内外ニュース懇談会 講演要約
講演
トランプ時代と日本保守政治の覚悟
キヤノングローバル戦略研究所
理事・特別顧問
宮家 邦彦 氏
内外ニュース東京懇談会10月例会は2日、ザ・キャピトルホテル東急で行われ、キャノングローバル戦略研究所理事・特別顧問の宮家邦彦氏が「トランプ時代と日本保守政治の覚悟」と題し、世界に広がる反エリートの波、トランプ外交の危うさ、日本の保守の在り方など、幅広く語った。
世界に広がる反エリートの波
2024年の選挙がどんな意味を持つか。韓国で野党が勝ち、イギリスで保守党が負け、フランスでマクロンがうまくいかず、イランで改革派が勝ち、自民党は負け、ハリスも負けた。全く同じ現象が各国で繰り返し起きている。 荒れ果てた工業地帯で忘れ去られた人々がいる。冷戦が終わったが、歴史は終わっていない。IT革命が起き、弱肉強食の資本主義が始まった結果、格差が広がり、勝ち組は僅かで負け組が大半を占める。負け組のエリートへの怒りが選挙の背景です。トランプもエリートに対する不満の受皿であり、トランプ現象は結果であって原因ではない。
歴史は繰り返さないが、「韻を踏む」
国際情勢は静止画でなく長編動画だから、ストーリーと起承転結があることを理解しない限り、本質に迫れない。歴史に関する三つの格言とは、「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」という格言が一番大事。2020年代の中国と1930年代の日本は韻を踏んでいる。我々は1930年代に戦略的な判断ミスをした。アメリカの軍事力を過小評価し、自国とドイツとイタリアの軍事力を過大評価して必要以上に戦線拡大した結果、敗戦を迎えた。似たことを中国はしている。
戦間期とは大戦争の間の時期で、第一次大戦と第二次大戦の間は21年あり、第二次大戦後80年経つのは奇跡的だが、トランプが再選され、時代が変わった。啓蒙主義的なリベラルな国際秩序が衰退し始め、第一次大戦前に戻る部分がある。国際主義に代わり民族第一主義が起こり得る。全く同じではないが韻を踏む。格差と移民の拡大で不安と憤怒が極左と極右に流れる時代に戻り、80年間の幸せな戦間期が終わる。日本も例外ではない。これまでの保守主義に対する岩盤、強固な支持が変化し始めている。
人間は判断ミスをし、専門家の予測は当てにならぬ
ウクライナ戦争やガザ戦争に関心のある方は多いですが、どちらの戦争でも一番重要な教訓は「専門家は当てにならない」ということ。なぜ外れるか。プーチンも人間で。人間は間違える。独裁者ほど間違える。正しい情報が上がってこないからで、彼のような聡明な人でも戦略的判断ミスをする。ネタニヤフも人間だったということで、人間は間違えるという教訓である。
トランプ外交の危うさと日本への影響
トランプ外交は戦略も哲学も政策もないと前補佐官ジョン・ボルトンは言った。トランプは決して保守主義者ではなく現状変更論者である。日本の保守が目指すのはトランピズムではない。
因数分解すると個人、社会、国際情勢の三要素がある。トランプ個人の要素で一番重要なのは二つ。介入なき平和主義。彼は絶対戦争したくない。無駄と思う。二つ目は大国主導の国際秩序。小国は関係ない、大国同士で決めるという危険な発想。最後は国際政治の要素で、介入なき平和、宥和主義とも言う。宥和主義をする限り譲歩が続いて戦争は起きないが、問題は、永久に譲歩できず限界が来て戦争が始まる。
もし戦略があるとすれば、前提に考えるべきはアメリカの軍事力の限界だ。世界最強の軍隊だが「二正面」作戦ができないのがポイント。中東、欧州、インド太平洋の戦域のうち一つの戦域でしか戦争できない。そして、アメリカを真に脅かす国は中国で、余力があれば対中抑止に集中したい。今後、「アジアの安全保障はアジアにやらせればいい」ということも十分あり得る。日本には大変つらい脅威の時代になる。
日本の保守の在り方
国際主義が終わって自国第一主義に戻るときに大きなパラダイムシフトが起こり得る。日本の保守主義は何をすべきか。
あと10年で人口1億を割れば二流国になる。求められるのは、強い保守政治の復活。次の安定した保守政治をつくる覚悟である。もう一つは、正しい軍事力の使い方を学ぶこと。
第一次大戦では大戦争を戦わずに国際連盟の理事国になり、一流国になったが、その後、戦略的な判断を誤り、第二次大戦で敗れた。軍事費増大に反対する人がいたら10年以内に二流国になる。次のパラダイムシフトでは、第一次大戦が成功で第二次大戦が失敗と考える。
日本が取るべき保守の政策はトランプの政策と違う前提に立ち、第二の保守合同をしなきゃいけない。保守とは保って守ること。今、守るべきは我々の存続だ。次のパラダイムシフトをどう生き延びるかを考えないと、保守政権は出来ても国が滅びるかもしれない。
コメントをお寄せください。
※管理者が著しく不利益と判断する記事や他人を誹謗中傷するコメントは、予告なく削除することがあります。














コメントをお書きください