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内外ニュース懇談会 講演要約

講演
「日本の進路と誇りある国づくり」

ジャーナリスト・公益財団法人 国家基本問題研究所理事長
櫻井 よしこ 氏

2017年1月19日、内外ニュース新春東京懇談会1月例会は、ホテルグランドパレスで行われた。「日本の進路と誇りある国づくり」と題し、トランプ政権におけるアメリカとの関係、さらに中国やロシアを含めた国際政治、そしてそれに対する日本の行動について熱く語った。


国の力の源泉は軍事力、経済力、価値観

 日本時間の明後日の朝、トランプさんの就任式が行われ、どんなことをおっしゃるのか、世界中が戦々恐々としているだろう。そのような状況の中で、日本が目指すべき国際政治における立ち位置や行動について、今日はお話ししたいと思う。

 トランプさんの政治は「3G」と言われる。1つのGは「ジェネラル」で、退役軍人などの将軍と言われる方たちが大きな一角を占めている。もう1つのGが「ゴールドマン・サックス」で、世界に冠たる金融の仕事をしている、とにかく金儲けの上手な人たち。残りの1つのGが億万長者を超える兆万長者を意味する「ガジリオネア」のGだ。

 一方、オバマさんの8年間は、国防総省の意見をほとんど聞き入れなかったことが、失敗の本質であろうかと思う。オバマさんは最後は高い支持率で、国民に愛されながら辞めていかれた。確かに最後の演説を読んでみても、ぐっと胸に響いてくるものがある。しかし、国際政治の現実の中に置いてみた時に、その響いてくる言葉がとても空虚になる。なぜなら彼は国の力の源泉というものが、3つの要素から成り立っていることを、ついに認識しないまま辞めていった大統領だからである。

 国の力の源泉は3つある。経済力と軍事力、価値観だ。アメリカは貧富の差や人種偏見など、いろいろな問題を抱えているが、この3つの要素がそろった類まれな国である。にもかかわらず、オバマさんは軍事力を使わなかった。そのためオバマ政権の8年間で、アメリカの信頼というのは大きく揺らいだ。2013年、アメリカはシリアに軍事介入せず、オバマさんが「世界の警察ではない」と言ったことで、アメリカをうんと内向きにしてしまった。それをさらに強くするのがトランプさんである。

 ただ、トランプ政権の閣僚になった人々の言っていることを聞いてみると、基本的に間違ったことは言っていない。だからこの人たちの言うことをトランプさんが聞けば、私たちが思うよりはましな政権になりうる可能性があるが、そうでない場合は、これはディズアスター(disaster=災難)だと言っていいだろう。

 私たちがトランプさんのホワイトハウスがどうなるかと思う時、一番の要になるのが、彼の義理の息子である36歳のクシュナーさんではないかと思う。彼はユダヤ教の指導者であるラビの息子であり、もちろんイスラエル寄りだ。そのため、おそらくトランプ政権が一番重視するのが、いわゆるイスラエル、中東問題ではないか。

 

ロシア、ヨーロッパはどう動くか

 こうしたアメリカの動きに対し、ロシアはどう思っているのか。プーチンさんの頭の中ではアサド政権を助けて、中東におけるロシアの拠点を強化したいと思っているだろう。そのためロシアはトランプさんと協力はするが、それがアメリカの国内政治や外交政策にどう波及していくかは、わからない面がたくさんある。

 では、ヨーロッパはどうか。イギリスのメイ首相が、EUからの強硬な離脱というものを打ち出した。さらに今年はフランス大統領選挙が行われ、国民戦線のマリーヌ・ル・ペンさんが2番手につけている。彼女が掲げていることは、脱EU、反難民、反移民だ。ドイツも同じで、メルケルさんが再選されるかどうかもわからないと私は思う。

 その他のヨーロッパの国々を見ていると、雨後の筍のように、どの国も右翼政党、右翼勢力が力を伸ばしている。彼らが言っていることは、「もうEUはいい」ということだ。EUが分離していく延長線上にNATOがある。旧ソビエトの脅威を念頭に置き、政治経済の枠組みがEUであり、軍事の枠組みがNATOだったが、この2つに今、遠心力が働いている。EU、ヨーロッパ諸国が分散していく様は、アメリカのヨーロッパに対する影響力の弱体化そのものであり、一番喜ぶのはプーチン大統領であろう。

 

イスラム国、テロリスト勢力との闘い、そして中国との関係

 そしてトランプさんが2番目に重要度の高いものとしてあげているのが、イスラム国、テロリスト勢力との闘いで、その次に中国がきている。しかし、中東が混乱した時に、中国とわたりあう余力がアメリカにあるのかといえば、ないだろうと言わざるを得ない。

 ただ、中国に対しては強硬派が閣内に揃っているのは確かで、その典型的なのがピーター・ナヴァロさん。(ナヴァロさんは2017年1月20日トランプ新大統領から指名を受け、国家通商会議の委員長に就任)氏の著書『米中もし戦わば-戦争の地政学』(文藝春秋刊 2016年)という本はお勧めだ。その中には、一つの大国が勢いを落とし、台頭する別の大国が出てくる時に、人類の歴史をみると、その大国の攻防において戦争になったのは70パーセント以上だと書いてある。米中は戦うことになるというのが、ピーター・ナヴァロさんの主張である。

 そこで中国と日本の関係を考えてみたいと思う。安倍総理は地球儀を俯瞰する外交として、ロシアを巻き込んで対中戦略の一つの力にしようとお考えだ。しかし、私たちの目の前にあるエビデンスをみると、ロシア問題に関してはうまくいっているとは思わないし、これからもうまくいくという楽観論を抱くことはできない。

 ロシアは中国に対して、どれくらいの力をもっているのか。ロシアのGDPは韓国より小さく、軍事費は世界第6位である。ただし、プーチンさんという人はKGBのスパイ中のスパイであり、その人を落とし込むにはどういう言葉や材料がいいのか、よく研究してる「人たらし」である。このプーチンさんとトランプさん、どちらが上手か、これから私たちは見ていくことになるだろう。

 

日本は中国やロシアからの危機にどう備えるのか

 アメリカが中東問題にかかわっている間に、私たちはロシアや中国に対して、私たちの力で備えなければならない。アメリカに対し、「ああ、これなら日本を助けてやらなければ」という形で、私たちが国土を守ることができるのか、それを見せなければならないわけで、そのためには海上保安庁や自衛隊の予算を、倍々増するくらいの勢いでやらなければならないだろう。

 さらにその先には、憲法改正が必要になってくるが、自民党のどの議員に聞いても、憲法改正の議論を熱心にしようとする人がいない。安倍さんが唯一の例外だろう。しかし私は、日本がアメリカの圧力により、そして世界情勢の厳しさによって、憲法改正を考えざるを得ないところに追い込まれていくであろうと思う。

 繰り返しになるが、国を支える柱は経済力と軍事力と価値観。私たちの国は経済力はあるが、軍事力がない。これを憲法改正で何とかしたい。しかし、価値観はどうだろうか。日本国を支える、「これが価値観なんだ」と言えるもの、「いい国になります」と言える価値観が、どこにあるのかを考えなくてはいけない。

 

日本は21世紀の価値観のリーダーになれる

 21世紀の価値観のリーダーになれるだけのものを、私たちの国ほどもっている国はないと思っている。

 我が国の文明といわれるものの在り方、皇室を中心とし、その下に軍事や経済という権力がある。この権力層と、権力とは全く関係のない皇室が一緒になって、国家の中枢をなして国民を守ってきた。その形が文字になったのが、604年に聖徳太子が作られた「十七条の憲法」だ。これは政治を担当する官僚に向けた教訓ではあるが、そこに流れているのは、非常に優れた倫理観である。

 聖徳太子の十七条の憲法は、同じ7世紀に生きた天武天皇により具体的になった。さらに8世紀になると、聖武天皇がこの大和の価値観を具体的な政策に落とし込んでいった。

 民を大事にするという価値観で、私たちの国はやってきて、あの明治維新の時に、この国が亡びるかもしれないという時に考え出したのが、この十七条の憲法に基づいてつくられた「五箇条の御誓文」である。

 私は、こうした日本の価値観を掲げ、「日本はあなた方の文化文明を大事にし、あなた方を尊重します」ということをして、世界に範を示すのがよいと思う。ただし、このような価値観も、経済力と軍事力がなければ意味をもたないということから言えば、憲法改正をやりながら、この日本の国柄を世界に大いに広めていかなければならないだろうと思っております。

※講演全文は月刊『世界と日本』1274号に収録されます。また、週刊「世界と日本」NO.2095号に掲載されます。

※講演の動画・資料は会員限定で「内外ニュースチャンネル」でご覧頂けます。

https://www.naigainews.jp/懇談会/懇談会動画/動画-櫻井氏201701-会員専用/

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