれ、激しい応酬を繰り広げるまでになってしまったのだろうか。
 1つには習近平政権が、見せかけだけで中身のない提案を続けたことがあるが、なんといっても対立の性格を大きく変えてしまったのは、ZTE(中興通訊股份有限公司)の問題だ。
 米側の再三にわたる警告にもかかわらず、イランに対し制裁を無視したハイテク部品を提供し続けたことで、同社が制裁の対象となり、最終的には倒産寸前まで追い詰められてしまった問題だ。
 中国の通信の未来を担い「5G時代の旗手」と位置付けられてきたZTEが、米国から基幹部品の提供を絶たれるだけで、たちまち干上がってしまうという弱さを世界にさらしてしまったのだ。
 ウィークポイントを知られてしまった中国は、貿易交渉にとどまらず対米外交において、大いに劣勢に置かれることになるのだが、ここで米政権内に「対中強硬派」が台頭するという変化が生じた。
 その典型的な動きが、中国がムニューシン財務長官との間でこぎつけた合意をひっくり返されたことだ。貿易戦争の緒戦で、同長官との共同声明(5月19日)で「(制裁は)保留」との言質を引き出した合意だ。
 これ以降のトランプ政権の対中攻勢は一気にボルテージを上げていく。
 ボルトン大統領補佐官(安全保障担当)、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表、ロス商務長官、ナバロ大統領補佐官などの発する声が高まり、中国が防戦一方の様相を呈していくのである。
 この時期の中国は、アメリカが強く求めていた金融緩和に関する具体的な措置を次々と打ち出し、上海では輸入拡大のための、「第1回中国国際輸入博覧会(CIIE2018)」を開催し、米国側の出席を呼びかけるなど妥協的な姿勢に終始した。
 だが、そんな中国の態度を一変させたのは、トランプ政権の周囲から中国を「安全保障上」の懸念としてとらえる声が高まると同時に、台湾問題で中国を刺激する言動が目立ち始めたことだった。
 いうまでもないことだが、台湾問題は、もし少しでも妥協すれば中国共産党が政権党としての資格を失う敏感な問題である。
 つまり、この問題に踏み込まれた瞬間から習近平政権は、合理的な判断を捨てても応じるしかなくなるのだ。これはトランプ氏が大統領選挙に勝利した直後に、台湾問題で従来のアメリカの対中政策を無視するような発言をして、中国が極度に警戒した当初への逆戻りといえよう。
 言いかえれば「経済がボロボロになろうと最後まで戦いに付き合う」ということになってしまったのである。
 米中対立の絡まった糸は、ここに極まったということだ。
 だが、先に触れたように本音のところで中国には米国と対立する意思はない。それでも台湾問題という絶対に譲ることのできない問題に踏み込んだ状況で、妥協策を示すこともできないのである。
 では、なぜ米中は、最終的にアルゼンチンで「一時休戦」へと至ることができたのだろうか。
 謎を解くカギは、実はペンス副大統領がハドソン研究所で行った講演にある。
 この演説は、メディアによっては中国への「宣戦布告だ」とまで表現されていただけに意外に思う読者もあるだろう。
 しかし見逃せないのは、中国を全否定するかのような講演のなかで「一つの中国政策を尊重し続ける」との一言を紛れこませている点だ。
 これが11月1日のトランプ・習近平電話会談へとつながったのである。
 ただ冒頭にも触れたように米中間に構造としてのライバル関係が定着したことは、ペンス演説の中で明確に「メイド・イン・チャイナ2025」政策を批判していることでも明らかだ。
 それはつまり、米国内に「対中強硬」を唱えることで得られる一定の支持が存在することを意味し、今後もことあるごとに中国バッシングは続くことを示しているのだ。

 


2019年1月21日号 週刊「世界と日本」第2141号 より

日韓の「文化・人的交流」支援に向けて

 

元文化庁長官 近藤 誠一 氏

 国際社会は、このところ急速に不透明さを増している。戦後の秩序に揺らぎが見え、各国は「国のありかた」、「国際関係の処し方」の基準を見失い、“将来の不透明さ”に戸惑っている。こうした中で明治開国150年を終え、御代の交替を迎えるいま、日本はどのようなかじ取りによって21世紀を生き抜くべきだろうか。それは、志を同じくする諸国、とりわけ近隣諸国との間に長期的利益を基礎にした協力関係を構築し、官民をあげてそれを維持するという、基本に戻ることである。

《こんどう・せいいち》 1972年外務省入省。広報文化交流部長を経て、2006年からユネスコ日本政府代表部特命全権大使。08年よりデンマーク大使。10年より13年まで文化庁長官を務め、三保松原を含めた富士山の世界文化遺産の登録を実現。現在、近藤文化・外交研究所代表、東京都交響楽団理事長、東京藝術大学客員教授などに就任。

 典型的なケースが日韓関係である。1965年の日韓正常化以来、両国関係はある時は国際政治のうねりに翻弄(ほんろう)され、ある時は歴史や領土問題という、主権国家にとって中心的な問題の処理に、多くの時間と政治資本を費やしてきた。同一文化圏にありながら、思わぬ国民性の違いに戸惑うこともしばしばあった。
 日韓関係の特徴のひとつは、「歴史」の問題がその時々の政治や社会情勢によって、現れては消え、また頭をもたげることだ。こうした問題の繰り返しは、両国国民に「またか」という印象を与え、それが国民感情に長期的にマイナスに働くことは明らかである。
 何とかしなければ、両国が協力から得られるはずの潜在的利益を損なってしまう。こうした危機感から、これまで日韓関係改善の試みは数多くなされてきた。その中でも「歴史的和解」として高く評価されているのが1998年に小渕首相と金大中大統領との間で交わされた「日韓パートナーシップ宣言」である。
 しかしその後も両国関係の不安定さに目立った変化はみられなかった。そこでこのパートナーシップ宣言20周年を迎えた2018年夏、両国政府はそれぞれ改めて日韓関係の基礎である文化、人的交流に焦点を絞って、有識者の提言を求めることにした。日本側の有識者が10月3日に河野外務大臣に提出した提言には、いくつかの重要な指針が含まれている。
 この提言で指摘されたことは、以下の5つに要約される。
 第1は、日韓関係の過去の進展を素直に受け止めるべきだということである。両国交流は、実は一般に考えられている以上に大きな進展を遂げてきた。この20年間に貿易は約2倍、国民交流は約3倍に伸びた。我々はこのことにもっと自信を持つべきだという点である。
 第2は、政府は国民交流については環境整備に徹するべきだということである。政府が歴史や領土といった主権にかかわる問題の適切な解決に努力をするのは当然だ。しかし国民交流は民間のイニシアチブに任せ、交流促進の妨げになっている障害の除去や、留学制度の拡充など、交流を促進する環境づくりに徹することが望ましい。
 第3は、民間交流の推進である。その最大の目的は、相互訪問により、「顔の見える」友人関係を構築するということである。
 訪問の目的は単なる物見遊山ではない。日韓両国民が、個人として多くの信頼できる友人をつくることである。それにより、仮に新たな政治問題が起こった際にも、まずその友人の顔を目に浮かべることで、報道や過激な発言に惑わされることなく、冷静に受け止めることができる、成熟した関係になる。
 日韓両国には、残念ながら日韓関係の改善を快く思わぬ一部の勢力があり、国民や企業は彼らの反応を忖度(そんたく)して、前向きな発言や行動を差し控えるという現象がみられる。しかし相手国に多くの親しい友人がいれば、何か起きたときもこれらの勢力に無用に影響されずに、勇気をもって前向きの発言や行動をすることができる。
 韓国人で日本の渡航歴がある人は、経験がない人に比べ、日本によい印象を抱く回答が3倍あったという。「言論NPO」が2018年6月に発表した世論調査は、相互訪問の意義を明確に実証したものと言えよう。
 第4は、上記の第2の措置とも関連するが、政府は政治的問題が発生、再燃したときには、時として主権国家として毅然たる態度をとるべきだが、同時に国民に対しては、民間交流は継続すべきであるという明確なメッセージを出すべきであるという点だ。
 これは今回の提言で初めて明言されたものである。日韓両国民には、政府に問題が起こると、それに配慮して本来の交流を手控える傾向があることに注目した、極めて重要な提言といえるであろう。
 厳しい政府間のやりとりの中でも、関係者の多くは民間交流は影響を受けずに粛々と継続すべきと考えている。しかし黙っていたのでは、国民は「忖度」によって交流や文化行事を差し控え、それが伝搬して関係が冷えてしまう。
 政府からの積極的発言によってそれを防ごうというのが、この提言の中核を成す発想である。
 この提言が外務大臣に提出された後、有識者のコアメンバーは訪韓し、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官や、長官の下に設置されたタスクフォースと意見交換をした。
 その際にさまざまな有意義な討議がなされたが、先方が異口同音に評価したのが、最後の2点、すなわち「顔の見える」友人関係の構築の必要性と、政府が市民交流は続けてほしいというメッセージを出すべきという点であった。
 後者は、政府にとってもかなり勇気のいることかもしれない。しかし提言直後、自衛隊旗の掲揚問題が起きた際の記者会見において、河野外務大臣が日本政府の立場を述べた上でこの提言に触れ、民間の交流は続けてほしいと発言された。大きなニュースにはならなかったが、これは我々にとって誠に嬉しい発言であった。
 今後とも、日韓関係には政治や経済の問題が起こるであろう。問題が複雑であるほど、その処理は感情的になりやすい。
 それをできるだけ冷静に処理するには、国民の間の信頼関係が最も重要である。国民相互の信頼、顔の見える友人関係は、いまの問題の処理の環境をつくるとともに、将来における問題発生防止や、適切な処理に必ずや貢献すると思われる。

 


2018年12月17日号 週刊「世界と日本」第2139号 より

TPP11 18年12月30日に発効へ

日本は「グローバル社会」主導する役割を

 

中央大学経済学部教授 谷口 洋志 氏

 「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」、いわゆる「TPP11協定」は、2018年12月30日に発効する。TPP11に参加するのは、北米のカナダとメキシコ、中南米のチリとペルー、大洋州のオーストラリアとニュージーランド、アジアの日本、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ・ダルサラームの計11カ国である。

TPP11の発効

 TPP11の前のTPP(環太平洋パートナーシップ)交渉は、15年10月5日に完了し、16年2月4日に米国を含む12カ国が署名していた。しかし、17年1月に米国トランプ政権が、TPP交渉・協定からの離脱を表明したことから、米国抜きで交渉が進められた。11カ国は、17年11月に大筋合意、18年1月23日に交渉終了、同年3月8日に署名した。
 TPP11は、少なくとも6カ国が国内法上の手続き完了を、寄託国のニュージーランドに通報した日の60日後に発効する。18年6月のメキシコを皮切りに、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダと続き、10月31日に6カ国目のオーストラリアが手続き完了を通報したことから、60日目の12月30日に発効することとなった。なお、11月15日にはベトナムの手続きも完了して計7カ国となっている。

TPP11の効果

 世界銀行の17年データによると、TPP11参加国の規模は、人口が5億人強(世界の6.7%)、GDP(国内総生産)が10.6兆ドル(同13%)で、人口は日本の4倍、GDPは同2.2倍弱である。米国が参加していれば、人口は8.3億人(世界の11%)、GDPは30兆ドル(同37%)となっていた。
 日本は現時点では相対的に大規模とはいえ、総人口が減少し、先例のない少子高齢化が進行しており、市場の長期的縮小が避けられない。それに対し、TPP11参加国には先進国・新興国・途上国が混ざっており、全体の人口やGDPも拡大が見込まれ、しかも大量の中産階級を発生させる余地が大きい。その意味で有望な市場であり、巨大な販路を獲得する一方、より安価で良質な財・サービスを入手できることが期待される。
 17年12月21日に公表された内閣官房TPP等政府対策本部の試算では、TPP11への参加によって実質GDPが約1.5%(16年度GDP換算で約8兆円)押し上げられ、労働供給も約0.7%、約46万人が増加するとされている。
 こうした経済拡張効果が生じるのは、関税・非関税障壁のコスト低下によって、
 (1)貿易や投資が増大して企業間・産業間連携が強化されて生産性が向上する。
 (2)生産性の上昇が実質賃金を上昇させて労働供給を増加させる。
 (3)実質所得の増大が貯蓄・投資を増加させ、資本蓄積を高め、生産力を拡大させる。
 ・・・からである。供給面の拡大が需要の拡大を伴って経済規模を押し上げるという訳だ。

TPP11の問題点と課題

 TPP11は、参加国の地域統合や協力を促進し、財・サービスの貿易や投資の機会を増大させることで地域の所得水準を向上させ、人々に経済的機会を創出することが目的である。
 参加国が多ければ多いほど、全体の規模が大きければ大きいほど、こうした経済的メリットは大きいと考えられる。しかし、それは集計的なメリットであり、こうした貿易・投資促進効果によって利益を得る部門もあれば不利益を被る部門もある。
 日本では、不利益を被る部門の典型が農業部門である。ただでさえ低い食料自給率がさらに低下して食料安全保障を脅威にさらすとか、地域の農業・畜産業に打撃を与えて地域農業の衰退を招くといった問題が提起されてきた。農業をはじめとする不利益部門に対しては、互恵的で透明かつ公平なルールに従って一定の保護をすることが避けられない。
 ところで、TPP11は、関税の完全撤廃を目指す「自由貿易協定(FTA)」を超えて、サービス、知的財産、労働、医療、環境などの規則・慣行や制度の調和をもめざす「経済連携協定(EPA)」である。
 したがって、(関税の特恵待遇が受けられる)原産地規則、食の安全性基準、自動車の排ガス規制、金融商品・サービスや金融機関に対する規制、医療機器・医薬品の認証、独占禁止法の解釈・適用など、さまざまな領域での合意と透明性・公平性に基づく運用が求められる。
 さらにTPP11協定は、地域統合の一環でもあるから、域内では、モノ・サービスだけでなく、カネ・ヒト・情報の国境を越えた自由な移動が将来的な課題となる。TPP11は、EU(欧州連合)のように、共通の農業政策、通貨、中央銀行システム、環境政策、労働政策、移民政策などの導入まで進むのか。

日本の役割

 米国が参加した当初のTPPは中国排除の枠組みと言われたが、米中不参加のTPP11ではそうした要素が薄れ、インパクトも弱い。とはいえ、TPP11の経験を通じて共通のルール化・制度化を図ることで、アジア太平洋地域での将来の広大なEPAの土台となりうる。
 また、米国優位の枠組み作りが不可能となったことで、日本の存在感が強まり、発言権が増したのである。
 日本はTPP11に参加する前に、すでにTPP11参加国のうちカナダとニュージーランドを除く8カ国との間で2国間EPAを締結し、すでに発効済みである。その意味では、TPP11は、既存の2国間EPAを多国間EPAに拡大したものである。こうした多国間主義は、2国間主義にこだわるトランプ政権とは一線を画すものである。
 アジア太平洋地域にはTPP11以外にも、アセアン・大洋州諸国や日中韓印が参加するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)や日中韓FTAなどの動きがある。ここで注目されるのは、中国が主導権を握るかどうかである。しかし、中国は成熟した市場経済国とはいえず、発言権は増しても主導権をとることは難しい。
 このように、米中がリーダーシップを発揮できない状況では、TPP11での透明かつ公平な多国間主義をベースに、日本がグローバル社会を主導していく役割は非常に大きいのである。

 


2018年12月3日号 週刊「世界と日本」第2138号 より

米国中間選挙

「分割政府」厳しい政権運営へ

日米関係は課題山積、したたかな外交を

 

同志社大学法学部教授 村田 晃嗣 氏

 11月6日の米国中間選挙は、世界的な注目を集めた。多くの専門家が前回の大統領選挙で予想を外したため、今回は慎重な発言が多かったが、上院での共和党の多数維持と、下院での民主党の逆転勝利は、大方の予想通りであった。いわゆる分割政府、日本風に言えば、「ねじれ国会」の出現である。大統領1期目の中間選挙が、こうした結果になることは、ごく普通のパターンといえる。

 下院で民主党が多数を制したため、トランプ大統領は今後、より慎重な議会対策を求められる。下院では、現職の再選率がきわめて高い。今回は共和党現職の引退が多かったことも、民主党には有利に働いた。だが、それは共和党がよりトランプに忠実な党に変容したという意味でもある。
 また、当初期待されていたような民主党の圧勝ではなかったから、ブルー・ウェイブが起こったとは言えまい。青は民主党を示す色である。だが、多くの女性や性的マイノリティーの候補が登場し、かなりの当選者を出したことから、ピンク・ウェイブやレインボー・ウェイブは起こったのである。ピンクは女性を、虹色は性的マイノリティーを、それぞれ象徴する。
 ロシアゲート事件などのスキャンダルについて、民主党主導の下院は公聴会を開き、証人喚問を続け、偽証罪の告発も辞さないであろう。もちろん、下院の過半数で大統領弾劾を発議することもできる。しかし、上院で3分の2以上の賛成がなければ弾劾は成立しないから、結果を伴わない弾劾発議は共和党やトランプ支持者の怒りを惹起するだけで、かえって民主党の無力を示すことになるから、彼らにとって現実的な選択肢ではない。
 また、これまでは大統領と上下両院の多数がすべて共和党であったから、民主党に失政の責任転嫁をすることはできなかったが、トランプ大統領は今後、下院民主党の反対や抵抗に自らの失敗の責任すら転嫁するであろう。
 上院では、共和党が議席を伸ばした。これに注目すれば、共和党の善戦と呼ぶこともできる。カバノー最高裁判事の承認人事をめぐって、民主党が強く反対したため、共和党の結束を強め、この善戦につながったと見る向きもある。カバノー人事によって、9人の最高裁判事はすでに保守派が5人、リベラル派が4人と、保守優位になっている。
 しかも、リベラル派には85歳のギンズバーグら高齢の者が含まれている。早くも、ギンズバーグの転倒事故が注目されたが、彼らが引退したり死亡したりすれば、トランプ大統領は若手の保守派を後任に指名し、共和党多数の上院がそれを承認する。トランプ政権の間に、保守絶対優位の最高裁を確立することこそが、共和党保守派の悲願である。その意味でも、上院での多数死守は重要であった。
 さらに、日本のメディアはそれほど報じていないが、州知事選挙も重要である。今回は33州で知事選挙が行われた。全米50州の多くは、共和党が優勢の赤い州(赤は共和党の色)と民主党が優位の青い州に分かれる。
 だが、どちらとも言い切れない州が12ある。これらをスウィング・ステート(揺れ動く州)と呼ぶ。中でも大統領選挙人の割り当ての多いのが、フロリダ(割り当て数29人)とペンシルバニア(同20人)、オハイオ(同18人)、ミシガン(16人)である。16年の大統領選挙では、この4州ですべてトランプが勝利した。
 今回の中間選挙では、フロリダでは票の再集計が行われているが共和党が優勢で、オハイオでも共和党が勝利した。だが、ペンシルバニアでもミシガンでも、民主党の現職が再選された。改選前は共和党の州知事が圧倒的に多かったが、今回の選挙によって、州知事の数は、共和党と民主党でほぼ互角になった。
 アメリカでは10年に1度国勢調査が行われ、その結果を受けて選挙区の区割りを変更する。次の国勢調査は2020年に実施され、区割り変更は22年の選挙から適用される。この区割り変更を決めるに当たって、州知事と州議会が大きな役割を果たす。民主党の知事が増えれば、それだけ民主党に有利な区割りが行われる可能性が高まるのである。
 だが、その区割り変更も、20年の大統領選挙には関係しない。トランプが再選される可能性は十分にある。とりわけ、民主党が有力な大統領候補を見い出せるかどうかが、鍵になろう。
 さて、今後内政が混乱すれば、ますますトランプ大統領が一貫性のある外交を遂行できなくなるかもしれない。貿易問題でより強硬な姿勢をとったり、逆に朝鮮半島問題で中身のないままに妥協してしまうかもしれない。
 日本としては、前者では日本の自動車メーカーがアメリカで170万人もの雇用を創出している事実を粘り強く説かなければならない。後者については、日朝間には、核やミサイルという安全保障上の問題以外に、拉致問題が横たわっている。
 トランプ大統領は拉致問題に理解を示しているが、彼の態度は豹変するかもしれない。むしろ、トランプの支持層には、宗教色が濃く、家族の価値や絆を重視する人たちが多い。日本としては、こうしたトランプ支持層にも、拉致問題への理解と関心を深めてもらう働きかけが必要であろう。
 さらに、米中関係である。アメリカの厳しい対中姿勢は、選挙のための一過性の現象ではない。単に雇用や貿易問題だけではなく、両国の間に産業技術力とグローバルな覇権をめぐって深刻な対立があることは、アメリカでは超党派のコンセンサスになっている。
 米中の間にあって、日本はこの対立と無縁ではいられない。日米同盟を維持・強化しながら、日中間で不測の衝突を避ける努力を重ねる二重外交が必要である。また、同盟国としての日本の価値を維持するために、人口が急速に減少する中で生産性の向上を図らねばならない。
 日本にとって、これは今までにないむずかしい課題である。アメリカ政治に対する理解と分析の精度を高めながら、したたかな外交を展開する―中間選挙後の日米関係は課題山積なのである。


2018年8月1日号 週刊「世界と日本」第2130号 より

半島情勢

トランプの楽観を懸念

 

防衛大学校教授 神谷 万丈 氏

 初の米朝首脳会談からひと月になる。あの会談は、トランプ米大統領が主張するような「大成功」だったのだろうか。私は、そうは思わない。

《かみや・またけ》 1961年京都市生まれ。東大教養学部卒。コロンビア大学大学院(フルブライト奨学生)を経て、92年防衛大学校助手。2004年より現職。この間、ニュージーランド戦略研究所特別招聘研究員等を歴任。専門は国際政治学、安全保障論、日米同盟論。現在、日本国際フォーラム理事・上席研究員、日本国際問題研究所客員研究員、国際安全保障学会理事。主な著作に『新訂第5版安全保障学入門』『新段階の日米同盟のグランド・デザイン』『日本の大戦略』など。

 今回の会談が何も成果を生まなかった、というつもりはない。金正恩という独裁者が、自らが「朝鮮半島の完全な非核化」にコミットすることが明記された「共同宣言」に署名し、『労働新聞』で30枚以上のカラー写真とともに大々的に報じて、人民に知らしめたことは無意味とはいえない。
 ミサイルエンジン実験施設の破壊の約束も悪くはない。北朝鮮は最近、ミサイルの性能向上のためのエンジン開発に励んでいたからだ。会談により米朝間の緊張が緩み、戦争の恐れが当面遠のいたことも間違いなかろう。
 だが、今回の会談には問題点が多過ぎる。会談の焦点は、米国が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」と「直ちに(早期一括)の非核化」を、北がどこまで受け容れるかにあるとされていた。
 ところが、共同声明には“CVID”という語が入らず、「検証可能」と「不可逆的」が消えてしまった。また、北がコミットするのは「北朝鮮の完全な非核化」ではなく、「朝鮮半島の完全な非核化」だということになってしまった。
 米国の求めていた早期一括の非核化も、声明には盛り込まれなかった。会談翌日の朝鮮中央放送は、両首脳が北の望む「段階別・同時行動原則」の遵守が重要だとの認識をともにしたと報じた。それが本当ならば、北にとっての大勝利だ。
 ポンペオ米国務長官はすぐに報道を否定したが、北の外交部は、同長官が非核化交渉を進めるために7月6~7日に訪朝した後の談話でも、米側が「CVIDだ、申告だ、検証だと言って一方的な非核化要求を持ち出した」のは「強盗的」で「遺憾きわまりない」とし、「段階的、同時行動の原則で解ける問題から、一つずつ解決していくこと」を主張してみせた。
 また、共同声明では、非核化に向けた北の具体的行動は何も約束されていない。トランプ大統領は、北が核実験場を破壊したことやミサイルエンジン実験施設の破壊を約束したことを褒めちぎったが、これらは、意味がある動きではあっても、核やミサイルを減らす行動ではない。
 にもかかわらず彼は、会談後の記者会見で、北に見返りを与えるかのように米韓軍事演習の中止を突如言明してしまった。しかも彼は、同演習を「戦争ゲーム」と呼び、「とてつもなく金がかかる」ので「好きではない」し、「非常に挑発的だ」と述べた。
 今後の北の動向次第では、米韓軍事協力がこれまで以上に重要になることさえ考えられるにもかかわらず、米国の大統領が、「戦争ゲーム」とか「挑発的」といった、北が演習を非難するために用いてきた言葉を口にし、あまつさえ「金がかかる」ことを理由に演習を好まないと公言したことには愕然(がくぜん)とさせられた。
 大統領はまた、「完全な非核化までは技術的に長い時間が必要だが、そのプロセスを始めることができれば、非核化の作業はほとんど終わったのも同然だ」と、北の今後の出方について著しく楽観的な見方を示した。その甘さにも驚かされた。
 私は、南北首脳会談や米朝首脳会談が行われる見通しとなった3月以来、日米韓などの対北政策に関して「4つのべからず」を唱えてきた。その概要は本紙6月4日号への寄稿(「北の動きをどう理解すべきか」)で述べた通りである。
 (1)北の変化を過大評価すべからず(2)北の過去の行動を忘れるべからず(3)核・ミサイル問題の「解決」を急ぐべからず(4)抑止と圧力を緩めるべからず、ということだ。この「4つのべからず」から今回の米朝会談を振り返ると、トランプ大統領の言動には懸念される点がいくつも指摘できる。
 まず、(1)について。トランプは、北が昨年1年間だけでも何をしたのかを忘れてしまったようだ。新型中距離弾道弾や米国東海岸にも到達可能とされる大陸間弾道弾(ICBM)を繰り返し発射し、9月の核実験の際には水爆実験の成功を主張。11月末のICBM「火星15」の発射後には、金正恩が「国家核武力完成の歴史的大業、ロケット強国偉業が実現されたと矜持高く宣布」した。それからまだわずか半年余りなのだ。われわれは、北が本当に変化しつつある可能性があることには注意を払うべきだが、過大評価は禁物だ。
 (2)について、私は、北朝鮮は、「右にカーブを切る際には、あらかじめ左に大きくカーブを切っておき、その後右に戻ることで小さな動きを大きく見せようとする」ごまかし戦術を得意としてきたことを指摘してきた。
 最近の金正恩の「微笑外交」は、このパターン(自ら緊張を高めておき、それを緩めてみせる)で説明がつくし、核実験場やミサイルエンジン試験施設の破壊は、もうこれ以上左には行かないという証ではあっても、右に戻る行動ではない。だが、トランプはそのことに気づいていない。
 (3)、(4)について私は、北の核やミサイルは、自殺覚悟でなければ使えない兵器であり、北は自殺をするような国ではないと考えてよいと論じてきた。われわれは、抑止さえしっかりとしておけば、北の核やミサイルを耐え忍ぶことができるのだという自信と覚悟に基づいて、こちらから北に対話を求め過ぎないようにし、北が核とミサイルの放棄に向けた具体的行動をとるまでは圧力も制裁も緩めないことが肝心だというのが、私の主張だった。
 だが、トランプは対話に前のめりになり過ぎ、その結果、国際社会による北への圧力に、既にほころびが見え始めているのではないか。
 トランプは、金正恩は非核化に「非常に真剣」で、彼とは「大変気が合う」と言う。彼は、北の独裁者がすっかり改心して「いいやつ」に変わったと信じているようだ。そうであれば結構だが、問題は、そうでない可能性が一顧だにされていないようにみえることだ。
 先にみた、最近のポンペオ訪朝後の北の態度は、金正恩の真剣さへの疑念を強めるものだった。米国大統領の過度の楽観がもたらしかねないものを懸念せざるを得ない。
(7月8日記)


2018年7月2日号 週刊「世界と日本」第2128号 より

米朝首脳会談

「非核化」通じた米朝接近を評価
金正恩氏 核を捨てても体制存続を模索

 

大阪大学大学院 法学研究科教授 坂元 一哉 氏

 6月12日、史上初となる米朝首脳会談がシンガポールで開催され、両国の首脳は、朝鮮半島の「完全な非核化」と、米国による北朝鮮の「安全保証」をうたう共同声明にサインした。北朝鮮の核放棄にめどをつけるとともに、東アジア国際政治の構図に、重大な変化をもたらすプロセスを生み出す会談になったと思われる。それも、昨年来心配されていた軍事力行使をともなうプロセスではなく、平和裏に進むことが期待できるプロセスである。

 会談については、共同声明に非核化の進め方が具体的に書かれてないとか、「完全な非核化」という文言が、米国や日本がずっと求めてきた「完全かつ検証可能で後戻りできない非核化」という文言から後退している、といった理由から、北朝鮮に逃げ道を与える大失敗だった、との批判もある。
 だが、この会談における米朝の力関係から考えれば、共同声明が北朝鮮を厳しく追い詰めるものになっていないのは、トランプ大統領が実質的に非核化の圧力を弱めたからというより、北朝鮮の若い独裁者、金正恩・朝鮮労働党委員長の面子をつぶさず、彼が非核化の決断を国内向けに説明しやすくするために配慮したから、と理解するのが妥当だろう。
 金委員長はこの会談に臨む前に、核放棄の決断をしていたはずである。トランプ大統領は、従来の米国大統領のように中国頼みではなく、米国主導で北朝鮮に圧力をかけ、本気で非核化を実現しようとしている。
 もし北朝鮮が非核化を拒否し続ければ、大統領は国際社会を巻き込んだ経済制裁をさらに強化してくる。北朝鮮の最大の貿易相手国である中国も、大統領の圧力を受けてその制裁に参加しており、このままでは北朝鮮の生き残りは経済的に難しくなる。
 仮にその間、自分が核開発を進めても、それが米国の安全を脅かすものになれば大統領は、今度は、核・ミサイル施設への限定的な軍事攻撃に踏み切り、それによって北朝鮮の強制的な非核化をはかろうとするだろう。
 もし北朝鮮がそれに反撃し、韓国や日本を攻撃すれば、大統領は国連での演説でも口にしたように、全面的攻撃で北朝鮮そのものを破壊する。
 金委員長はそうなる可能性を恐れ、自分が追い詰められていることを見極め、核を捨てても北朝鮮が生き残れる道を真剣に探しはじめた。これに対して大統領は「完全な非核化」を実行すれば、経済制裁の撤回だけでなく、米国からの「安全保証」が得られ、そのうえ日本や韓国などの経済協力によって経済発展が進むという道を提案し、委員長はそれを受け入れた。それがこの会談における取引(ディール)の骨子だろう。
 むろんわれわれは、北朝鮮がしたたかな外交を展開する国であることを知っている。合意された取引に反して、何とか核を持ち続けようとするのでは、と疑うのは意味のないことではない。
 だが今回の場合、そのしたたかさは、トランプ大統領に約束した「完全な非核化」を、ぐずぐずいって実行しない、といったあまりにも大きな危険をおかすことではなく、むしろ迅速に実行して世界を驚かせ、非核化の代価である「安全保証」や経済発展に関して、なるべく多くのものを得るために発揮される。そう期待すべきだろう。
 共同声明のなかで注意が必要だと思うのは、米国が北朝鮮に「安全保証(security guarantees)」を与える、という文言である。米国が北朝鮮の体制の安全を保証したといわれることが少なくないが、それは誤解をまねく言い方だろう。米国が北朝鮮のような体制はもちろん、そもそも他国の体制の存続を「保証」することなどできるはずがない。
 かといってこの言葉が単に、米国は北朝鮮を武力攻撃しない、安全保障上の脅威にならない、というだけの意味なら、北朝鮮としても安心して非核化することはできないだろう。北朝鮮にとって安全保障上の脅威は、米国に限らないだろうからである。われわれは北朝鮮が、中ロという2つの核大国に国境を接している事実を忘れるべきではない。
 そう考えると、この「安全保証」は、北朝鮮が核を放棄すれば、放棄後の北朝鮮の安全保障全般に米国が関与する、との文言になりうると見るべきだろう。そして、もしそうだとしたら、それは東アジアの国際政治に重大な意味を持つ。
 いま経済的、軍事的に台頭し、東アジアに覇権を求めるかのように行動する中国の隣国、北朝鮮に米国の大きな影響力が及ぶことになるからである。そうなれば中国は、たぶんに形骸化しているとはいえ、同盟関係にある唯一の国を失うことになりかねない。中国の東アジアにおける影響力は低下し、米国とその同盟国は、南シナ海問題も含めて中国の覇権的行動を抑制しやすくなるだろう。
 この会談の評価は、朝鮮半島の非核化だけでなく、その非核化を通じた米朝接近も含めてなされるべきである。
 この会談でトランプ大統領は、安倍晋三首相との約束を守り、拉致問題を議題にとりあげた。そのこともあって、秋までにも日朝の首脳会談が開催される見込みだが、会談の結果は2つの意味で安倍首相の交渉を後押しするだろう。
 まずこの会談で非核化にめどがたったので、日本が交渉のカードとして使う経済援助が、核開発の資金として使われる心配がなくなった。次にこの会談のおかげで、金委員長を次のように説得することも可能になった。
 あなたは非核化して米国からの「安全保証」に頼る、という安全保障政策をとられるようだが、米国は民主主義の国です。その政策が長期的に成功するには、あなたの国がまっとうな国になる努力をしている、と米国人の目に見えることが絶対に必要です。そうでないと、せっかくの非核化の大英断が台無しになってしまいます。
 まっとうな国になる努力はまず、米国の親密な同盟国であり、東アジアにおける米国のプレゼンスを支えている日本との間で、北朝鮮がかかえる、重大な人道問題の解決から始めてください、と。


2018年6月18日号 週刊「世界と日本」第2127号 より

台湾を取り巻く国際環境

 

台北駐日経済文化代表処代表 謝長廷 氏

 日本の隣国である台湾を取り巻く国際環境の変化は、日本にとっても他人事ではない。台湾はすでに自由、民主主義、法治、人権といった普遍的価値観を重視する民主国家であり、日本とも価値観を共有している。台湾の人々は、このような民主的な社会の現状を維持したいと願っている。しかし、近年、台湾をめぐる情勢の変化が次々と起こっている。

《しゃちょうてい》
1946年台北市生まれ。国立台湾大学卒業。大学在学中に弁護士試験をトップの成績で合格。司法官試験も合格。74年日本・京都大学法学修士後、同大学博士課程修了。台北市議会議員、立法委員(国会議員)、高雄市長を歴任。民主進歩党主席、行政院長(首相)、07年第12代総統選挙民主進歩党候補者、16年6月より現職。

中国の一方的な航空路運用

 今年1月4日、中国は台湾との事前協議なく、一方的に台湾海峡の中間線に極めて近い北上航空路の運用を開始した。台湾と中国当局は2015年に協議を経て同北上航空路を暫時運用しないことに合意していたにもかかわらず、一方的な航路運用開始は、合意に反する上、台湾海峡中間線という緩衝地帯に緊張が高まる恐れがある。
 4月中旬には、蔡英文総統が外遊に出かけたタイミングで、中国空軍の爆撃機が台湾周辺空域を飛行した。さらに、その後も軍機飛行による挑発が続いている。台湾は軍事的緊張の高まりを望んでおらず、両岸間の前提条件なしの対話再開を呼びかけている。
 にもかかわらず、中国は5月にドミニカ共和国と西アフリカのブルキナファソに多額の援助を与え、その引き換えに台湾と断交させた。

利益誘導といやがらせ「シャープパワー」とは

 前述の有形の威嚇を含む「ハードパワー」、文化などによる「ソフトパワー」に加え、近年は「シャープパワー」というキーワードが注目されている。「シャープパワー」とは、利益誘導といやがらせをセットに相手国に影響力を与えるやり方のことだ。中国は「シャープパワー」を駆使して各国の民間企業にも影響を与えようとしている。
 一例を挙げると、最近では航空会社などの国際企業が、地図や国別欄などで「台湾」を国扱いしていたとして中国側から訂正を求められる事件があった。これらの企業の一部は、中国での事業を継続するために当局の意向に従って「訂正」に応じ、謝罪した。シャープパワーで脅かされた企業の多くは、事実を曲げてでも中国当局を怒らせないよう気を使うようになる。
 米国国務省がこの件に関して声明を発表し、「中国共産党の政治的立場の強制」を、「全体主義のばかげた措置だ」と一蹴し、強く抗議した。

優遇の衣をまとった31項目対台湾措置

 一方で、中国はこのほど台湾に対する31項目の措置を発表した。これらは台湾企業の投資、土地・税率、銀行の営業、教育研究、文化映像産業、公益・医療などに関するもので、中国側から言わせれば「優遇措置」であるが、実際には実利で台湾の資金、人材、技術を吸収し、台湾内部を分断し、中国の影響力を高めることが目的といえる。
 台湾は、この31項目の措置に対応するために、学術研究環境の改善、起業の後押し、従業員の報酬アップ、医療従事者の就労環境改善、業務上の秘密保持強化、産業高度化、株式市場の活性化、映像産業の発展強化など8つの具体策を講じ、台湾自身の実力を強化していく。
 両岸の交流と協力は、対等かつ互恵の原則に基づくべきであり、中国は台湾から進出する企業および個人に対して、投資の権益、生命・財産の安全、人身の自由を保障すべきである。

CPTPPと台湾旅行法

 最近、米国と中国の貿易摩擦の懸念が国際社会で高まっている。台湾も日本も、米中双方と経済関係が密接であり、米中対立の影響から逃れられないが、台日が互いに協力し合うことで、影響を少しでも抑えることは可能だ。
 とりわけ、日本主導で3月8日にチリで調印されたCPTPP(包括的かつ先進的な環太平洋パートナーシップ協定)は、米中以外の環太平洋諸国との多国間経済連携であり、米中対立の衝撃を和らげる役割を果たすことが期待され、台湾も参加を望んでいる。
 台日経済関係は、サプライチェーンの補完関係が確立されており、台湾のCPTPP参加または日本との経済連携強化は、日本にも必ずメリットをもたらすと確信している。
 また、台米間の政府高官を含む相互訪問交流を奨励する米国の法律「台湾旅行法」が、3月16日にトランプ大統領が署名して成立した。これは台米関係の大きな進展である。同法成立後に訪台したアレックス・ウォン国務次官補代理は、「米国の台湾への支持は変わらず、台湾の人々との関係を強化し、台湾が民主主義制度を守れるように支えたい」と強調した。
 蔡英文総統が「自由と民主主義は台湾の生存の道であり、平等と互恵こそが両岸の健全な発展のカギである」と強調しているように、台湾は中国大陸とは法律や社会制度が異なる。
 「国境なき記者団」が発表した2018年度の世界報道自由度ランキングによると、180カ国の中で台湾はアジアで最も高い42位だったのに対し、中国はワースト5の176位だった。「自由と民主主義」は、台湾が極めて重視する核心的価値観である。

WHO参加は世界の「共生」のため

 両岸社会に違いがあるとはいえ、敵対する必要はない。互いに尊重し、平和的に「共生」する関係であるべきだ。しかし、中国はWHO(世界保健機関)の年次総会への台湾の参加にも反対し、WHOおよび加盟各国に対し台湾の参加を支持しないよう圧力をかけた。
 健康に国境はなく、台湾は「すべての人の健康」を目的とするWHO関連活動に参加する権利があり、台湾の民選政府だけが台湾2300万人を代表する資格を有する。台湾との「共生」を拒み、排除しようとする中国の威圧的なやり方は、台湾の人々および国際社会の共感は得られない。
 台湾のWHO参加に関し、日本政府をはじめ各界の支持に深く感謝の意を表したい。
 台湾は先進的な医療技術を有しており、世界各国に派遣された医療チームが現地に貢献している。台湾がWHOに支障なく参加できれば、国際社会との連携は一層スムーズになり、より多くの貢献ができる。
 台湾と日本は、自然災害等が発生した際にお互いに助け合う「共生」の関係がすでに形成されている。それは形式や政治を超越した「善の循環」により、温かい関心を寄せ合う「運命共同体」の意識まで高められたもので、世界平和の模範といえる。今後は、政府間でも両国の発展と世界平和のために、できる限り高いレベルまで堂々と交流できるようになることを願っている。


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