内外ニュース懇談会 講演要約
講演
「強い日本」を目指し、何を掲げ取り組むべきか
ジャーナリスト
(公財)国家基本問題研究所理事長
櫻井 よしこ 氏
内外ニュース新春懇談会1月例会は15日、ザ・キャピトルホテル東急で行われ、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が「日本の針路と誇りある国づくり」と題し、「強い日本」を目指し日本を取り巻く情勢、トランプ外交の本質、中国の厳しい現実を見極め、何を掲げ取り組むべきかを、幅広く提議、強く熱く語った。
大きな覚悟が求められる高市政権
高市さんは、衆参両院で自民党が議席を失う少数与党の状況で政権を発足させた。志は評価すべきで優先課題は、この少数与党の状況を早急に是正することだ。
衆参両院で多数を確保すること、すなわち選挙に勝つことが最大の急務。高市さんが勝たずに別の人が総理になれば、どんな政治が行われるか見えない。野党連合政権では日本は沈没しかねない。
では、高市さんの使命は何か。少数与党の石破さんの時代、日本は自立、誇り、未来展望があったのか。答えは全てノー。国家とは、自らの力で国民、国土、経済、文化、価値観や国柄を守る存在である。安倍さんは努力したが、菅さんには理念がなく、岸田さんも日本を動かす価値観という軸では功績はほぼ皆無。
高市さんは、そうした状況に強い不満があったのだろう。彼女の挑戦を注視し、日本のためになるならば全力で応援したい。最も重要なのは、彼女が日本国の本質を理解する数少ない政治家であること。所信表明で十七条憲法を引用し「民の声に耳を傾けよ」と述べ、歴史や国柄への深い理解を感じさせた。
国連中心やグローバルスタンダードを唱える時代は終わり、今や力がものをいう時代になった。各国は勢力圏を確保し、自国の強みと価値観に基づいて外交・安全保障・国内政策を進める。自国を知らなければ自国の強さは発揮できない。歴史を知らない民族は他国の影響下に置かれ、やがて消滅する。日本も日本国として主張しなければならない。その中で彼女の役割は極めて大きい。家庭、教育、企業、資本、人材、軍事、経済界の意識まで根本から変えた上で外の世界とどう向き合うのか。大きな覚悟が求められる。
トランプ外交の本質
年明け早々、トランプ大統領がベネズエラにすさまじい攻撃を行い、アメリカだけが実践できる戦術、戦略を示した。中ロは苦々しい思いで見たはずだ。ロシアには到底同様の行動を取る準備がなく、習近平主席も決して看過できない現実を突きつけられたと思う。この行動を、国際法、国連憲章違反だから中国に台湾侵攻の口実を与えたとする論説は誤りであり、国際法を踏みにじってきたのは中ロだ。中国は1989年以降、2桁成長で軍事費を拡大し続けてきたが、その目的は台湾を取るためであり、自国の領土とするという大前提に立つ。台湾への軍事的手段を放棄しないこと自体、国連憲章違反である。よって、今回のトランプ大統領の行動が台湾侵攻の口実を与えたとはならないと思う。
昨年12月に公表された国家安全保障戦略でモンロー主義への回帰を掲げ、「ドンロー主義」とも呼ぶ。トランプ大統領が言う西半球政策は、南北大陸を軸とする西半球に欧州諸国など他国が植民地をつくることも既存の植民地への介入も許さないという本来のモンロー主義の理念と一致し、孤立主義でも非介入主義でもない。アメリカは自らの勢力圏を守るために行動し、そのための介入も否定しない。他国への乱暴な行動を是認するか否かは目的と勢力圏防衛という文脈で理解できるかだ。
アメリカが自国の勢力圏を守る行動は、結果的に日本にとっても歓迎すべき側面を持つ。高市さんは、平和や国際法といった日本の理念を明確に語る一方で、アメリカの行動についての論評を避けた。いわゆる黙認だが、現実を直視した正しい態度だろう。
中国の厳しい現実
中国については、経済は極めて悪く、のたうち回り、人心が中国共産党から離れ始めている。
長期戦略の下で軍事面の増強は着々と進むが、出生率は0・7前後で急速な少子高齢化と労働人口の減少で国力低下が顕著である。高市さんは中国にこびることなく淡々とお付き合いし、関係依存を減らしつつ、日本は自立の道を歩めばいい。
何を掲げ取り組むべきか
高市さんは韓国の李在明大統領との首脳会談をうまくやってのけた。高市さんが発信すべきは、「日本国はこういう国です」と示すこと。第一に、日本と中国の違いは一本筋の通った継続した歴史があるか否か。中国は5千年の歴史と言われるが、様々な民族が中国に入り王朝をつくって滅び、その度に民族大虐殺を繰り返した国との違いを分かりやすく語れるかが肝である。
日本は奇跡の国だと言われる。21世紀の価値観を7世紀から実践してきたからだ。十七条憲法は7世紀初頭に作られ、高市さんは所信表明演説で引用した。つまり、今の政治・社会の価値観にも十七条憲法の精神が生きている。十七条憲法は人間を大事にし、国の役割は道義的政策によって民を守ることと説く。民を大御宝(おおみたから)とし、争いが起きたときは公正に裁き、安定した暮らしの保証を書く。この理念は何十年も後の唐の時代に影響を与え、『貞観政要』という本に十七条憲法の引用がある。古来日本が十七条憲法を打ち立てたのはすごいことだ。21世紀の今日まで日本社会の根底にその精神がつながっていることは非常なる誇りだ。
欧米と比べて我が国の国柄は優れていると思う。日本は604年に既に民の生活の安定と安心、幸福が根本にある。1767年のアメリカ独立宣言よりも早く、18世紀の欧州はフランスの人権宣言からも庶民の幸福が前提の価値観がなかった。
我が国の歴史を見ると、日本国を精神的に統合して国民、国家の安寧を願う存在である皇室の位置づけこそ、日本の力。国際社会に掲げる旗は、この国柄であり、その旗印である五箇条の御誓文は十七条憲法から歴史的に続く。126代の今上陛下まで万系一世。こんな一貫した歴史を持つ国は世界で唯一。安倍総理によるTPP、QUAD、日本と欧州のEPA、FOIP(自由で開かれたインド太平洋戦略)は世界の基本財産で、決して排除ではなく包摂していく日本の伝統的価値観に基づいて生まれた。
今回の総選挙は日本の未来選択選挙。絶対に自民党を圧倒的に勝たせて高市さんに続けていただくことが一番の日本国の国益になると思う。
※講演動画は「内外ニュースチャンネル」でご覧いただけます。(会員専用)
動画 櫻井氏202601(会員専用) - 内外ニュースチャンネル (naigainews.jp)
講演要約は週刊「世界と日本」NO.2310号に掲載されます。
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