サブメニュー

●週刊「世界と日本」コラム

外部各種イベント・セミナー情報

  • 皆様からの情報もお待ちしております

お役立ちリンク集

  • お役立ちサイトをご紹介します

Coffee Break

  • 政治からちょっと離れた時間をお届けできればと思いご紹介します

東京懇談会録

  • ※会員の方向けのページです

●時局への発言ほか

明治維新150年チャンネル

  • 2018年、平成30年は明治維新からちょうど150年。
  • お知らせ

    ●会員専用コンテンツの閲覧について
    法人会員及び個人会員、週刊・月刊「世界と日本」購読者の方で、パスワードをお忘れの方はその旨をメールにてご連絡ください。その際に契約内容が分かる内容を明記ください。折り返し、小社で確認後メールにてご連絡します。

    パスワードお問い合わせ先

    tokyo@naigainews.jp

内外ニュース懇談会 講演要約

講演
「民主主義を問い直す」

京都大学名誉教授
佐伯 啓思 氏

内外ニュース東京懇談会9月例会は9月21日、ホテルグランドパレスで行われた。「民主主義を問い直す」と題し、民主主義の問題について社会思想的な観点から提議し、一般に受けとめられている民主主義に対する誤解について、具体的な例をあげながら、その本質を語った(講演要旨は次の通り)。


民主主義とはいったい何か

 民主主義が大きな問題になってきている背景で、どうしても無視できないものにトランプ現象がある。「トランプ現象は一種のポピュリズムであり、それは民主主義の危機だから、もう少し冷静に物事を判断し、理性的に投票すべきだ」と言われているが、私はこの意見には賛成できない。なぜなら、選挙というものがポピュリズムになってしまうのは、十分に考えられることであり、それが悪いとは断定できないと思うからだ。また、そこで話を片付けてはいけない。
 この問題は、「民主主義とはいったい何か」という話だ。我々は民主主義というのは国民主権だと考え、それを誰も疑ったことはない。しかし、もし仮に民主主義イコール国民主権だとすると、国民の意思を政治に反映するのが、民主主義となる。
 ではアメリカの国民が、不法移民が何千万人もいることで、自分たちの仕事がなくなっていると言う人たちが、非常に国に不満を持ち、その意見を政治に反映するというのは、これは民主主義そのものである。だからポピュリズムと民主主義というものは、基本的に区別できない。
 民主主義が、政治を不安定にしてしまう。昨年6月のイギリスのEU離脱も似たようなことだ。EUの中であまりに競争が激しくなり、イギリスの平均的な労働者の生活が悪くなり、彼らはその不満を民主主義で政治にぶつける。そうすると政治が極めて不安定になり、従来とは全く違うタイプの指導者が出てきてしまう。フランスでマリーヌ・ルペンがかなりいいところまでいったということ自体、驚くべきことである。
 これは要するに世界がグローバルな資本主義になり、競争が激しくなりすぎたからだ。競争はするが、そんなに経済成長できない状況になった時、世界ではそういう突拍子もない指導者を大衆は選ぶ。それは民主主義だからであり、ドイツは、第一次大戦後のワイマール体制の中で、ヒトラーが出てきた。民主主義とはそういうものだと、まず理解しておく必要があるだろう。

民主主義イコール国民主権という誤解

 デモクラシーを普通に訳すと民主制であり、民主主義とはならない。現在我々が行っている民主制とは、一般大衆が選挙をして代表者を選び、その代表者が議会をつくる。議会の上に内閣を、そして総理大臣が行政の長となり、国会と審議しながら政治を行う。こういう仕組みがデモクラシーであり、我々はその仕組みを受け入れているだけである。
 一方、我々は民主主義に対して、大きな誤解をしている。一つは、民主主義イコール国民主権という考え方である。
 例えばアメリカで、主権者は国民であることには間違いないが、国民主権という言葉はそれほど使わない。その政治形態だが、議会には上院と下院があり、国民の代表としての大統領がいる。そして司法がある。このように権力が分散されていることが、アメリカの政治の中では大事で、これらを全部含めて、アメリカは民主主義の国であるという。
 イギリスの主権者はだれかというと、国王である。だからイギリスは君主国であり、国民主権ではない。ではイギリスにとって民主主義とは何かというと、政治の中心は議会であり、議会主義の国である。下院の中に庶民の代表が入り、その代表を選ぶのが一般大衆で、これが民主主義であり、そこに大衆の意思が反映される。
 日本もこういうやり方であり、国民の意思がいつも政治に反映されるべきだと、そんなことを言い出したらどうしようもないが、今、そういう傾向にある。安倍首相が何か一言言うと、すぐに世論調査をして、支持率が下がった、上がったという話になる。

対立する「民主主義」と「平和主義」

 つまり、国民主権、国民主権と言っているうちに、政治が、民主主義が、大衆迎合型になっていく。ヨーロッパより日本は、国民主権という言葉に縛られている。
 市民というものは公共的義務を持つから、政治に対して非常に強い権限を持てる。その義務の最大のものは、国を守るということである。国民主権であれば、国民が国民の生命、財産を守る。これはどういうことかというと、民主制の下では原則的に言えば国民皆兵であり、戦争があれば国民が戦う。
 民主主義は平和主義というが、いわゆるリベラル派の人たちが言うような、戦後の憲法九条の下での平和主義というようなものではない。そういうものと民主主義は、むしろ対立すると考えたほうがいい。そのあたりも、我々は大きな勘違いをしている。
 政治をうまく機能させていくためには、一方では教育制度やマスコミで、見識のある政治家を育て、見識のある政治家をある程度リスペクトすることが必要である。もう一方で、我々自身が公共的な事項について、あまり私心、個人的利益にとらわれず、大きな問題について自分なりに判断していく。その場合にどの政治家にそれを託せばいいのか、人物を見る目をつくることが必要である。
 そうしなければ民主主義は政治を堕落させ、不安定にしてしまうということを理解しておく必要があると思う。

《さえき・けいし》 昭和24年奈良県生まれ。社会思想家。京都大学こころの未来研究センター特任教授。東京大学経済学部卒。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。平成9年『現代日本のリベラリズム』で読売論壇賞、平成19年正論大賞。『隠された思考』(サントリー学芸賞)『反・幸福論』『日本の宿命』『西田幾多郎』『さらば、資本主義』『反・民主主義論』など著作多数。

※講演全文は月刊『世界と日本』1283号に収録されます。また、要約は週刊「世界と日本」NO.2112号に掲載されます。

※講演の動画・資料は会員限定で「内外ニュースチャンネル」でご覧頂けます。

https://www.naigainews.jp/懇談会/懇談会動画/動画-佐伯氏-会員専用/

●会員限定コンテンツの閲覧について

法人会員及び個人会員、週刊・月刊「世界と日本」購読者の方で、パスワードをお忘れの方はその旨をメールにてご連絡ください。その際に契約内容が分かる内容を明記ください。折り返し、小社で確認後メールにてご連絡します。

パスワードお問い合わせ先 tokyo@naigainews.jp

コメントをお寄せください。

※管理者が著しく不利益と判断する記事や他人を誹謗中傷するコメントは、予告なく削除することがあります。

【AD】

国際高専がわかる!ICTサイト
徳川ミュージアム
ホテルグランドヒル市ヶ谷
沖縄カヌチャリゾート
大阪新阪急ホテル
富山電気ビルデイング
ことのは
全日本教職員連盟
新情報センター
さくら舎
銀座フェニックスプラザ
ミーティングインフォメーションセンター